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もののけがいっぱい  作者: 剣崎武興
05.連休も大さわぎ
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05.連休も大さわぎ その26

何が起きたのかわからずにいると、隣接した和室に運ばれて、そのまますとんと下ろされる。

この部屋は、うちの家政婦トリオ(テルミとクリンとレイカのことを指す)が寝室として使っている部屋で、3人分の布団がすでに敷いてある。

「大丈夫かい?」

言いながら、その俺をここまで引っ張ってきた奴が腰を下ろした。

「お、俺は大丈夫だ・・・・・・けど」

言いながら、俺は警戒を解かない。アルコールのせいもあるが、なにより他の連中でさえ俺の手には負えないのに、目の前にいる奴は暴れることに関してはそれを軽々と越えるスペックの持ち主だからだ。

「ほら、コップだしな」

俺の前にあぐらをかいたそいつは、あのカオスの中から一緒に持ってきたらしい一升瓶を差し出す。そして俺のコップを酒で満たすと、自分はそれをラッパのみする。

「にしても、あいつらがあんなに酒に弱いとはねぇ」

そして、口元をライダーグローブの甲でぬぐうと、ふすまの向こうを眺めながらつぶやく。

ふと、その口調があまりにいつもどおりなのに、少し驚いた。

「ヒビキ、お前は、大丈夫なのか?」

ちょっと危険かもしれないが、その相手、ヒビキに声をかける。

「ん?」

すると、ヒビキの奴はその一升瓶を持ったままこっちを向いた。改めてみるが、やっぱりいつもどおりに見える。

「あ、いや、お前、さっきから結構飲んでるわりには、あんまり変わってないから」

「あ、あー、そういうことかい」

ちらりとふすまの向こうを見て、ヒビキは納得したかのように小さく何度か頷いた。

「心配すんな、あたしゃまだ自分を失ってないから。なんでって言われるとこっちも困るんだけど、飯も酒もあたしにとっちゃそんなに違いがないみたいでね」

そしてはっはっはと笑ってみせる。そういえば、自動車なんかだとアルコールでも走るやつがあるっていうし、どこかの国じゃガソリンにアルコールを混ぜて使っているらしいから、そう考えると、モノのときに内燃機関を持っていたヒビキは、アルコールも同じように消費しているのかもしれない。

「でも、そういう意味じゃ将仁もそんなに変わってないじゃないか。あの中にいて、飲んでないってことはないだろ?」

と、今度はヒビキがこっちに向いて聞いてくる。・・・・・・このことは、話しても大丈夫なのだろうか、もし竜兄がそういう性癖の持ち主だと知ったとき、ヒビキが同じ行動をしないとは限らない。

「うーん、ガキの頃から、親父とかに付き合わされてたから、強くなったんじゃないか?」

「その割には、鏡介の奴はあんなだけど」

そして指差す先には、半笑いのままバレンシアにコブラツイストをかけられる鏡介の姿が見える。なんというか、この家の男の立場を象徴しているようで情けなく思えてしまう。

その横では、競り合いに疲れたらしいレイカと紅娘が、互いに抱き合った状態でへたり込んでいる。あの様子だと台所の覇権争いは終了していないようだが、そのままでも自分の得物を手放さないとは恐れ入った根性だ。

テルミはまだひっくり返ったままだし、クリンも相変わらずシャボン玉を吐き出している。家政婦トリオがこんな状態で、明日の俺の家は大丈夫なんだろうか。

「まったく、あの弁護士さんまでがあんなに酒に弱いとは思いもしなかったよ。もうけっこういい年のくせにさ」

ヒビキが愚痴りながら、いまだに窓際に座り込んでえんえんと泣いている常盤さんを見る。あの姿は、正直、昼間のきりっとした姿からは想像できないものだ。

そして、また一升瓶を俺の目の前でラッパのみする。もうほとんど空だ。

「ヒビキって、頼もしいよな」

その姿を見て、なんとなくそうつぶやく。

と、一瞬その酒が逆流した。ヒビキがふき出したためだ。そしてビンから口を離し、げほんげほんとしんどそうにむせ返る。

「なっ、なにを言い出すんだよお前は!」

そしてやっと咳がおさまったヒビキは、ちょっと赤くなった顔で反論してくる。なんとなく視線も泳いでいるような感じだ。

もしかして、ヒビキの奴、酔うと照れ屋になるのか?面白い奴だな。

「別に、思ったとおりのことを言ったまでだろ。酒は飲んでも飲まれるなって言うけど、うちでそれを実践できているのはヒビキだけだもんな。どれだけ助かっているか」

そうと判ると、試してみたくなるのが人情というもの。いつもはめったに出てこないほめ言葉をひねり出して投げかけてみる。

すると、今度は頭についているサンバイザーのひさしを下ろし、目のあたりを隠した。照れているのを見られまいとでもしているんだろうか。やっぱり、少なくとも今のヒビキは相当の照れ屋になっているようだ。

と、突然、ヒビキが一升瓶を置いて立ち上がった。やばい、ちょっと言い過ぎたかな、と思っていると、そのままくるりと背中を向けた。

「ね、寝ちまった奴を、運んで、くる」

その声は明らかにどもっていた。それに気づかれまいという配慮なのだろうか、そのまま大またで部屋の出口へと歩いていく。

それと入れ替わりに、何かが部屋に入ってきた。

どうも、作者です。

ついに100話です。が、100話というメモリアルなわりには、地味な話になってしまいました。


さて、5日目はもうちょっと続きます。

では、次話を乞うご期待!

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