男の子
「やっぱりあの物件鳴りますねっ!」
前下君と一緒に行った駅から近い物件は予想通り問い合わせが多かった。
「あれ、足音がなぁ…気になったんだけど、これから案内だよ。前下君一緒に行く?奥さんと奥さんの友達しか来ないみたいだから今回は契約は無理だろうし。兎に角物件を幾つか見せて、土日に旦那さんが来たらいいかな?って感じ。」
結構平日は奥さんが子どもさん連れてとか、友達と等はある。旦那さん連れてきてからの契約だと断りやすいってのもあるのだろう。
問題の物件に到着した。
奥さんの友達が、
「ここ近いですねっ!」
と結構上機嫌。
「じっくり見てください。」
と、言いながら鍵を開けてダッシュで前下君は上のシャッターを開けに行く。
タタタタ………
やっぱり気になった。
お客さんである奥さんが
「あの~私、時々見えるんですけど………何故、玄関に小さい男の子が座っていたのですか!!」
物凄い勢いで僕と前下君は怒られてしまった。
奥さんの友達も見えていないので、何がなんだか分からないまま帰ろうって事になった。
車中で僕達もたまに見えるが、ここでは足音が聞こえたけれど見えなかったと話して、他の何も出ない様な物件を案内する話をして、帰っていった。
「男の子いた?」
僕は前下君に聞いたが前下君の答えは
「ずっとルームミラーから奥さん見ていたんですけど、車に乗った時から奥さんの肩に男の子が見えたんですよ。」
あの家に居たのは同じ男の子だったのだろうか?
よく分からなかったけれど、奥さんに怒られた方が僕は怖かった。