エレベーター
「昨日の課長が映らなかったのなんでなんですかね?」
前下君は昨日のみんなに撮していた事に若干の罪悪感に見舞われていた。
「消えちゃうってないよね……知らない人が写ってる方も嫌だけど…」
僕は言いながら助手席のに乗り、前下君が運転する。
「林さん!すいません、僕も一緒に行っていいですか?」
相田君が来たので後ろに。相田君はまだ入社2ヶ月。契約を取れていないのでそろそろ焦りが出ている。
僕は
「相田君3ヶ月経ったらうちの会社で入金しないと、お給料無くなるよ。そろそろ頑張らないと。」
僕の会社は入社3ヶ月は固定給が貰えるがそれ以降はフルコミッションとなる。完全歩合な訳で売れただけではお給料が入らない。売上金が入金されたら歩合でお給料が入るシステムなのです。
「仕事しないで会社に来ていればお給料貰える訳じゃないからね。その分他の人より大きなお金が入るのも確かだけど、ギャンブルみたいなもんだよ。長く残れるって人は、そこそこ売れているって事で相田君も頑張らないと大変だよ。」
まぁ……僕はそんな危機感を教えながら3人で物件を見に行く事になった。
数件見た後、業者さんに預かった鍵があるマンションを見に行く事になる。
「一応14階建ての12階の角部屋なんだよね~景色いいぞ!」
1階のエントランスも綺麗で、案内に行く時の印象はいい筈。
「エレベーター、広いですね~ガラス張りの扉はピカピカだし。」
前下君は今回初めてのマンションで物珍しそうにしている。
チン!8階で停まった。
「誰も乗ってこないですね~なんだ?子供が押したのか?」相田君が閉まるボタンを押した。
12階で停まった。
前下君が先頭で僕、相田君の順番で出て歩きだし、
前下君が振り返りながら、
「何号し…………………」
「ん?どうした??」
「林さん。誰も乗りませんでしたよね。エレベーター。」
前下君が指差した。
ガラス張りのエレベーターに明らかに人が立っている。男の人だ。
急いで開けるボタンを相田君が押すと扉が開く。………誰も居ないわ。
「扉の影??」
僕は閉まるのを待つ。
「嫌?居ないし、写らない。あっ!デジカメで撮そう。」
前下君が撮る。
「居ないね。なんだ?」
僕はまぁいいや。
「物件見よう1201号室だよ。角部屋。」
歩きだしたら、チン!扉が開いた。
「いいいい、いやいやエレベーター動いて無いですって!開きましたよ!」
相田君が真っ青な顔をしている。
「相田君、前下君。マンションってさ、あまり途中の階から上には行く人居ないんだよ。奥さん同士が仲がいいとかはともかく。普通1階だけ。」
理由は分かりません。
帰りのエレベーターですか?
僕達は怖くて階段で12から降りましたよ。
あのエレベーター怖いじゃないですか。