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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

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若春七色にして金色なり

作者: 水井時零

0

アイツとこんな事になったのはアレがアレだったんだ

アイツが落としたハンカチなんて拾わなければ……

私はただの女子高生だった。

いつまでか分からないけどさ。



あの子とこんな事になったのはアレがアレになっちゃったからだろう。

あの子がもしハンカチを落とさなかったらこんな関係にもならなかった。

もしかしたら男子高校生失格だったかもね

いつまでもいつまでも……


1


今日は思いつく限りのダサい格好をしてきてやった

ジャージ上下にノーメイク、最悪の格好だ。

これでたくさん恥をかくがいい。そして

二度とこんな関係には……させない。


今日は思いっきりオシャレをしてみた。

香水だって初めてだけどつけてみたし、ズボンもなるべく綺麗な品を選んできた。

しかも….…上は下着を着ていなかったりする

しばらくこの関係は続きますように。



2


私は約束の場所に一時間遅れて行った。

なぜなら嫌われたいからである。

だけど何故かアイツは嫌な顔せず言ったんだ

「来てくれてありがとうね。それだけで嬉しいんだ」

来ない方が良かったのかしら……


彼女が来たのは約束の時間から一時間も後だった。

僕は怒ろうと思ったんだけど約束に来てくれるだけでも嬉しくて嬉しくて彼女を今すぐに抱きしめたかった

けど、それは我慢して 「来てくれてありがとうね。それだけで嬉しいんだ」

とだけ言ってみた。

決して彼女は微笑む事を拒否したけど微笑みを僕は飛ばした。


3

今日の予定は買い物だけで早く帰ろうと思ったんだけど私は強引に映画館に連れ込まれてしまった

どうやら約束していたらしい……

幸いに映画の料金は払ってくれた。当然か

映画は面白かったのだが、隙あらば手を触れようとしてくるのをどうにか回避するのが大変だった


今日の予定の一つ映画鑑賞に彼女を連れていった

なぜか映画館に入るのを拒否していたので、半ば強引に連れていく事になった。

約束を忘れていたらしい。かわいいところの一つじゃないか

当然映画の代金は彼女の分まで払った。

当然だよね。好きな人なんだもん

上映中につい手を触れてしまう様な事もあったが、彼女は決してそれを認めなかった。

まだまだカップルの関係には早いかと反省…


4

買い物中もセクハラ紛いは続き(最悪だ……)手を振りほどきながら歩く。

おまけにこんな格好だから周りがみんな見てくる。

何で私がこんな目に合わなくちゃいけないんだろうか

何で私がこんな男に合わせなくちゃいけないんだろう

そんな考えを浮かべながら歩いた。


買い物中にも手を伸ばしてみたけど

彼女はやっぱ拒否。

手ぐらいはいいじゃないかとは思うけど、周りがなんか見てくるんだ。

何だってんだ、僕はただ買い物をしてるだけだよ

なんでみんなそんな顔してみてくるの~



5

買い物で何を買ったか全く記憶に無い

というか今日、全く笑ってない気がする

……っ!

不意にどこか触られた感覚がした

振り返ると臀部に手が伸びている。

まーーたセクハラ行為か

私はその場から立ち上がってとりあえず逃げた。

もう帰ろう!


買い物で買ったのは小さなコスモス一本とアロマキャンドルだった。

それにしても彼女は笑わない。今すぐにでも帰りたい様に笑わないのだ。

そうだ!と思いついた僕は彼女のお知りをそっと触った。

するとそれは今までに見たことない程に女の子の顔だった

このまま押し倒して………あっ


彼女はどこかへ帰ってしまった


6

ただいまも言わず部屋のベットに向かった

まさかあんな最低な男とは思ってなかったからか悔しさと怒りが込み上げてたまらなかった

でも自分自身にもたくさん問いかけた

何で途中で帰らなったの?そもそも何で来たの?

わかんない……まったくわかんないんだ

ぐるぐるだ……しばらく止まんなそうなぐるぐる…


ただいまと言ってみるが返事は無い。

いつも通りの我が家だ。

両親が共働きで一人になる事は慣れてしまった

だからかもしれない女の子と買い物がしたくなるのは

と言っても今回が初めてなのだが…

買ったアロマキャンドルとコスモスを眺める。

ただ光に照らされたそれはなんだか僕を責めてるようで頬からはいつの間にか何かが落ちていく

間違って買った黒いコスモス、またの名はチョコレートコスモス。

……僕は家を飛び出した


7

誰か玄関に来たらしい。

出たくない

まだ頭の中、ぐるぐるしてて立ち上がる事すらも出来ないんだ…

劣等感 敗北感 虚無感…なんて表現すればいいんだろう

Coeur briséとかカッコつけて言ってみるけど恋ですらないんだし…

だからほっといてよ!お願いだから……


彼女の家は前から知っていた。知らない訳が無かった。好きなのだから

インタホーンを押す。

無音

もう一回押す

また 無音。

当たり前か……あんな事してしまったのだからな

止まっていた涙がまた流れ出した。

弱い、弱すぎる。僕は

震える手でポストにコスモスを挿した。

黒いコスモスだ。花言葉は……いや、止めておこう。

とりあえず歩こう。歩いてもどうにかなる訳じゃないが歩こう。


8

ようやく毛布から出れた

冷たい。体温も空気もね

外を見ると白かった。真っ白だ。

雪らしい……

どうりで冷たい訳だ。

何だろう、綺麗だと思えないんだ。

あの雪で幸せなカップルが居るからからか

とにかくこの雪は綺麗じゃないんだ。

ただ冷たいだけ……

あ、そういえば玄関に誰か来たっけ

気になった私は玄関に降りていった。

玄関を開けると雪が積もっている。汚い雪だ。

どうせ対して積もらないだろう。

ポストに花が挿してある。 黒いコスモスだった。

花言葉は確か「恋の終わり」だったかな?

ちょっと待って、恋って……あれが恋って!

私は今日一番の大笑いをするのだった。


雪だ。

心を凍えさす様な冷たさをしているな。

馬鹿みたいだ。こんな所で立ち止まっていなければ暖かい部屋でのんびりしていたのにな……

不意に母からメッセージが来た。休憩時間らしい

「デートはうまくいったかい?」

と、一言だけ。

僕はそれに

「いや、失敗しちゃった。でもね次があるからさ」

と、返した。

ああ…罪なぐらいロマンチックな雪じゃないか。

僕は笑いながら涙を流し、頭の中でコスモスの花言葉を浮かべていた

恋の終わり

いや

恋ですらも無かったかもね。

また……どこかでハンカチを落としてみようかな。


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