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侵入

元々の第3話が長かったため、二部に分けました。

 陽が沈んで真っ暗な夜。それに紛れるように3人の服も黒一色。そして顔を隠すためのバンダナ。誰かに見られれば確実に不審な目で見られる格好だが、いま3人がいるのは街外れの丘と丘の間。銃を提げていても、見咎める人はどこにもいない。



「うー、冬の夜は死ぬわね……こちらサナ、二人とも聞こえる?」


「――こちらヒカリ、感度良好。コウは?――」


「――こちらコウ、こっちもばっちりだ――」


 無線のテストをしてから、明るくライトアップされた工場を見据える。



 工場正面の入口には警備兵が3人いて、その周りを囲うフェンスの入り口にも、火の灯る錆びたドラム缶の傍で3人の見張りが立っている。だがそれは、ミズキの情報で既にわかっていたことだった。



「ヒカリ、できるだけ敵と接触したくはないから、正面の歩哨は迂回してく。他には敵さんいる?」


 サナが無線でヒカリに話しかけながら、左前方にある林を見る。ヒカリは既に、あの林の中の一番高い場所でこちらを覗き込んでいる。サナが恙無(つつがな)くやれば出番はないだろうが、ヒカリが見守ってくれているだけで他の2人に安心感を与えていた。



 ついでに言うと、コウはサナと一緒にいて、工場の入り口で分かれる手筈だった。コウには脱出ルートの確保と緊急時の支援を頼んである。いつもは軽い態度だがチャラいわけではない、寧ろ周りの空気を読んでわざと空気を読まない行動をするような人間なので、チャラチャラしたのとは無縁だった。



「――ちょっと待って……大丈夫! 私の見える範囲には、今サナ達にも見えてる6人2組しかいないよ――」


 残念ながら、ミズキの調べたデータの中に、歩哨のシフト表までは入っていなかった。それさえあれば、ヒカリに援護を頼むまでもなかったのに。サナはそんなことを考えつつ、ウエストポーチからワイヤーカッターを取り出し、歩哨に気付かれないところまで離れてからパチパチと切り始める。


 後ろには大きなロケットランチャーを持ったコウがいるため、自分の体より大きめに開けてあげないと通れない。



「ほら、これくらいで通れる?」


「おっ、余裕余裕、サンキュ」




 これでサナとコウはフェンスを通過出来たが、ここから先が本題だった。工場に入るための扉は2つある。ひとつは人間用の扉で、彼女らの目の前にあるもの。見た通り3人の警備が暖を取りながら(たむろ)していて、通る為にはこの3人を無力化する必要がある。


 もうひとつは反対側にある、組み立てた戦車を搬出する扉。こっちの扉には警備はいないらしいが、多数の軍人や工員が詰めているらしい。潜入も何もあったものではない。


 目の前の小さな扉が唯一の潜入口であり、今から正面の3人組を、静穏のうちに無力化しなければならない。






「コウ、音出さないで兵士を1人無力化できる?」


「まあそれくらいは」


「それじゃあ、私が先に飛び出すから、コウは援護お願い」


 サナが腰から特殊警棒を取り出し、闇に紛れられるぎりぎりまで間合いを詰める。そして警備の3人が談笑しようと互いの方を向いた瞬間、勢いよく飛び出した。




 サナが飛び出してくるのを視界の端で捉えていた1人は驚き、大きく口を開く。だが大声を上げる寸前に首と側頭部を警棒で殴りつけられ、歯を食いしばる。激痛に耐える男は吊り下げた小銃を握るも、もう一打、警棒の柄による強打をお見舞いすると、男は昏倒した。



 そのサナの背後に兵士が襲いかかる。兵士の動きに目敏く気付いたサナが振り向くと、目の前で素早く繰り出されたナイフの切っ先が鈍い光を反射していた。


 咄嗟に警棒を持ちあげ、顔を守る。ある意味命とも言える顔を(すんで)の所で守り切ったサナはしかし、急のことで警棒をしっかりと保持出来ておらず、衝撃で警棒を吹き飛ばされてしまう。



「よし、捕まえた!」


 警棒を失ったサナの肩を、もう一人の兵士が掴む。だがそこにコウが飛び出し、重い武器を担いだままのタックルを浴びせることで、状況は1対1の白兵戦へと転がった。







 相変わらずサナに正対する兵士は、ナイフを持った手を前に出す――(さなが)らフェンシング選手の様な――姿勢で油断なくサナを睨みつける。その姿勢は軍の教練によって見につけられるものであり、今朝遭遇したような堕落した兵士とは違い、真面目な軍人であることを示していた。


「……お強そうね?」


「死にたくないんでね」


 警棒を失ったサナは、一切油断しない兵士に、ある種の諦めを含んだ言葉を投げる。この状況を恐らくヒカリも見ているだろうが、未だ銃弾は兵士を貫かない。ここで撃ってしまえば、他の歩哨にすら気付かれる可能性――ひいては作戦が不意になる恐れがある。


 それから再び腰の裏に右手を回すと、姿勢を低くし地を這う様に接近する。



「残念だけど、私はそこまで強くないから加減なんて出来ない。死んでも文句言うんじゃないわよっ!」




 限界まで引きつけられた足で思いきり地面を蹴り、兵士に急接近したサナは足下から浮上するかのように立ちあがる。その右手には、刀身に蜂の彫られた大型のナイフが握られていた。予想外の接近速度に、足を掬いあげられるような殺意を感じた兵士は、後退しつつナイフを逆手に持ち、その攻めを凌ぎ切ろうとする。



 互いに逆手に持たれたナイフは、順手より強く握れる分力強さを伴う。二つの刃の接触は、まるで闘志がぶつかり合うかのように()ち合った。




 僅かに気迫に押された兵士と、一切緩めることなく攻め続けるサナ。情勢はサナに軍配が上がっていた。その小柄に似つかわしい速度で何度も叩きつける。それを兵士は首の皮一枚の所で凌ぐといった状況であり、押し切られるのは時間の問題だった。ふと見ると、もう一人の兵士はコウに負け、締められ伸びている。



「余所見をするなんて随分余裕ね!?」


 はっと正面を向くと、少し後方に下がったサナが、ナイフを順手に持ち替えて突進してくる。それを受ける兵士も、右手を振りかざしサナを待ち構えた。


 怯まずに進むサナは走りながらも息を整え、兵士の顔から目を離さない。殺意の塊のようなサナが近づいてくるのに怯えた兵士は、サナが間合いに入った瞬間、思い切り腕を振り下ろした。


 だがサナは、頭上にナイフが突き立つ直前、左に飛ぶ。大きく空を切った男のナイフの刀身に、身を翻し一撃を避けたサナの姿が映る。仕留めるつもりで体重をナイフに乗せていた男は、利き手側である右にいるサナに即座に対応する事が出来ない。


 ――ナイフを持ち替えて正対するか? いや、このまま前転し距離をとるか?



 そんな思考は、右脇に走る痛みに掻き消された。





「よし、こいつは俺が縛っとくよ。お前はさっさと終わらせてきてくれ」


 サナは脇腹に手を添えて、自分がたった今刺した男を見る。縛られた男達は地面に転がり、ただ静かにしていた。2人は未だ気が付かず、残りの1人はサナに刺された脇腹を痛そうに顔を顰める。極々簡単な応急処置を施してはいたが、生死は男の運次第であった。




「……っ、なんで、処置を……?」


 眉根を寄せて痛みに耐えつつ、落ち着きを取り戻すように努めてゆっくり呼吸する。



「はぁ? あんたらを殺すのが目的じゃないからよ。私達の目的はあくまで軍の解体。わかったら口を閉じてなさい、何も出来ない怪我人は黙って安静にしてくれると嬉しいわね」



 しぶとい兵士の顎に特殊警棒を撫でらせると、サナは立ちあがり、ポーチに携帯用応急処置キットを仕舞う。代わりにガムテープを取りだしたコウに、親指を立てた。




「――気をつけてね。中の様子は粗方ミズキのおかげで分かってるけど、でも万が一ってこともあるから……――」


 目の前の小さなドアに勇んで一歩を踏み出したサナの元に、ヒカリの不安そうな声が届く。今までにも何度か聞いたその声に、サナは明るく返事をしてみせた。



「大丈夫大丈夫! あんたは少し心配し過ぎよ、ぱーっとやってすぐ帰ってくるから!」



 いかな狙撃銃といえども、建物の中にはその銃弾は届かない。窓ガラス越しなら不可能ではないが、やってしまえばここまでの工程を全てふいにした上にサナとコウを危険にさせる。ここから先は、サナが1人で潜入する必要があった。





 薄暗い通路をサナが1人で歩く。途中で人の足音が聞こえてひやりとしたこともあったけれど、ミズキの入手した警備システム通りに行動することで、見つかることはなかった。



 設置したC-4に、傍に捨てられていた段ボール箱をかぶせる。退避してから順番に起爆させるため、その時まで見つかるわけにはいかない。




 随所にC-4を設置して回った途中、1つだけ重厚感のある扉があった。昨日図面を見た時に、この部屋は少しだけ他の部屋より広かったような気がしていた。耳を澄ませてみても中には誰もいないようなので、トラップを注意しながら慎重に扉を開ける。



 中にはペイズリー柄と呼ばれる絨毯が敷かれていて、部屋の奥には木製デスクもあった。何らかの役職者の部屋であることに間違いはないだろう。


 ――もしかして、なんか情報あるかな? 


 そう考えてサナは部屋の中央へ歩みを進める。数分、或いは数十分前まで誰か居たのかもしれない。部屋の空気は仄かに暖かく、人の匂いらしきものがしないでもない。ふと、デスクの上に散乱したままの紙に目がいった。その表紙には『Ops.Weed Out』と印字されている。



「えーと……『1月14日(木)12:00、反政府組織の拠点があると目されるイーストブロックに政府軍の派遣を決定。サウスブロックの西部工場に戦車を駐留させ、日の出と共に進軍させよ。進攻の正当性は後からいくらでも作り上げられる。民間人への被害も気にするな。雑草は、土壌から根絶せよ』

 イーストブロック? 私達の拠点はサウスブロックだけど……もしかして、AGMOZ(アグモス)?」



 イーストブロックにレジスタンスと同じような反政府組織がある、という話をサクから前に聞いたことがあった。名前の由来はAnti(アンチ) GovernMent(ガバメント) OrganiZationオルガニゼーション、つまり「反政府組織」。彼女達の所属するレジスタンスとは志は共にすれど、ある一点において両組織は決定的に違っていた。


 即ち、力を用いるか、そうでないか。



 レジスタンスは虐げられている国民を自由にするためならば、極力市民に被害の出ないように武器を使用していた。より『反政府組織』としての毛色が強いのはこちらだろう。


 一方で、AGMOZは違った。



「例え相手が連続殺人犯だとしても、同じ交渉のテーブルに座り互いに腹を見せ合えばわかりあえない筈がない。暴力に訴えれば、その瞬間から報復の連鎖が始まる」


とスローガンを掲げていて、武器の使用は厳に禁じられていた。対話やデモによる平和的手法以外を認めていないため、レジスタンスの事も良くは思っていないだろう。




 話し合いで解決できるような奴等なら、今頃この国はどれ程幸せだったか。サナはそんなことを考えるが、周りの人間が必ずしもそう考えるわけではない。現にAGMOZのメンバーは、レジスタンスと比べると天と地の差程もあった。





「政府軍の内訳は……歩兵3千に戦車16、装甲車16って、頭おかしいんじゃないの!? 歩兵に至っては私達のメンバーの何倍とかってレベルを超えてるじゃない! 本気で反乱分子を根絶やしにする気ね……」


 その力の入れように驚愕し、つい大きな声が出てしまう。サナは外で待っている2人に無線を飛ばそうと思ったが、その下にも文章が続いていることに気が付く。


「『遊撃槍計画は滞りなく進行中。これよりフェーズ3に移行し、最終……』ちっ、なにこれ、途中で破かれてるじゃない」


 サナはそう舌打ちしながらも、無線機に手を伸ばしヒカリとコウに連絡を取る。





「ヒカリ、コウ、2人とも聞こえる? 大事な情報よ」


「――詳しく教えて――」


「――もったいぶらねえで、早く言ってくれ――」


「明日の正午、イーストブロックに政府軍が攻撃を仕掛けるわ。歩兵が3千、車輛32台」


「――嘘だろおい、イーストブロックにゃAGMOZがいる筈だろ?――」


「――あんまりにも大規模な作戦行動だね。つまり、AGMOZを見せしめに反対組織を全滅させようってこと、かな……――」



 コウの言葉で納得がいったように、ヒカリがその作戦の意図を推測する。その口調は苦虫を噛み砕いたように苦しげだった。



「とりあえず私はここにある書類を全部回収して、この工場を爆破させるわ。ここに明日使われる戦車部隊が一部いるみたい」


「――了解。戦車がそれだけあるってことは警戒も厳しいかもしれない。最悪この工場は破壊できなくてもいい、サナだけは無事に戻ってきて――」




 その言葉に、ヒカリの全てが詰まっていた。それでも彼女らは、全員が軍人による正規の訓練を受けたわけでも何でもない。どこかで無理をしなければ、何も為すことは出来ない。そんなことはヒカリ自身、よくわかっていた。




「ありがと、ヒカリ。でも、私はきちんと成し遂げるわよ」



 だからサナは、ヒカリを安心させようと軽い調子で話す。まさしく軽いその言葉は心が一切伴っておらず、細かい調子の変化が聞き取りにくい無線でさえも空元気だということが容易にわかったが。


「――ま、お前が見つかっても俺が白馬に乗って駆けつけてやるから、心配すんな――」


「ロバの間違いじゃなくて? もう切るわね、爆薬を設置し終えたらまた連絡する」


 デスクの上に散らばった書類や引き出しの中に仕舞い込まれたファイルの類を、今までC-4が収まっていたポーチに詰め込む。残りのC―4は数少なかった。









「召集です。召集です。第56戦車中隊第1小隊は、至急第一格納庫へ。第2小隊は、至急第二格納庫へ集まってください。繰り返します。召集です……」


 苦心しながら書類をポーチへ詰め込んだ直後、突然放送が鳴り響く。恐らく、明日進軍する予定の戦車部隊だろう。その無機質な声は辺りへ響きわたり、サナを歯噛みさせた。



「うそでしょ、早すぎる……!」


「――おいサナ、今の放送聞こえたよな? 大丈夫か?――」


 白馬の手綱を握るコウの、不安を押し殺した声が聞こえる。先ほどの放送と根本から違う温かい声音が、サナの体から緊張を取り除いた。



「……大丈夫。もしかしたら反対の格納庫から戦車が出てくるかもしれない。念のため気をつけて」


「――あいあい――」


 無線を切って、次のC-4設置地点まで急ぐ。






 2人の昏倒した男達を人目のつかない暗所へ運び出したところで、コウが無線機に手をやる。


「なあヒカリ、イーストブロックの襲撃計画、あれ信じられるか?」


「――そりゃ、信じたくはないけど、でも……――」


「でも、今の政府軍ならあり得るか。流石に街中で戦車の主砲をぶっ放す真似はしないだろうけど、AGMOZの奴らが名乗り出るまで優しく待ってるとも思わない。確実に一悶着起きるだろうし、そうなれば民間人に被害者が出る」


「――多少の被害はやむを得ないってことなんだろうね――」


「それとも、端から民間人の命なんざどうでもいいってか」



 思わず溜息が出る。軍人が汚いことはわかっていたが、ここまでとは思ってもみなかった。








「――コウ、敵が来てる! さっきフェンスの傍にいた人達が工場に向かってる――」



 緊迫したヒカリの声が、敵の接近を告げる。工場に接近する際に迂回した敵集団が近づいてきているのだろう。


「避けられる戦いと避けられない戦いって、どう違うんだろうな」



「――急に似合わないこと言わないで、すぐに隠れて!――」



 ヒカリの怒りをひしひしと感じ、すぐにしゃがんで建物の影に隠れる。自分だけ隠れても、傷付いた兵士をどうにかする必要があったことを思い出した瞬間には、歩いてきた警備兵が兵士を見つけてしまっていた。



「やばいヒカリ、見つかった! 俺1人じゃ3人とも静かに無力化は出来ねえ」


「――こっちでも確認してる。どうする? 工場の外に出てるのが今いる3人だけなら対処出来るけど、こんな静かな夜だから撃てばきっとばれちゃう――」









 銃を撃つ際、主な音の発生源はいくつかある。撃針が雷管を叩く音、銃弾の火薬――発射薬――が炸裂する音。銃本体の機構が作動する音。銃弾が音速を超えることによって発生する衝撃波。

 サプレッサーはその中の一つ、発射薬の炸裂音を抑える。これによって銃声は高く響きにくい音に変わるが、完全な消音はサプレッサーのみでは不可能だった。本来は完全な位置の特定を阻止するために使われるもので、存在そのものを秘匿することは出来ない。







「でもこのまま指くわえて見てるわけにもいかなくないか? もう撃つしかないだろ」


「――そうだね、私も何らかの対処は必要だと思う。サナも聞こえてたよね? もしかしたら警戒レベルが更に引き上がるかもしれない、注意して――」


「――わかったわ、ヒカリ。コウ、お前後でぶん殴るから――」


「好きなだけ殴ってくれ、後でな!」





 無線で話している間にも、警備兵達は兵士を止血して、状況を聞こうとしていた。重たそうに腕を上げ、今にもコウを指さそうとしている。



「ヒカリ、俺が1人を盾にするから、お前は別の兵士を叩け!」


「――了解!――」


 ヒカリが返事を返す頃には、既にコウは立ち上がって走り出していた。



 一番早く侵入者の存在に気が付いた兵士に組みかかり、銃剣を取り出して喉元に宛がう。他の2人が銃を撃つのをためらった瞬間、一人が頭を7.62mmの銃弾で貫かれる。時間にしてほんの2、3秒。二人の信頼がなければできない連携だ。



 狼狽するもう一人に、コウが人質を思い切り蹴り飛ばしてぶつける。まさか突然蹴り飛ばされると思ってなかった人質は足をもつれさせて倒れ込み、ぶつかった方の兵士はコウが直接頭を地面にたたきつける。それから頭に銃を突きつけると、兵士たちの動きは止まった。



「流石だ、ありがとう」


「――……どういたしまして――」


 複雑そうな声が無線機から聞こえ、コウはなんと答えようか一瞬考える。


「……俺はお前のお陰で助かったさ。とりあえず、こいつらを物陰に隠して、装備を剥いでくる」


「――わかった。私は入口を見張っとくね――」


「あいよ、任せた」


 気絶している兵士の両肩に手をまわして、コウが大変そうに兵士を闇の中へ運んで行く。






 その頃工場内では、サナがようやく最後のC―4を設置し終えた所だった。軽くなったポーチの調子を整え、無線機を口元に持っていく。


「ふう、やっと終わった……ヒカリ、そっちは大丈夫?」


「――大丈夫、サナ。ただ、一発撃っちゃったから、多分……――」


 ヒカリが言い終わる前に、工場内にサイレンが鳴り響く。それは異物の侵入を知らせる警告であると同時に、サナの窮地を知らせる音でもあった。





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