第三回戦力評価報告書
この回はレジスタンスメンバーや、彼女らが使っている武装の詳細を説明している、ただの寄り道です。
本編の方では出来るだけ障害がないように書きますので、こちらは必読ではありません。
ヒカリ 18歳 8月15日生 薄茶のボブ
好きなもの サナ・友達・料理・ある程度の自由・ある程度の規則
嫌いなもの 別れ・雨・軍人・自分
反政府組織、通称“レジスタンス”の正狙撃手。高い状況判断能力と洞察力、そして天性の射撃能力でレジスタンスの全作戦を支援している。重火器以外の火器はほぼ全て使用できるが、中でも狙撃銃の扱いに於いて彼女の右に出る者は数少ない。
彼女は幼少期から育児放棄や虐待を受けており、殴打や根性焼き、無視や罵詈雑言など心身ともに痛めつけられた様子。10歳の時に伯父に引き取られた彼女はそれから1年間の虐待で心に傷を負っていき、そして最後には伯父を殺害。場に居合わせた幼馴染、サナの家に1年居候し、新しく借りた一軒家で現在は一人暮らしをしている。かつての大戦で活躍した伯父の財産と、両親が伯父に渡した幾らかのお金がそのままヒカリの手元に来たため、余裕のある生活を送れるだけの財産は所有している。
陰鬱とした過去を持つ自分に優しく接してくれる幼馴染に、深い感謝を抱いている。一方で自分自身に対する評価が極端に低く、行動の節々に「自分なんて」といった感情が見え隠れしている。また自分「なんか」を守ってもらうのは気が引けるため、そうではなくむしろ自分が皆を守らなければならない、という強迫観念に似た考えを持っている。
また、自分の思っていることをそのまま行動に起こせるサナやコウを尊敬している。
被虐児に見られる症状が彼女にも見られる。ただ彼女の場合、自分の感情を押し殺す方法を先に学んでしまっているため、その特徴を顕著に示すことはほぼない。負の感情への感受性や観察力が高いのは、幼い頃から目を窺う必要があったからだろうが、その割にはすっとぼけた行動や場を和ませる行動をとることがある。このことから、相手の心を読んだ上で行動をとるのが習慣付いていることが窺える。
もしかしたら、普段から何かしらの嘘を吐いて暮らしている可能性もあるかもしれない。他人の目を常に気にして生きていて、必要があれば決断を下す彼女なら、嘘を抱えて生きていくのも不可能ではないだろう。その目的が何かはさておいて。
もっとも、彼女の特徴を全て表すには、彼女の性格はあまりにも複雑で難解。彼女が表立って見せている動機や行動が、わざとらしく見えてくるほどに。
使用する狙撃銃はMSR。
彼女が約10年間、片時も離さず愛用するボルトアクションスナイパーライフル。非常に高精度で、正しい姿勢、正しい構えなら1000mで0.7MOA(0.7インチ)の驚異的集弾性能を誇る。任務に応じて銃身を交換することで様々な銃弾に対応でき、幅広い任務に対応できる。またアルミシャーシの狙撃銃の中では軽量で、運搬時にはストックを折りたたむことで僅かに縮小できる。
狙撃銃としては異質の改造だが、彼女のMSRはトリガーが他の銃と比べ非常に重く設定されている。1ステージトリガーなので引き金にかかる負荷は一定だが、多人数を相手取る彼女たちにとってその設定はあまり功を奏さないだろう。或いは何か、彼女なりの意味を持っているのかもしれない。
外観からは製造した会社及び工場の刻印が窺えず、よっていつどこで造られたかは不明。
使用弾種は.338Lapua Magnum(装弾数5/10発)・7.62mmNATO(装弾数10発)・.300Winchester Magnum(装弾数7発)。
スコープはMK8 3.5-25/56(可変倍率3.5~25)を使用。
拳銃はM&P9(M&Pシリーズの9mmバージョン)を使用。
M&Pの名の通り、軍や法執行機関へ売り込むことを主眼として造られた拳銃。パーツを付け替えることでグリップサイズを3段階に変更することが出来、老若男女問わず扱いやすい。アンビサムセイフティとフラッシュライトをオプションパーツとして取り付けてあり、またトリガーの遊びも少なくなるようカスタマイズされている。
弾種は9mm×19の拳銃弾(9mmパラベラムに代表される)。装弾数は17発+1発(マガジンに17発と、チャンバーに1発)。
フラッシュライトはXM35。
サナ 18歳 4月15日生 茶のショート
好きなもの ヒカリ・ゲーム・体を動かすこと
嫌いなもの 行動を起こさない人
レジスタンスの機動・工作要員。小柄な体を生かした機動は戦闘においても目ぼしい活躍をあげている。その優れた運動神経及び彼女の機動の軸となる足から放たれる蹴りは非常に素早く、格闘時は相手を翻弄するような動きを取る。
彼女の得意とする二挺拳銃は正規の武装集団ではないレジスタンスだからこそとれる戦闘方法であり、左手で牽制しつつ、右手で狙いをつけるのが主。
幼い頃からヒカリ・コウと遊んでいた彼女は、ヒカリから笑顔を消し去った親や伯父、鬱々としたヒカリを煙たがる同級生にいつでも牙を剥いてきた。幼少期は今ほど男勝りな性格ではなかったが、ヒカリに頼りにされていることを知り、今の性格が形成されたのだろう。
その後、ヒカリの一人暮らしと同時に彼女も両親名義でアパートを借りたが、しばしば実家に顔を出している。
勝ち気で喧嘩っ早い性格とみられることも多いが、7年前の傷ついたヒカリを匿うなど、実際はある程度の考えを持って動いている。しかし一方でサクやミズキ、ヒカリ程思慮深い性格ではないことを自覚しているため、自分の分野以外で作戦に口を出すことはない。……ヒカリに関することを除いて。
男勝りなのは性格だけでなく、彼女の活発な活動を支える下半身の筋肉も凄まじい。ただし本人は、所謂「女の子らしさ」を持つヒカリやミズキを羨ましく思ったこともある。
ヒカリを救うためだったとはいえ、結果としてヒカリ自身に伯父を殺させたことが、強く心に残っている。ただし、もし仮に過去をやり直せるとしても、彼女は選択肢を変えないだろう。「もっと上手にあいつを助ける方法なんて、私にはわからないから」なんて肩を竦めて笑うのが、目に浮かぶ。
彼女には、口に出した決意を何があっても達成してやるという強い心がある。それは例え何を失っても、何を傷つけても前に進んでいく、寄り道の出来ない舗装路。例え罅が入ろうと上から覆い隠すことは容易だが、罅そのものを消すことは出来ない。
また、彼女がヒカリを異様なまでに気に掛けるのは、何か理由があるだろう。ただの友愛に言い表すことの出来ない理由が。
愛用する武器は二挺のM93R(正式名称は93Raffica)。
同社製の92自動拳銃を元に製造された機関拳銃。単発のセミオートと3点バースト射撃を切り替えることができるが、携行性の良さや秘匿性の高さ、3点バーストという機構の存在から、民間に出回ることはほぼない。
シュンの手によって重心がフロント寄りになっているため、バースト射撃時の安定感は増しているが体感重量は増している。
弾薬はヒカリのM&P9と同様9mm×19だが、その装弾数は20発+1発と、大容量。またマガジンもシュンの手により、多数持ち運べるよう軽量化が施されている。
拳銃以外にも、カービン銃のG36C(Compact)をバッグに詰めている。
この銃はフレームやマガジンにプラスチックを多用しているため、軽量である。またストックを折りたたむことが出来るため、非常に持ち運びが容易となっている。
発射モードはセミ・2点バースト・フルオートから選べる。
ストック・フラッシュハイダー・グリップ・断熱ハンドガードをオプションパーツとして使用。
マガジンには30発の5.56mm×45弾が入る。この弾薬は拳銃用小口径弾と小銃用大口径弾の間という位置付けで造られた中間弾薬であり、拳銃用弾よりも威力が高く、小銃用弾よりも反動を御しやすいため、短機関銃によく使用される。
レジスタンスの幹部の中では彼女のみ、常に大振りのサバイバルナイフを携帯している。17.8cmの半波刀はステンレスの光を鈍く反射し、黒いハンドルは持ちやすいように波打っている。何より刀身の根本には、レーザー刻印された蜂が存在を主張している。元はヒカリの伯父である軍人が所有していたものだったが、その所有者を刺殺した後、サナ本人の頼みでヒカリから譲られた。
また、任務に応じて三段式特殊警棒も使用する。ただしこちらはレジスタンスのメンバーに広く普及しているもの。
コウ 18歳 5月4日生 黒のベリーショート
好きなもの 幼馴染 食事(というよりは飯)体を動かす
嫌いなもの 父親 自己犠牲 束縛
筋肉質で大柄な少年。レジスタンスでの戦闘では正面切っての戦闘を担当しており、ランチャー等重火器の扱いにも慣れている。また他人と親交を深めるのが得意で、それ故戦闘部隊への指揮・鼓舞は彼の仕事。
本来はただ遊ぶのが好きな少年だった。だが彼がサナと共にヒカリと出会ってから、楽しいだけの生活は終わりを告げた。
遊んでいる最中に母親に無理矢理連れて帰られるヒカリの笑顔が、心を苛んだ。友達の伯父を殺してしまったと告げるサナの涙が、心を蝕んだ。それから、もう二度と幼馴染にあんな表情をしてほしくない、その一心で今まで戦い続けている。
自己犠牲的な行動が大嫌いで、それに伴いヒカリへの態度が硬化することが度々ある。ただしそれ以上に嫌いなのが自分の父親であり、顔を合わせないよう、家に帰る時間をよく遅らせている。
直情径行・猪突猛進の文字が似合いそうではあるものの、彼の幼馴染への態度や、少数による軍との戦闘指揮を執ることが出来る面を鑑みて、他人に気を配り面倒を見ることの出来る、優しい一面も持ち合わせていることがわかる。ただ、あまり長考や熟考することが好きでないようで、そういった頭を働かせる仕事は得意な人がやればいいと思っているようだ。
本当は誰よりも平和を望んでいるのだろう。街中に突如響く銃声に怯えたり、幼馴染が悲しい想いを抱いたり、父親が軍に協力しているからと目を付けられたりなんてことのない、平和を。
だがそれを誠実に希求するのはヒカリだけでいい。ヒカリを窘めるのも、普段はサナでいい。俺は皆にできないことをやるだけで、皆の嫌がることをやるだけだ。そんな役割を担おうとしているのだろう。それが結局はヒカリの心と大して変わらないことに、気付きもせずに。
使っている武器はオージア軍正式装備のSCAR―H。
元々は特殊部隊の制式装備を決めるトライアルで選ばれた突撃銃だが、オージア軍はクーデター後、数年かけて軍全体へ広く浸透させた。末尾のHはHeavyの頭文字で、大口径の7.62mm×51弾を使用していることを意味している。
セミ・フルオートの二種類から発射モードを選べ、マガジンは20発の7.62×51mm弾。標準で伸縮・折り畳みの可能なストックを有しており、またチークピースも備えてある。
オプションパーツとしてハンドガード下部にグレネードランチャー、EGLMを装備。トリガーがライフルのトリガーの真下に位置するため、スムーズに擲弾を発射することが出来る。使用するグレネード弾は40mm×46で、低速型の弾としては最初期から使い続けられている。
7.62×51mm弾は突撃銃、自動小銃用の大口径弾で、5.56mmの約二倍のエネルギーを持つ。そのためフラットな弾道を描き狙いもつけやすいが、弾薬が重く大きいため、初速は遅い。また反動も大きいため、装薬量を減らした減装弾も広く使われている。
サイドアームとして太腿にUSP拳銃を付けている。大型拳銃に部類されるこの銃はサイズが大きく、厚手の手袋を使っていても操作がしやすくなっている。|USP《Universal Sefloading Pistol》の名の通り汎用性が高く、メカニズムバリエーションの異なるシリーズが多数存在する。
使用弾種は.45ACP弾。この弾は前述の9mm×19より大口径で、拳銃弾の中では非常に高いストッピングパワー(生物を行動不能に至らしめる能力)が高く、貫通力が低いため、狭い室内等でも跳弾の心配がない。
一方で弾薬自体のサイズが大きいため、一つの弾倉に入る弾薬数を増やそうとすると大型になってしまう。また、装薬量が多いため反動が大きく、扱いが少々難しい。
ミズキ 18歳 11月3日生 黒のロング
好きなもの 本 子供 調べもの 時計
嫌いなもの 約束破り 大声 思い通りに事が運ばれないこと
胸元まで伸びた濡羽色の髪は彼女の誇り。だが前髪が眼鏡のレンズを汚してしまうのだけは嫌なようだ。
基本的には援護要員であり、リーダーの補佐としてレジスタンス全体の舵取りを担っている。彼女の愛用するデスクトップPC、ラップトップPCはオージア陸軍の占有する通信衛星「Zorn」に接続されていて、軍の連絡を覗き見ることで情報を得ている。軍の管理が杜撰だからか、彼女の工作が功を奏しているのかは不明だが、情報の漏洩に気付かれている様子はない。
彼女が自らの作戦に従事する際は、ヒカリの観測手として活躍する。目標への距測、風速、気温、湿度、それらのデータに基づく計算を狙撃手に代わり行う。また可能であれば、スナイパーノート(狙撃の環境や視界を余すとこなくノートに書き写し、様々な状況でのデータを集めることで、より精度の高い狙撃を行うための紙)への記入も行う。
満天の星空の下、ミズキは孤児院のすぐ傍に女の子の人形と共に捨てられていた。隣には、同じように包まれた、赤ん坊のシュンも。
それから十数年、20人の兄妹と共に“お母さん”に育てられた彼女は、争いごとを嫌った。争いを好む人間はいないかもしれないが、とりわけ彼女は嫌いだった。
そのため、よく喧嘩をして怪我するサナやコウを、シュンと窘めることが多かった。また、活発で元気だがそそっかしいサナに代わり、ヒカリの世話や無理をやめさせることも多かった。その様子はまるで、実の姉のよう。
だがレジスタンスに属している以上、争いと無縁ではいられない。自分の立てた作戦で相手が死に、仲間が死ぬ。それでも彼女が俯かないのは、自分が相手を殺しているわけでも、自分の隣で仲間が死んでいるわけでもないからだろうか。
本当に俯くべきはコウを筆頭とする戦闘部隊で、自分は冷静に作戦の責任を負わなければならない。だから、皆の前で落ち込んではいけない。
元より表情の乏しい彼女だったが、そんな自分を抑圧する感情を持っているためか、次第にその口調も少なく淡々としたものに変わっていく。
だが彼女本来の性格は変わっておらず、幼少期から寝食を共にしてきたシュンにだけは安らぎを見出していて、かつての笑顔を見せる。
「正直は一番の宝物だけれど、それだけではいつかあなたが傷付いてしまう。だけどこの国じゃ、正しくあることが正しいこととは言えないのよ。
嘘をつけだなんて言えない。この院は『笑顔と正直の園』だもの。だから、口を噤み、耐え忍ぶことが出来るようになってほしい。
……ごめんなさい、まだ幼い貴女に言うことではないわよね。でも、貴女なら大丈夫、もう大人になれるわ。
……お母さんとの、約束よ」
彼女の唯一の銃器はP220自動拳銃。使用する弾は9mm×19を9+1発。優れた性能を持つ自動拳銃だが、非常に高価。また、コウの持つUSP大型自動拳銃と変わらぬ重量で、反動制御が容易となっている。
セーフティは存在しておらず、起こしたハンマーを下すためのデコッキングレバーのみが安全機構として組み込まれているため、引き金には常に注意を払う必要がある。
オプションとしてブラックポリマーのグリップセットを取り付け、より手に吸い付くようになっている。
ヒカリの後方警戒用に、クレイモアやストリングトラップ等、罠とその素材を携帯している。だが本人もある程度学んではいるが、あくまでヒカリの指示に従い設置する。
シュン 18歳 11月3日生 茶のミディアム
好きなもの 工作 勉強 平和
嫌いなもの 横柄な人
ミズキ同様、物心ついた時には既に孤児院に預けられており、愛情はおろか両親の顔すら知らない。だが本人たちは自らが孤児だということを気にしてはおらず、“お母さん”やほかの“兄妹”たちと幸せに暮らしていた。
2人が15歳になった誕生日、既に20歳を迎えていたサクに引き取られ、以降は現在の洋館に3人で住むことになる。今でも1か月に数回、以前の孤児院を訪れている様子。
孤児院と提携している学校に通っている間は、現在のレジスタンス幹部の5人とは別に、クラスメイト全員と浅く広い付き合いをしていたが、これは一人になることを恐れているわけでなく、無用な争いや波風が立つのを嫌ったため。その甲斐もあってか非常に平和で有意義な時間を送ることができ、他人の悪い感情とは付き合わずにこれた。
本人はとても勤勉で、あまり体力はない。いじめられているヒカリを守るため喧嘩に明け暮れたコウと、冷静に親身に諭したシュンは正反対の人物に見えるが、根っこのところが同じであるため、二人が仲良くなるのに時間はかからなかった。
武闘派の多い幼馴染の中において、彼はひと際温厚で優しい。だがそれは、「自分が甘いせいで他の皆に負担を強いている」と自らを責める原因にもなっている。しかし実際のところは、持ち前の勤勉さと手先の工夫さを使い、爆発物やツールの作成を一手に担っているブラックスミス。
その温厚な性格は、レジスタンス内で稀に発生する言い争いの解決にも一役買っているようだ。
彼自身は銃を使うことは出来ないが、銃や兵器の構造、機構についての造詣は非常に深い。その知識をメンバーに広めることで、敵兵器の脆弱性や突くべき弱点など、対応をより的確なものに洗練していっている。
彼は非常に平和を希求する性格だが、もし彼に銃を扱う力があったとしたら、その姿はヒカリと同じようなものになるだろう。目的のための努力を弛ませず、どんなことがあっても友達を守りたいと願う。だから彼は『人を殺す』という行為に悩みながらも、爆発物を作り続け、仲間の銃を改造していく。
悩み傷付きながら狙撃銃を構えるヒカリ同様に。
だが、彼が他の仲間に依存しているのも確かだと言える。彼がひとりで窮地に陥った時、あるいは自分にしか人を助けることが出来ない時、戦う力を持たない彼は、どう切り抜けるのか。
サク 23歳 11月23日生 黒のショート
好きなもの コーヒー 幼馴染を見守る事
嫌いなもの 兄
反政府組織“レジスタンス”の現リーダーで、組織を立ち上げたシンジの弟。軍に反抗意識を持つ人間をまとめ上げ、レジスタンスメンバーとして引き入れる手腕は見事。徒に組織を拡張していく危険性と、少人数で皆に負担をかけ続ける現状とで、板挟み状態。直結に人の命に係わる決断を下す立場上、ストレスも多いようだ。だが今のところ、組織の舵取りは上手くいっている様子。
幼馴染の中では一人だけ5つ年上で、それ故一歩引いて5人を見守ることが多い。
彼の兄、シンジは非常に優秀であり、家族もシンジばかりを非常に可愛がった。それによって彼はあまり愛情を注いでもらうことがなかったが、何不自由ない生活を送れていたため、本人は特に気にしていない。シンジに嫉妬することなく、その多才さに尊敬の念を抱いていた。ただし、彼自身も決して凡人ではなく、優れた人格と頭脳を持っている。
彼の一族は経済に先見の明があり、非常に潤沢な財産を有しているが、現在彼とミズキ、シュンが住む洋館もその財産の一つ。
ヒカリが自分の兄に好意を寄せていることに気付いていて、心中はあまり穏やかでなかった。だが彼女がようやく明日を楽しみにすることができ、幸せという感情を知ることができるようになるなら、別に良かった。シンジも満更ではなさそうだったし、時期を待ってから付き合えばいいとすら思っていた。
そんな考えが甘かったと気付いたのは、シンジが幼馴染を、サクを、そしてヒカリを裏切った時だった。
それから彼はレジスタンスのリーダーとなり、幼馴染や引き入れた仲間と共に、政府軍へ宣戦布告する。ただし、リーダーではあるものの、ただ座して指示を出すだけの席は居心地が悪いらしく、自らも積極的に動く。
彼の装備はHK417とM92FS。
HK417(20inモデル)は同社のHK416の口径拡大版で、中~遠距離より部隊の支援を行うためのDMRと呼ばれ、他の自動小銃より比較的高精度。発射機構はセミ・フルオートで、レシーバーは標準で四面にレールを備えているため、高い拡張性を誇る。サクはアンダーレールにアングルグリップを装着し、構え時の安定性を向上させている。
マガジンはG36に似た半透明マグで、7.62mm×51弾を20発装弾できる。
M92FSは大きく抉れたスライドが特徴的な、非常にスタイリッシュな自動拳銃。排莢時にはその機構上、スライドがまっすぐ後方に下がるため、命中精度の低下をある程度抑えられている。また、排莢不良が起きにくいため、信頼性も高い。
9mm×19弾が17発+1発と、マガジン性能はM&P9に等しい。
シンジ 享年25歳(3年前に死亡しているのを確認。生存していたならば28歳) 1月9日生 黒のショート
好きなもの 不明
嫌いなもの 不明
10年前、弟の遊びに付き合っていた彼は、後にレジスタンスの幹部となる者たちと出会う。その3年後、突如ヒカリ達幼馴染の目の前から凡そ半年、姿を消す。
その後戻ってきた彼は、それからヒカリに射撃や狩りを教え込み、狙撃手としての技能をたたき込んだ。他の幼馴染にも軍事訓練を施したようだが、目的は不明。
3年前、幼馴染の元を離れた彼は、数週間後に軍服のまま射殺された。同僚による報告では、強盗を追跡している最中、隠し持っていた拳銃がシンジの額に当たり、絶命。強盗はその後、同僚により射殺。
尚、この報告書は非常に仔細な供述にのっとって作成されており、状況を詳らかにしている。現在はデータベースにて参照可。
「随分と詳しく書き上げたんだな?」
「彼女たちの事は、もう何年も見てきているので。それが命令でしょう?」
「そうだな。何か他に、あいつに伝えておくべき情報はあるか?」
「……そうですね。彼女が政府陸軍の『即応隊』と呼ばれる隊の人間と接触しました。その程度で意志が揺らぐとは考えられないものの、この軍人側にも監視を付けた方がいいでしょうね」
「そうだな、何人かそちらに回そう。だがお前ほどの犬は少ない、情報は少ないぞ」
「彼女たちに関することなら、私は全権を委任されてる。それでも無理なのかしら?」
「わかってるさ、あまり偉そうな口を叩くな。……たく、あいつもこんな奴らのどこに利用価値を見出したんだか」
「この国を解放するというのなら、その役目は彼女たちに担ってもらいましょう? 我々はただ、その一助をすればいいだけなのだから」
「ほざけ。……まあいい、これで報告は終わりだ、シャドウと共に監視に戻れ、『ミス・ミラージュ』」
「……『ザ・ドナー』。私が、そのレンティアネームとやらが嫌いなことは知ってますでしょう?」
「だったらあいつに返上してこい。その代わり、その名前は上に立つ者の証だ。お前が認められている唯一の拠り所だということを、忘れるな」
「失礼ですが、私のただ一つ信頼できるものは、私自身と決めているので。そんな実のない名前より、余程頼りになります」
「そうかい。それは俺に教わった技術を抜いての事なんだろうな?」
「なんなら、今すぐお見せしましょうか?」
「笑えない冗談だ。さっさと行け」
「了解しました」