宇宙人と異世界と
強大な科学力をもち、銀河のかなたから地球までやってきた大きな宇宙船は、トラックに引かれそうになった人間をまた一人見つけた。
部下の宇宙人は隊長に発言した。
「隊長、対象を捕捉しました、ワープ光線砲の発射許可を」
「発射を許可する」
巨大な宇宙船から発射された強力な光線は、人間がトラックと衝突する寸前に人間に命中した。
「隊長、命中を確認しました。人間が転送されます」
宇宙船の後部に設置された檻に転送された人間の男はすでに気絶している様子だったが、お構いなしに強力な催眠ガスをかけられた。
催眠ガスの噴出が終わると即座に檻の底が開き、次に男は下の階にある手術台に落とされた。
そこでは先ほどの二人の宇宙人が待ち構えていた。
「えっとこいつは火属性魔法を使えるようにしとけばいいんでしたっけ?」
部下の宇宙人が隊長の宇宙人に聞いた。
「めんどくせーから全部でいいよ。それが最近のトレンドらしい。全属性の魔法使えるようにして身体能力も10倍くらいにしとけ」
隊長の宇宙人はけだるげに言った。どうやら彼は個々の人間には関心がないといった様子だ。
「了解しました」
そう返事をすると、部下の宇宙人は装置を調整しスイッチを入れた。手術台の隣に設置されたおおげさな機械からは七色の光線が発射され人間の男の頭部を10秒間照射した。
「手術完了です。辺境の惑星への転送装置を起動します。隊長、本当に人間への説明はしなくてよろしいのでしょうか?」
「いいよめんどくさい、もう女神のコスプレとか神様のコスプレしても人間は全然驚いてくれないしさ。なんか特典付ける?って聞いても全員全部って即答しやがる。どんだけイージーモードな人生が好きなんだっての」
隊長の宇宙人はふくれっ面だった。
数時間後、全属性の魔法を使えて身体能力が大幅に強化された男は見知らぬ土地で目を覚ました。
「これが異世界か……」
男はこれから始まるであろうチーレム生活に胸を躍らせた。