ストレス発散の翌日
「君たちは何をやってるんだい」
翌日、マリナが執務室に顔を出すと王子が呆れた顔で出迎えた。
早くも耳に入ったらしい。
誰に聞いたのかと思ったら近衛の人に聞いたと言う。
騎士つながりで噂が広がったのだろうか。
「君たちのことは近衛の幾人かには話していたからね。
昨日の騒動を聞きつけて私に報告してくれたよ」
信頼できる何人かに話をしていたと。
誰だろう、気づかなかったな。
見守られていたのだと思うと恥ずかしいけれど、対応としては当たり前だった。
「お騒がせして申し訳ありません」
素直に謝る。
知らぬ間に根回しまでしてくれていたのに騒がせて申し訳ない。
「いや、仲直りしたならなによりだよ」
「…ご心配おかけして申し訳ありません」
考えたら目の前で痴話喧嘩をしたり、不敬なことばっかりしてる。最近は。
「あれは怒って当然だから構わないよ」
理解のある主で何よりだけど、気にしないにも程がある。
原因のマリナが言うことでもないけど。
「しかし顛末を聞いて驚いたよ。 開き直った女性は強いというけれど、本当だね」
「大げさな…ちょっとやり返しただけじゃないですか」
「自分の身を切っての仕返しは思い切ったことだと思うよ…?」
「今更噂が増えても?」
大した問題じゃないと思う。
「マリナは時々大雑把だね」
溜息つきながら言われるほどじゃないと思うけれど、呆れを含ませながらも安堵した様子の王子にそれ以上は何も言わなかった。
話が終わったところで訓練を終えたヴォルフがやって来る。
朝の挨拶を交わしてそれぞれの席に着く。
いつもの日常に戻ってほっとする。
火種がどこまで大きくなるかはわからないけれど、それもかまわなかった。




