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双翼の魔女は異世界で…!?  作者: 桧山 紗綺
セレスタ 帰還編

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双翼のお仕事 2

「そんな訳で、明日は留守にします」

 そうマリナが宣言すると王子は口を開けて、ヴォルフは無表情のまま固まった。

「え、何故急に…?」

「早いほうがいいと思うので」

 王子が唐突だと言うのも当然かもしれない。

 ちょっと調べ物をしに行った部下が、なんとなく怪しい気配がするのでちょっと外を調べに行ってきます、といったら面喰っても仕方ないと思う。

 マリナは説明らしき説明もしていないので、余計にそう思うかもしれない。

「しかしその件なら財務官たちで調べることになるんだろう? 何故マリナが行く必要があるんだ?」

「私が行った方が早いからですよ」

 人を連れて行くより一人で飛んでいった方が早い。

 後は…。

「荒事になる予想でもあるのか?」

 ヴォルフの声が間に入ってくる。

 いきなり確信を突くなぁ。

 誤魔化す必要を感じないので正直に答える。

「返納しようとしている土地が怪しい。 何らかの裏が隠れている可能性があると思ってるわ」

 不正を行ってまで責任を放棄したかった土地。

 何があるのか気になる。

 ちょっとワクワクしているのは秘密だ。

「しかしそれは双翼の仕事だろうか?」

 王子が水を差す。正論だったのは気づかなかったことにする。

「まあ、財務の方が王子の下に書類を持って来た者は見つけてくれると思うんですが、そこから先は時間がかかるでしょう?

 取りあえず行ってみた方が何か掴めるかもしれません」

 何も見つけられなければ、改めて専門の人間を向かわせればいい。

 暴論ではあるが王子の下に持ち込んだ時点で双翼の領域と言える。

 王子を守り、その憂いを晴らすのが双翼の任務であるのだから。

 本人はこの件にそこまで関心を抱いていないということは置いておいて。

「駄目とは言わないけれど、気をつけるんだよ。 君が用意周到で強いことはわかっているけれど、予測出来ないこともあるのだから」

「ええ、無茶はしません」

 信頼が心地良い。裏切らぬよう万全で挑むつもりだ。

 やり過ぎるなよ、と言うヴォルフの声は聞こえない振りをした。

 人聞きの悪い。

 やり過ぎる程性質(たち)の悪い秘密が隠れているなら一人では済まさない。

 誰がどう見ても相手が悪いと、正しく裁くのが理想だ。

 双翼の成果は王子の成果。

 力を振りかざし、理不尽を強いたように見えては意味がないのだから。


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