王子の想い人 2
煮え切らない王子に業を煮やしたのは内務卿の方だった。
名目なんて何でもいいから会って会話をする機会を作るよう王子を説得すると共に、彼女を招いても不自然でない催し物を考えたりと色々提案をしている。
もはや本人よりも内務卿の方が積極的に行動していた。
王子が恨めしそうな目でマリナを見るが黙殺して執務に集中する。
内務卿が張り切るのも無理はない。
この時をずっと待っていたんだろう、きっと。
王子の伴侶に関わることなら相談するべきだろうと、言葉を交わす際に少し聞いてみたら公爵様のことかと言われてマリナの方が驚いた。
知っててずっと見守っていたなんて王子が知ったら穴に埋まりたくなるだろう。
そんなわけでマリナも内務卿が知っていたことは黙っていることにした。
王子が伴侶を得るのは誰もが待ち望んでいたことなので、内務卿が暴走がちでも誰も違和感を感じていない。
今まで婚約者もいなかったのがおかしいのだから。
多分、内務卿が話を止めてたんだろう。王子が誰を連れて来ても受け入れられるように。
候補の段階でも誰かの名前が上がってしまったらその方と比較されてしまう。
それを避けるなら比較対象を作らないのが一番だ。
内務卿の手腕に改めて感嘆する。
打診と言う名の懇願を躱し続けてきたなんて、本当にすごい。
機会があれば詳しく話を聞いてみたい、話してくれるかは不明だけれど。
王宮内で移動する際に人に全く会わないというのは不可能に近い。昼間は特に。
「マリナ、王子様が伴侶を選びをしているというのは本当ですの?」
マリナの移動を狙ってこういった質問をしてくる人間が多い。
直接王子か内務卿に聞けば良いのに。
聞いてきたのがシャルロッテだったことが多少以外で、聞き返す。
「シャルロッテも興味あるんですか?」
「関心がない人なんていないわよ!」
シャルロッテの言うことももっともだ。
「誰に聞いて来いって言われたんですか」
関心があるのは当然だけれど、好奇心だけでマリナに聞きに来ることはないでしょう。
「お爺様が知りたがっていたのよ」
ああ、なるほど。
黙っているとシャルロッテが不安そうにマリナを窺う。
「言えないなら言わなくていいわよ?」
「言えないことはありませんよ?」
含む笑みを見せるとシャルロッテが警戒の表情を見せる。
「シャルロッテにお願いしたいことがあります」
「何ですの?」
「難しいことではありませんよ」
そう、難しいことじゃない。
ちょっと橋渡しをお願いするだけだった。




