委員長、そしてへたれヤンキーとの一幕
ひっそりと更新再開
門の前で、クラスメイト数人と小池先生が門番である『α』と問答をしていた。
それを少し離れた場所から彼は眺めていた。
(おー懐かしい光景だな。・・・やっぱハジメテはあんなもんだよな)
門番と話している以外のクラスメイトの大半は、それぞれ仲が良い少人数で固まって何やら不安そうにしている。
このような、通常在り得ない現象に遭遇したのだから当然の反応だろう。
彼のように、一人でなんの気概も無く立っているような人物はいなかった。
いや、彼の隣にいつの間にか立っている彼女を除けば。
「やー、世良田君!・・・なんだか大変なことになっちゃったねぇー!」
場違いとも思える能天気な声。しかし、これが彼女の普通だ。
「委員長・・・お前、あっちに混ざってなくていいのかよ?」
彼が指で門のほうの騒ぎを指差すが、彼女は笑って、
「んー?・・・私は要らないかなぁと。・・・先生も居るし、私の優秀な親友も居るからね!」
彼女の親友とは、いつも並んで連れ添ってる子のことだろう。残念ながら他人に興味が薄い彼は名前も覚えてはいなかったが。
「まぁ、委員長がそれでいいならいいんだが。・・・さて、どうやら先生が呼んでるらしい。行ったほうがよさそうだな」
どうやら何かしら動きがあったのか、小池先生が門の近くで集合しろと大声で言っている。
おそらく、『アレ』についてだろう。こりゃ、委員長からは距離をとっていたほうがいいかもな。
が、そんな俺の思惑とは裏腹に、委員長は俺の腕を抱えてさっさと門へと走り出す。
「ちょ、委員長!・・・俺は後から行くからほっとけよ」
「いいの!いいの!・・・そんなこと言って世良田君いっつも来ないし。私がきちんと連れてってあげるよー」
正直、なんでこんなに懐かれてんのか判断に困る。
転校初日からだいぶやらかした俺に、ここまで気安くしてくるのはコイツと、田舎ヤンキー的なヤツくらいだ。
「・・・チッ」
委員長に引っ張られる最中、視界の隅に例のヤツの姿が。
着崩した制服にチェーン。いかにも漫画に出てきそうなスタイル。それが、ヤツこと、高田 慎也《タカダ シンヤ》だ。
初日から転校生であるところの俺に絡んできた存在。その格好もテンプレなので、思わず「漫画乙」と言ったら滅茶苦茶ストーカーされるようになった。
ついでにコイツは、委員長が気になる存在らしく、やたら俺が構われるのも気に入らないようだ。
まぁ、委員長に関してはお前が面倒見てくれるならさっさと引き渡すから何とかしてくれると助かる。
人間は嫌いなんだよ、俺。