09 『ノーパン主義者たち』
09 『ノーパン主義者たち』
それからも、京太郎氏の専用機は順調に飛行を続けていた。
内部があまり順調ではないだけだった。
しかし、いつになったら到着するんだ?
そこへ、ナミとナリが呼びに来た。
同じ格好だが、パンツは穿いたんだろうか?
「ユウキ様、こちらにどうぞ」
「ユウキ様、お待たせしました」
俺は黙ってナミとナリについていくことにした。
きっと、事態は終盤の追い込みなのだろうからだ。
これを乗り越えれば、俺の『パンツ推進キャンペーン』は無事に終わるはずである。
だが、連れて行かれた先は、大浴場だった。
どうにも、嫌な予感がする。
「さあ、ユウキ様」
「はい、ユウキ様」
最近、風呂当番はササ、ミヤ、レナが積極的だった。
それぞれが見習ふたりを連れて、全身を洗いに来る。
まあ、メナイの部下で秘書グループになっているからだ。
だが、それでもナミとナリの実績には及ばない。
何しろふたりは、ススの下にいた見習いの頃から、下半身洗いまでマスターしていたのだ。
下半身洗い歴、5年とか?
今でも、週に2回は洗いに来る。
次が母さんと母さんのコンビだろうか。
近頃、母さんたちは順番の時しか来ないから、今では、ササたちの方が多くなっているよな。
誰それの『お渡り』がありますからと。
しかし、お渡りのない日など殆どないのだ。
妻はともかくとして、侍女は処女だから、下半身を洗うのに何かしら思うところがあるんじゃないかと思うのだが、ススとナリとナミが簡単に乗り越えてしまったので、それ以降考えない様にしてきた。
クラとロマだけは、仕事じゃない感じで真っ赤になっているのだが、止めようとはしないし、嫌がりもしないのである。
感想は恐ろしくて聞けないしな。
予想だが、ドウが『妻と女官の境界』という著作とかに、名誉とか何とか書いているんだと思う。
ササたちが見習いを指導するのに、このときばかりは厳しい採点をしているからである。
こんなことで、出世が左右するのは嫌なのだが、口を挟めることではないので仕方がない。
ひょっとしたら、逆の儀式なのかも?
侍女たちは皆、俺の儀式を受けているからなあ。
俺は念入りに洗ったりしないのだが。
俺はいつもの通り裸にされ、やはり裸になったナミとナリに軽く流されて湯船に入れられる。
一種の習性みたいになっているな。
「しかし、シップタイプだけど航空機でもあるんだよな、これ。巨大ではないけど、こんなに広い大浴場があるなんて、新しい国際線のシップにも作るべきだったかな」
俺は不安を押し隠すように、全く別の話題で誤魔化していた。
そう言えば、手伝いの連中だって着替える前に風呂に入るようなことを言ってたから、それと同じ意味があるのだろう。
ここで、ふたりの見事な肢体と姿態に見とれていられれば幸せなんだが、そんな余裕があればとっくに初夜を迎えられていただろう。
ふたりともいつも通りなので、俺ほどの不満は抱えてないようだ。
だが、その身体は見事に成熟し始めていて、妻としての自覚が経験を上回るのではないかと疑ってしまいそうである。
サイズは変わらないのに、ラインが変わり始めている。
女らしくなっているのだ
ナミは俺の背中に回り、ナリが俺の正面に立ち、すべてを晒してから、座り込んだ。
にぎり!
「どわー、何だ、何をするんだ!」
俺は直ぐにナミに両肩を押さえ込まれた。
「試験です、ユウキ様」
「なな、何の試験なんだ?」
「直ぐに、わかります」
ナミがそう言い終わらないうちに、艾小姐とエリザベスが入ってきた。
何故かトップレス巻きスカート姿だった。
「艾玲玉、15歳。行きます」
「エリザベス、11歳。頑張るの」
ふたりはそう言うと、スカートをめくった。
ぴらっ! 赤いパンツ。
ぴらっ! 白いパンツ。
「ナリ?」
ナミの問いに、ナリはにぎり直してから首を振った。
俺は混乱していて、事態が飲み込めなかった。
だが、直ぐに事態は進行していった。
「ベアトリス、20歳。頑張ります」紫
「フィラー、21歳。恥ずかしいです」白
「レイラー、17歳。初めてです」黒
「ポリーン、18歳。いきます」黄
「サマン、15歳。あまり見ないで」白
「パリーサー、16歳。頑張ります」白
「シーリーン、15歳。気に入りますか」桃
「アズラー、14歳。よく見てね」縞
「サーラー、13歳。は、恥ずかしいけど」空
「レティ、14歳。初めてなんだからね」青
顔を赤くして、恥じらいながらも、見せて並ぶ姿は色っぽいよりも可愛い感じだった。
だが、これは非日常的な光景だった。
ひとりひとりの姿を覚えて足していっても、この光景にはならないだろう。
花と花畑はこんなにも違うのである。
フェンシィは黒スーツ姿に戻っていて、汚い虫でも見つけたような顔をしている。
ナリが肯くと、ナミが指示して全員が出ていった。
はあ、苦行は終わったぞ。
良く耐えたな、俺。
にぎり!
ナリがにぎり直した。
何なんだ!
すると、全員が戻ってきて並び直した。
「艾玲玉、いきます」ぴらっ!
「エリザベス、負けないの」ぴらっ!
「ベアトリス、見ないで、でも見て」ぴらっ!
「フィラー、お母さーん!」ぴらっ!
「レイラー、初めてです」ぴらっ!
「ポリーン、い、いきます」ぴらっ!
「サマン、見つめないで」ぴらっ!
「パリーサー、頑張ります!」ぴらっ!
「シーリーン、お粗末様」ぴらっ!
「アズラー、ちゃんと見て!」ぴらっ!
「サーラー、恥ずかしいけど、一度だけ」ぴらっ!
「レティ、ほ、本当に初めてなんだからね」ぴらっ!
にぎり! にぎり! にぎり!
全員がノーパンである。
ああ、艾小姐以外は、ムダ毛処理まで終えていた。
いや、エリザベスは最初からか。
これは天国に近いが、きっと地獄である。
にぎり! にぎり! にぎり!
ナリは満足したのか立ち上がり、ナミに何かを囁いた。
「ユウキ様、私たちに本心を隠して誤魔化そうとするのは良くありません」
「はい、ごめんなさい」
「今度、誤魔化そうとしたら、ユウキ様には全裸で過ごして頂きます」
それって、いちいち握って確かめるってこと?
いや、誤魔化そうとしたんじゃないんだ。
善意で、パンツを穿いて貰おうと思ったんだ。
俺の趣味より、安全を考えてのことだったんだ。
北大陸は、ハタリ(スワヒリ語で危険というような意味らしい)なんだよ。
しかし、嘘、誤魔化し、ハッタリを行った俺は、もう信じて貰えそうもなかった。
俺のパンツ推進キャンペーンは、ここで脆くも潰えたのであある。
「変態ヨ!」
本質は、フェンシィの言うとおりだった。
男にとっては、正常な反応なんだが。
だが、俺はパンツで隠して貰う努力だけはしたんだ。
感情を殺して、心を鬼にしてパンツ着用を推し進めたんだぞ。
何故、その心をわかって貰えないんだ!
俺は、心が折れたまま、ひとり大浴場を逃げるように後にした。
ここには、回復魔法の使い手である、クラもロマもいなかった。
「スケベ心が、上回っていたからネ」
何故かフェンシィがついてきて、追い打ちをかけてくる。
「ちゃんと、自分の欲望は押さえていたと思うんだ」
「なら、彼女たちがムダ毛処理までして見せたのは何なのネ」
本当にムダ毛なんだろうか?
「わからない。親の心子知らずか?」
「ハタリだネ、ハタリなのヨ」
「意味が不明だぞ」
「ここは、ユウキにとって『ハタリの地』なのヨ。スケベ心につけ込まれているネ」
「まさか、フェンシィまでムダ毛を……」
「見てみるかカ。だが、私は心まで売らないゾ。見たければ、私を押し倒してから見ろネ」
押し倒す、ではなく、倒すだろうな。
何故、他の連中もフェンシィと同じように考えないのだろうか。
「いや、フェンシィのはムダ毛でなく、産毛だよ」
フェンシィの右ストレートは、今まででMAXを記録した。
北大陸のかなり北部に着陸した。
広葉樹は珍しくなり、ンゴロンゴロと同じ様な草原でも、サバンナではなくステップと言うのだろうか。
農民なら一目で惚れ込みそうな土地である。
気温は15度ぐらいで少し風があり、熱帯に慣れた身体と格好では寒さに震えそうだ。
北側の針葉樹林帯が、目当てのシベリアンタイガー棲息地帯で、草原の途中に流れる川の辺りがバッファローたちの夏期施設らしい。
もう、巨大な群れが幾つもコロニーを作っている。
「この辺りのバッファローは、冬でも北大陸の南端部で過ごす種です。一部は南大陸で過ごす種と交配するようですね。春に子供が産まれます」
「すると、渡る方は妊娠中や子連れの時に南の密林を移動するのか。大変だな」
「北に残る方は、寒さとシベリアンタイガーに耐えなければなりません。どっちもどっちでしょう」
レティは母親譲りのウェーブ強めのヘアを風になびかせながら説明していた。見た目よりもずっと柔らかそうだ。
毛皮のブルゾンと毛皮のブーツが、お揃いのコーディネイトなのだが、何故かスカートがミニの巻きスカートで、ナナ&サラサ・ビーチのロゴが入っている。
しかも、風になびくと透明パンストしか穿いていないのがわかってしまう。
もう、突っ込んだら負けのような気がする。
しかしだ。
もろに見えるのは、見る方が恥ずかしいのである。
慣れる、と言うことは男である限りないのだろう。
「あの湧き水は安全なのだろう?」
「今まで2度もベースキャンプにしましたから、間違いなく安全です。念のためアンドロイドに検査して貰いましたが、危険なものの反応はないそうです」
シップのポンプが水をくみ上げている。
燃料補給と生活用水の入れ替えである。
宇宙では、水が一番の鍵である。
水さえあれば、後は太陽光で水素と酸素を分離し、それを更に反応させてエネルギーが得られるし、酸素は呼吸にも使えるし、水で食料を栽培できる。
燃料と食料と大気を得られるのだ。
太陽光は宇宙では行き先の目標だから、太陽光を得られないことはない。
しかし、水がなければ、そこでは活動ができない。
しかも、水があるところには、大抵二酸化炭素などの必要な物質が高確率で存在する。
氷やドライアイスでも、効率は落ちるが大丈夫である。
メタンだけの星や、乾燥した星はハズレと言ったところだろうか。
ある学者の説によると、宇宙で一番危険なのはフッ素の豊富な星であるという。
フッ素は、元素としては酸素の隣に位置する原子である。
あらゆるものと激しく反応し、化合する。
当然、酸素も激しく反応し化合する元素だ。
地球は酸化し尽くした星と表現しても良い。
もし、酸素が少なく、フッ素が多く存在すれば、フッ化した星となっているかもしれない。
ならば、我々は酸化水素型の生物であるから、似たような元素であるフッ化水素型の世界とは絶対に共存できないと言うことになる。
酸素型とフッ素型では、お互いに悪夢の存在になるからである。
お互いに猛毒の環境に棲む、猛毒な生物にしか思えないだろう。
蘊蓄話で申し訳ないが、酸化剤としてフッ素は酸素を上回るらしい。
我々より効率の良い世界が、フッ素型世界なのかもしれない。
今のところ、そんな世界は確認されていないから気にすることはないだろう。
例えフッ素型の生物がいたとしても、酸素は猛毒だから寄ってはこないと思う。
実は、毒物反応の項目にはフッ素が入っている。
それで、思い出しただけだ。
現実には、フッ素よりもノーパンの方が毒劇物である。
男はノーパンに激しい反応を起こすので、危険である。
中毒性すらあるかもしれない。
慣れることはなく、中毒性がある。最悪である。
(勿論、個人の感想です)
俺は現地情報をレティに質問しながら、ベースキャンプ周辺の見回りを続ける。
「レティ、フォーメーションは考え直した方が良いと思うんだが」
「はい?」
レティは、風でめくれたスカートの裾を押さえている。
恥じらう姿がちょっと可愛いが、ノーパンなんだから、可愛いとか思ったら負けなのだ。
フェンシィが言っていたのだが、これは現地妻競争なのである。
どうやらナイナかマーガレットか、その両方だかが現地妻を企んで少女を集めたらしい。
勿論、その座は競争になる。
14日間で10人もの妻を望む訳がないからだ。
俺は新婚旅行中なのだが、配慮はされなかった。
ただ、それは真相の一部でしかないらしい。
実は、このレティが妻になると言い出して、『まだ早い』とジョアンが反対したところで、ナイナとかマーガレットが口出しして、現地妻候補で手伝いを埋めてしまおうと計画したのだ。
日当は凄く良いから、候補で終わっても生活は助かるし、妻になれれば一躍大金持ちということらしい。
俺は金持ちじゃないんだが。
どちらにせよ、日当で金は入るし、現地妻に選ばれれば名誉だし、競争相手がいればレティも諦めるだろうし、そもそもレティの無謀な行動を抑制できるとジョアンに伝えて納得させたのだろう。
エスカレートしているような気もするが。
何となく、仕組みは理解できた。
俺がモテるのはおかしいし、娘たちばかり10人も手伝いに選ばれてるのも裏があったのだ。
大体、いきなりトップレスで現れる性奴隷市場みたいな光景は、絶対におかしい。
フェンシィが情報を集めて『ハタリ』だと言うのも理解できた。
当たらずとも遠からずなのだろう。
レティはいい娘だと思う。
母親似でとても美人になるだろうし、性格だって悪くない。
ジョアンが認めるほど才能があり、本人もそのせいかキラキラと輝いている。
愛嬌がありすぎて変なことになっているが、あの10人に混ざっても、もし本当に妻を選ぶことになるならレティを選ぶだろう。
だが、モヤッとするのだ。
親友の娘に手を出すだけで、もう駄目人間のような気がする。
親友の娘なら、自分の息子を出すのが当たり前のような気がするのだ。
ただし、俺の息子は最年長の祐馬でも6歳なのである。
とても、釣り合いが取れるとは思えない。
それでも、自分がと思えないのは、俺がレティの叔父さんみたいな存在だからだろう。
ジョアンの娘なら、俺にとっても娘たちのひとりの様なものなのだ。
俺は正常な反応だと思うのだが。
一方で、男として好意を寄せられるのは悪い気分じゃないのが困る。
最悪、やりまくりでも『処女再生』があるとか思うと、鬼畜か! と自分に突っ込みたくなるような感情もないことは、なくはないのだけれども、結構、いや、ないのだ。
妄想だけである。
妄想は自由だ。
妄想こそ、我々の唯一の権利である。
全員、エリダヌス旅行しようね。そこで、処女に戻りましょうね。若返りもオプションでつけますよ。
なんて、悪魔が来たりて笛を吹きまくることもあるが、妄想は自由なのだ。
(エリザベスは除外)
全員を裸にして、毎晩ひとりずつなどということも、妄想の範囲でならOKなのだ。
本当か?
これは、新妻たちとの初夜が延び延びの延期の延長18回裏ぐらいに来ている影響だと思う。
ナミとナリのすべすべの柔らかくて温かい肌を触ったことがあれば、皆賛成してくれると思う。
触らせないけど。
まったく、京太郎氏が変な依頼をしてこなければ、今頃ナミとナリと一緒にラブラブデートをしながら楽しく過ごしていたはずなのに。
待てよ。
依頼のせいで大分手続きをすっ飛ばしてしまったが、ナミとナリはいきなりの結婚、新婚旅行を良く承諾してくれたものである。
最初のデートを田んぼで過ごすような駄目男と、だぞ。
今考えると、冷や汗ものだな。
それで、新婚旅行中に浮気とか、あり得ないよね。
しかし、式を挙げてその後は船中で2泊。
マサイの草原で1泊。
今日の夜は4泊目か。
もっと、長いような気もするが、それは我慢しているからだろう。
全く、仕事と新婚旅行を同時に済ませようとなどと考えたのが甘かったのか。
次は片手間で、などとは考えないようにしないとな。
現地妻など、とんでもない話である。
まあ、それはそれとして、解決しなければならない問題もある。
「ベースキャンプに女の子だけを残していくのは気が進まないよ」
「ええっ、連れて行くんですか?」
「そうじゃないんだ。エリザベスとか連れて行けないだろう」
「そうですね」
「だから、万兄弟を居残りさせようかと思うんだ」
「男ふたりですか。確かにあの人たちなら防衛は任せて大丈夫でしょう。見張りなんかも交代制ですから、楽になると思います」
「一方で、こちらは防衛戦力が落ちることになる。フェンシィは連れて行くとしても、艾小姐の防御で精一杯になる可能性がある。ナミとナリは戦闘力がないから、多少は自衛力がある人間をふたりは連れて行きたい」
レティは少し考えてる様子だった。
「ベアトリス、パリーサー、シーリーンが経験者で実績もありますね」
「ベアトリスは拙いな。事実上リーダー格だから、ベースキャンプに必要だと思う。パリーサーはあまり強そうには見えないなあ」
「おっぱいが大きいからですね」
「そうではないけど、そうなのか」
「男の偏見です。私だっていつかはあのくらい」
毛皮の上からおっぱいを強調しても、ないものはないからね。
「いや、パリーサーもやめる」
「どうしてです」
「万兄弟が邪推するからな」
「やはり、おっぱいじゃないですか!」
「フェンシィが一番嫌みを言いそうだし」
ぷくくくっ。
レティが突然笑い出した。
「そんなに笑うところか?」
「だって、フェンシィって一番女の子らしいんです」
「本人は色々あって、今は女をやめているそうだぞ」
「外見だけですよね。中身は誰よりも女らしいです」
「俺も散々殴られたり蹴られたりしたが、どうにも本気で殴り返せない」
「ユウキ様もフェンシィが大好きなんですね」
「何というか、彼女は立派な人間なんだよ。好きと言うよりは尊敬しているな」
「素敵ですよね。男だったら良かったのに、と思うくらいです」
「本当に男だったら、モテて嫌な奴に分類されるな」
「でも、一番女の子していますよ」
「そうかなあ」
突然、レティがキスしてきた。
軽くであったが、確かに唇に触れた。
完璧な不意打ちだった。
女の子からのファーストキスというのは、大抵ほっぺ、とかなのである。
「な、何を!」
「きっと、こうすればフェンシィも凄く女らしく振る舞うようになりますよ」
レティは真っ赤になって言うと、急ぎ足で進んでいった。
照れ隠しみたいだった。
半分くらいは本心かも。
「おい、レティ。ひとりで先に行くな。危ないだろう」
俺も結構衝撃を受けていて、咎める内容が別問題になってしまった。
とは言え、八角棒の俺より、レーザーとスタンガンで武装したレティの方が、遙かに強力なのだった。
その後は、何となく二人して会話ができず、気恥ずかしい空気の中で見回りをすることになった。
途中、会話がないので何となく段差を上る時に手を繋いでしまったが、ドキドキで意外と悪くなかった。
その後も、レティは手を離さなかった。
しかし、これは後々のことを考えると、良くない行動だった。
良くないからといって、簡単に止められないのが人間なのだけれど、お互いが嬉しいことをしているのに、それが良くないことと言うのは何だかおかしな気分である。
一時の感情で、というのはこんな時に使われる言葉なのかもしれない。
その場の勢い、とかかもしれない。
どちらにせよ、ウルウルのレティを見ていると、そのまま放っておく訳にはいかなかった。
ウルウルって、瞳がだぞ。
こんな時、どうすれば良かったのか男友達に聞いてみよう。
女友達に聞いても、きっと殴られるだけだと思う。
見回りから戻ると、専用機を北側の森林に対する壁になるようにしてテントが幾つか張られていた。
キャンピングバスも4台が格納庫から出されて、左右の壁になるよう2台ずつ使われていた。
中央のテントは巨大だった。
チンギスハーンが住んでいるパオ(ゲル)のようなテントである。
(見たことないけど)
アンドロイドたちがインフラ整備をしている間、手伝いの10名もミニスカメイド服であれこれ準備に走り回っている。
これから約2週間過ごすことになるから、色々と大変なのだろう。
時々、フリフリのドロワースがチラつくが、真面目に仕事はしているようだ。
色々、用意してあるんじゃないか!
万兄弟は一応見張りについているが、専用機からAIとアンドロイドも見張っているから大丈夫だろう。
準備ができたら、巨大なテントで夕食兼チーム結成式兼宴会になる予定だ。
テントの外では、既にバッファローが焼かれ始めている。
俺とレティが見回っている間に、ベアトリスとパリーサーと孔明さんで狩って来たそうだ。
森林とは逆の川辺の方に行ったから安全だったそうだ。
危険そうなのはオオカミだけで、それも数頭しか見られなかったそうである。
ここのオオカミは、せいぜいバッファローの子供しか狙えないから、そんなに脅威ではないらしい。
普段は、鹿とかウサギを餌にしているとのことだった。
それより、危険なのはチラチラ見えるドロワースである。
全裸すら見慣れているんだと思い知らされた。
日常(着衣)と非日常(全裸)とのギャップこそが色気なのだろう。
両方の形態を、男は望むのだろう。
普通は手に入らないものだから、全裸は貴重なのである。
きっと、いきなり全裸のストリップなどは興奮しないのかもしれない。
よく、知らないけれど。
今回、トップレス、下半身チラ出し、着衣という変則的な露出ではあったが、なまじ先に見てしまったからこそ、着衣に興奮する。
見たことあるからこそ、この着衣を剥くとどうなるかがわかるのである。
それで、逆に剥いても良いのではないかという、背徳的な意識に捕らわれる。
勿論、妄想なのだが、具体的に妄想できることによって、より馴れ馴れしさみたいなものが沸き上がる。
処女の裸エプロンには驚愕するか困惑するかだろうが、すべてを知り尽くした恋人が裸エプロンだと、親しみがある驚きになり、より興奮することだろう。
未見の処女では、刺激が強すぎて逆に楽しみより禁忌か冗談にしか感じられないのだ。
いきなりメインディシュを出されるような感じだろうか。
その点、チラ見のドロワースというのは、前菜として優れているのだろう。
見張り役の万兄弟も視線が定まらず、仕事にならない様だから、俺だけの主観ではないようだ。
俺はドロワース、いやメイド服集団に、古の大ハーンの様にテントの一番良い席に案内された。
娼館で豪遊する富豪の気分が少しだけわかったような気がする。
とは言え、ナリとナミが料理を持って現れると、俺は新妻たちで頭がいっぱいになっていった。
片方は黒の、片方は白のガータースタイルであった。
きっとノーパンなのだろうが、太股の上部にレース基調のガーターリングが装着され、それが引っ張るように網の様なストッキングをつり上げてていて、大人になりかけの少女としては背伸びに近いファッション? である。
それは男がお願いしても、普通はしてもらえないものであるから、色気は予想以上だった。
黒も白も、どちらも凄く良い。
しかも、ふたりの料理は牛肉の天ぷらだった。
これは、おろし醤油でも、俺の好きな味噌ソースにも良く合い、柔らかくて美味い。
ご飯にも酒にも良く、ステーキ至上主義者ではない日本人にはありがたい。
ビーフステーキ。
子牛ではないが、シュニッツェル。
ビーフストロガノフ。
ビーフシチュー。
色々と出されたが、俺の好みをよく知っているナミとナリにはかなわない。
ただ、赤いガーターストッキング姿の艾小姐が持ってきた牛肉とニンニクの芽の炒め物は、非常に美味かった。
醤なんか手に入らないだろうに、上手く作ったものだ。
涙目で、天ぷらや炒め物を味わっているレティのシチューも悪くはなかったが、やはり、14歳なんだから仕方がないだろう。
フェンシィは紹興酒を平然と飲みながら、色々な料理を味わっていた。
だが、料理をしたのは艾小姐ではなく、きっとフェンシィに違いないと思った。
兄ふたりが、炒め物を食べている様子から確信したのである。
きっと万家では、お袋の味なのだろう。
更に言うなら、ナミもナリも艾小姐も、フェンシィのセンスであの格好をしたのだろう。
妻たちを引き立ててくれるのは良いのだが、艾小姐はガードの対象だからね。
フェンシィは、自分には関係がないというような顔をして、紹興酒を飲み続けるのだった。
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