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08 『CとかA』

 08 『CとかA』




 マサイ上空では、貴重な独身女性が、ずらりと並んでいた。

 でも、CAだとかではない。


 いや、CとかAとかはいる。


「ベアトリス、20歳独身です」C

「フィラー、21歳独身です」B

「レイラー、17歳独身です」C

「ポリーン、18歳独身です」D

「サマン、15歳独身です」A

「パリーサー、16歳独身です」E

「シーリーン、15歳独身です」B

「アズラー、14歳、処女でーす」A

「サーラー、13歳独身です」AA

「エリザベス、11さいになりましたの、です」?


 ちくしょう、ジョアンの奴。

 手伝いだって安全とは限らないんだぞ。

 収入の手助けになるとは言え、若い娘ばかり集めることないだろう。

 待てよ、エリザベスってマーガレットの娘じゃなかったか?

 どちらかというと、ナイナが首謀者か。


 しかし、もう船は飛んでいるのだ。

 5時間ぐらいで到着するとは言え、その後14日間も独身女性を預かっていいのか?

 うーん、若い男女混合も困るのか?


 それでも、何で毛皮の腰巻きだけなんだ!

 1日5Gの手当って、公務員の一晩の手当ぐらいだからか?


 いや、娼館とか、行ったことないからわからないけど。


 でも、5Gって500リナだから2万5千円ぐらいだよね。領内ではひとりの1ヶ月分ぐらいの稼ぎだ。

 年収6000リナになる人の月収を、一晩で稼ぐなら高いのか、安いのか。


 凄く高いか。


 今度、娼館の相場を聞いて、って、聞いてどうするんだよ。


 高いと言えば、背が高いというのは俺の偏見だったらしく、混血が進んだマサイ女性の平均身長は170前後ぐらいだと思われた。

 縦に細長い感じから、少しふっくらと女性らしい感じになっている。


 それでも16歳以上は、バレーボールチームみたいに見えるのだから、最初の入植者や、ナイナやマーガレットが、やはり特別にデカいのだ。


 それとも、彼女たちなりの配慮なのか?


 別の意味でデカいのはいるけど、どちらかと言えばそっちの方が良いかも。

 パリーサー、16歳か。


 ごほん。

 それどころではないんだ。


「レティ、14歳、ユウキ様の許嫁です」A

艾玲玉アイリンユェ、15歳、ユウキ様の侍女見習いです」B

万孔明ワンコウミィン、23歳独身です」♂

万国際ワングァオチー、20歳独身です」♂


 何、この流れ。

 お見合い会?

 それにしても、若いな万兄弟!

 おっぱいで興奮するのはやめろよ。

 特にパリーサーとポリーンに目がいってるぞ。


 俺もだけど。


 ベアトリスやレイラーも美人だぞ。

 違った、艾小姐おじょうさまフェンシィもいるんだぞ。


「ナミ、ユウキ様の妻です」B

「ナリ、ユウキ様の妻です」B

「フェンシィ、ユウキの監視者ヨ」A


 ナミとナリは律儀に応じているが、フェンシィは投げやりだ。

 やさぐれているのか?

 監視者じゃなく、艾小姐のボディガードだろ。


 14歳処女は置いとくとしても、13歳独身というのは、何となくだがおかしい気がする。

 13歳既婚です、よりは良いのかもしれないが、やっぱり変だよなあ。

 色々と問題や問題発言があるが、ゆっくり1つずつ片付けよう。


 ここは船内の大食堂であり、丸テーブルが10台固定され配置されている。

 端にはカウンターがあって配膳したり、バーにもなる。

 カウンターの向こうにも、もう一つ同じ数のテーブル席があって、カウンターは両側に対応できるようになっている。

 キッチンは下の階にあり、エレベーターがカウンターの端に1基付いている。

 ちなみに、船はAIが操縦し、ナビにアンドロイドが付いているので、俺たちの出番はない。

 そして、とても順調に飛行を続けている。


「ベアトリス、ポリーン、それからエリザベスは、こちら側に来てくれ」


 手伝いの10人は、俺たちに対するようにテーブルの向こう側にずらりと並んでいたのである。

 眺めが素晴らしいことは認める。

 窓の外を見るより、ずっと楽しいだろう。

 男ならば。


「あら、もう選ばれてしまいました」


 嬉々とするベアトリスの発言は、取りあえず無視する。

 俺の両隣には素敵な新妻がいるのだ。Bだが。


「さて、残りの君たちはイスラム教徒じゃないか?」


 親が、とか。

 そう言えば、とか。

 形だけで、とか。

 そうなのかしら、とか。


 レティを見ると、彼女は目をそらした。

 私に聞かないで、かな。


「君たちの格好は戒律に触れていると思われる。直ちに着替えてくるように。いや、反論は許さない。14日間は俺が雇用者だ」


 言い訳を聞き始めると言い負かされる可能性があるので、とっとと追い払うことにした。

 肌を見せたから結婚とか、困るのだ。

 妻は4人までとかの戒律があるから、俺なんか直ぐに石打の刑である。


 とは言え、エリダヌス憲章では宗教はプライベートに過ぎない。親でも戒律を押しつけることなどできないのだ。

 自立が基本だから、宗教家と言うのは職業として存在しない。

 領内ではタンゴが祈祷師だか呪術師だが、年齢的に隠居生活者の趣味扱いである。

 ダライラマも同じ扱いだ。

 まあ、名誉職みたいなものである。


 だから、彼女たちに反論されたら、それで終わりである。


 本当は、イスラム教など関係無いのだ。

 きちんとした服装をして欲しいだけなのである。

 殆ど、言いがかりやハッタリの類いである。


 だが、大人しく引き上げていく。

 助かった。

 少し、残念だが。

 十組のおっぱいを見比べられるなんて、そうそう機会はないのだが。

 いや、本音は建て前で隠すぞ。


 さて、次は誰にするべきか。


「エリザベス、こっちに来なさい」


 エリザベスは、ビックリしたように飛んできて、はにかんで見せてから、俺の右膝の上に座った。


 家での習慣なのだろう。きっとそうだ。


 ちょっと変態ぽい構図だが、小さな子なので仕方がない。

 意外と軽いし、柔らかく温かい。

 145センチぐらいのナミとナリより、僅かに小さいのだ。

 おっぱいがじゃないぞ。

 これから5年かけて、20センチから30センチも成長するのだ、多分。


 精神的にも、領地の侍女見習いより幼い感じがする。

 最近は見習い試験が難しくなったので、多少採用年齢が上がったが、それでも10歳、11歳で女学院に入る者はいる。

 中1扱いである。


 ベアトリスとフェンシィの視線が痛いから、話を進めよう。


「エリザベスのお母さんはマーガレットかな?」

「ううん、エリザベスのママはスザンナよ」

「あれ?」

「エリザベスは7歳だから、私の方がお姉さんなの。でも、ママが良く『エリザベスの方が良い子にしてる』とか意地悪を言うの」


 ???


「マーガレット叔母さんの娘が、7歳のエリザベスです。こっちは近所に住むスザンナの娘で、名前は同じですが年は10歳ですよ」


 レティが小声で教えてくれる。


「ううん、エリザベス、一昨日おととい11歳になったの」

「そ、それで、エリザベスは何でここに来たのかな?」

「お仕事?」

「お母さんに言われたのかな?」

「えーとね。この前、パパがカバに噛まれて脚をケガをして働けなくなったの」


 ジョアン!


「違いますよ。エリザベスのお父さんのヘンリーのことです」


 再び、レティが小声で訂正する。


「それで、もう限界だから、ママがコーム員になると言ったら、パパが怒り出して怖いの」


 コーム員て、公務員のこと?


「だから、娼館で働くと言うことですよ」


 三度、レティが翻訳というか、注釈を入れてくれた。ちょっぴり顔が赤い。


「怖かったから、パパとママにエリザベスがコーム員になるって言ったの。そしたら、パパもママも大声で泣いたので、マーガレット小母さんが駆けてきたの」

「それで、仕事があるって言われたのか」


 良い奴じゃないか、マーガレット。


「ううん、女になったか聞かれたの」


 マーガレットよ!


「叔母さん、結構がめついというか、因業というか。お金に関してはシビアな人なので。全く恥ずかしいわ」


 レティも流石に、コメントに困っている。


「でも、エリザベス、先月女になっていたの」


 ええええっ!


「ちょっと、ユウキ様、驚きすぎ」(レティ)

「女には良くあることです」(ベアトリス)

「友人に8歳の時って娘がいます」(ポリーン)

「それは早すぎない?」(ベアトリス)

「私も11歳でした」(ポリーン)

「いや、先月ならまだ10歳ヨ」(フェンシィ)

「私は去年だったなあ」(レティ)


 お願い、あんまり赤裸々に語り合わないで。


「何だか、信じられないなあ」

「だからといって、狙ってはタメヨ」(フェンシィ)

「誰が、狙うか!」

「どうせ、パンツは盗むヨ」

「いつまでもパンツに拘るなよ!」


「ううん、エリザベス、パンツは穿いていないの」

「ど、どうしてかな?」


 俺の背中を冷や汗が流れていった。

 この右膝の上は直か、直なら時価じゃないか!


 俺は少し混乱していた。

 エリザベスは公務員じゃないぞ。


「既に盗んでいたヨ。この変態!」

「違う! 違うよね、エリザベス」

「うん。マーガレット小母さんが穿かない方が良いって言うの」


 何故なんだ! マーガレットよ!


「だって、ユウキ様のところでは、女はみんなこうなんだから見せなさいって言われたの」


 ぴらっ!


 ナミとナリ以外は、その二重の理由がわかって、みんな股間に手を置き赤面した。

 いや、艾小姐も除外だった。


「変態ネ! 大変態ヨ!」


 フェンシィの罵倒は、マサイ上空に振りまかれたような気がした。


 精神的な苦痛も、京太郎氏に請求するべきか悩んでみたが、向こうの方が精神的苦痛は大きかったと言い出して、やぶ蛇になりそうだから考えないことにした。


 フェンシィの兄ふたりは、窓際で外を眺めて、いないふりをしていた。


 何だか悲しかった。

 折角の新婚旅行なのに。

 今度は、自前で行こうと決心した。


 当たり前か!




 それからも、京太郎氏の専用機は、ちゃんとマサイ上空を順調に飛行している。


 とても順調な飛行のはずなのに、何故かひどく混乱していた。

 乱気流もないのに混乱しているのは、俺だけかもしれないのだが、何かがひどく間違っていた。

 迷走している、とでも言うのだろうか。


「エリザベス。これから行くところは北大陸と言って、凄く寒いところなんだ。だから、ちゃんとした格好をしないと風邪を引いたり、寒くて死んじゃいそうになるんだよ」

「私、ユウキ様のどんな要求も、嫌がらずに応えるように言われたの。ちゃんとパンツを穿いた方がユウキ様は嬉しいの?」

「いや、そうじゃなくって……」


 いや、パンツは穿いた方が良いよな。

 でも、問題はパンツじゃなくて、洋服を着て貰いたいんだ。

 いや、パンツも穿いて貰いたいが、どう説明すれば良いんだ!


「やっぱり、パンツは穿かない方が嬉しいの?」

「いいえ、パンツは穿いてください」


 別にどちらが嬉しいかとかではない。

 どちらが嬉しいかと言えば、あちら側の人間になってしまうではないか。

 この場合、正直は悪徳である。

 ほんとか?


「じゃあ、パンツを穿けばユウキ様は嬉しいの?」

「いや、俺が嬉しいかじゃなくって」

「喜んで貰えないと、エリザベス困るの」

「エリザベスが困るとか、俺が喜ぶとか、喜ばないとかじゃなくてね」

「でも、エリザベスには大事なことなの」

「こっちも、エリザベスに大事なことを説明しているんだ!」


 つい、怒鳴ってしまった。

 ちょっぴり、涙目になるエリザベス。

 でも、何故か彼女も必死である。


「なら、エリザベスが嫌がる要求をして欲しいの」


 何でなんだ!


「だって、嫌がらずに応えるのがエリザベスのお仕事なの。ママが痛くてもつらくても我慢しなさいと言ったの」


 スザンナよ!


 いや、会ったことないけど。

 母親もこれでは仕方がない。


「なら、つらくてもパンツを穿け!」

「いや!」


 何で、そこで全力拒否なんだ?

 要求に応えるのが仕事だって言ってたじゃないか!


 ついに泣き出してしまうエリザベス。

 俺との相性が最悪なのだろうか。

 意思疎通が全くできない。


 ちなみに、意思疎通をコミュニケーションと訳す人がいるが、専門用語以外では誤訳である。

 当然、逆も誤訳である。


 外国語と言うのは、その国の概念みたいなものも持ってきてくれる。

 日本では直接置き換わる用語や用法などがない場合は、概念を狭めて訳してしまう恐れからカタカナ語が流行る。

 コンセンサス、とかだ。


 社長が一方的に居酒屋でよいしょしてもらったり、漫画が好きだと宣う総理大臣がいても、コミュニケーションとは呼べるが、意思疎通とは呼べない。

 意思疎通にはアンダースタンド、相手の了解が入っているからである。

 あー、はいはい、というのは意思疎通に入らない。


 概念が単語化するというのは、凄いことでもある。

 その国では、当たり前なことになるのだ。


 実は、英語にもなく、当然日本語にもない言葉がイタリアにある。

 ヒアリングが悪いのでお聞き苦しいだろうが『ミネステラーロ』だか『ミネストラーノ』という言葉である。


 概念で説明すれば、『キッチンにあるあり合わせの材料で美味しいスープを作れる人、もしくは腕前』でいいと思う。


 だが、意味はもっと広範囲であるし、使用法も違う。

 アメリカや日本では『自分の手持ちや手札で勝てる人』と表現される。

 『配られた手札で勝負できる人』と訳しても良いと思う。

 管理職や監督などの能力や腕前を表現しているのである。


 頭の良い人には、これだけの説明で理解して貰えることだろう。


 だが、俺の頭は悪い方だ。

 だから、11歳のエリザベスすら上手く説得できない。


「フェンシィ! エリザベスを何とかしてくれ」

「私、口説くのを手伝ったりしないヨ」


 フェンシィは、プイと横を向く。


「口説くんじゃなくて、説得すると言うか。とにかく、頼むよ。俺じゃ手に負えないんだ」


 拝み倒すように、フェンシィに頼み込む。


「仕方ないナ。貸しにするゾ」


 直ぐに俺の膝からエリザベスを抱き上げると、エレベーターに連れて行った。

 お手伝い用の乗務員室ではなく、自分の客室に連れて行くのだろう。

 フェンシィはあれで、優しい性格なのだ。

 小さい子だから、何とかしてくれるだろう。


 一番難易度が低いと思われたエリザベスでもこれだ。


「さあて、ベアトリス、ポリーン」

「はい、ユウキ様」

「はい、ユウキ様」

「お前たちは、もう説明しなくてもわかるよな」


「パンツを脱げば良いのですね」

「パンツを穿けば良いのですね」

「ええっ?」

「ええっ?」


 何故かお互いの意見の食い違いに、お互いで驚いている。

 俺はこめかみを揉んでから、目蓋の間とか、首や肩の簡単なストレッチをして、頭痛を追い払った。


「レティ、まとめて北大陸用の衣装に着替えさせてくれ」

「奥様たちは?」

「ああ、こっちは手強いから俺が何とかする。レティはこのふたりと、先に戻った連中もチェックしてくれ」

「あの、パンツは?」

「穿いても穿かなくても、インナーに冬用のボディスーツでも着せてくれ。それで、何とかなるだろう」

「わかりました。努力してみます」

「それに、仕事に来ているのにパンツも穿かないような女は覚悟が足りないような気がする。帰ったらナイナに言って給料を下げて貰おうか」


 ベアトリスもポリーンも、少し顔が蒼くなる。

 別にナイナが取り仕切ってると思ってたわけではないが、時には、ハッタリをかましてみるのも悪くない。

 勿論、パンツを脱ぐ覚悟は大いに評価すべきだが、それは仕事ではないだろう。

 いや、パンツを脱ぐ仕事なんか認められるもんか!


 表向きだがな。


「レティ、お前もだからな」


 レティは苦笑してから、ちらりと艾小姐を見ると、艾小姐はナリにくっついたので、ベアトリスとポリーンを連れて出て行った。


 結構、気遣いができる娘だった。


「それより、お風呂に入ってムダ毛処理しましょう」

「全部、ムダ毛かも」

「昔はなくても平気だったのに、何故でしょう」

「それでも腋毛は処理するでしょう」

「やはり、ムダ毛でしょうか……」

「経験しないとわかりま……」


 なんだか、物騒な会話をしながら出て行く3人。

 どうか、これ以上は馬鹿なことをしませんように。

 俺は、気遣いができすぎるのも問題だと訂正した。



 さて、お立ち会い。


 残ったのは、俺の妻にして侍女。

 従順な頑固者たちである。

 何しろ、生まれて此の方16か17年、一度たりともパンツを穿いたことがないという、生粋のノーパン主義者たちである。


 クラとロマ曰く、


「一度穿いたら戻れない」


 ミヤビとカレン曰く、


「一度脱いだら戻れない」


 などと、両極端な意見もあるパンツだが、普及するのは意外と歴史が浅かったりする。


 日本では勿論、明治維新以降だし、西洋でもドロワースができたのは15世紀頃で、男性用の下着の転用から始まったらしい。

 それ以前は大体穴あきのボディスーツだったが、まあ、可愛くないよなあ。

 当然、更に昔は腰巻きか褌だったわけで、これは何処の国でもそう変わらないし、男女別ってわけでもない。

 で、腰巻きなら江戸時代までずっと日本ではそんな感じだったから、日本はずっとノーパンの国でもあったわけである。


(男の話はしていないぞ)


 パンツが普及する基本条件はいくつかある。


 布が大量生産されて安くなること。

 生理用品が高性能になり、更に安価で提供されること。

 普段の着心地もだが、高性能な生理用品の装着感が良いこと。


 男にはわからないだろうが、生理中でもミニスカートの制服を着る女子中高生なんてのは、生理用品に対する信頼感がなくては成立しない話である。

 信頼できない時代にはブルマ着用が流行ったらしい。

 ブルマはパンツ型で、アンダースコートや見せパンなど、スタイルは共通する。


 昔のタイツ、スパッツなどでは安心できなかったのだろう。

 当然、ドロワースも全身タイプのボディスーツ型下着もボツである。

 中世ヨーロッパを舞台にした話に出てくるカボチャパンツなど、男物のトランクス並みに安心できないだろうから当然ボツである。


 しかし、数年前まで布がなく、全裸が基本だったエリダヌスでは、いまだに布製品は輸入品の舶来品である。

 高級であるイメージが強くて、普及しない。

 パンツが普及しないと、パンツ着用が前提にある生理用品も普及しない。


 実際に、使用しているのはお休みができないほど忙しい官僚級の者たちだけである。

 地球出身者が手本となり、色々とアドバイスしてくれるからだろう。


 しかし、秘書のマナイですら、3日ほど休んで出てこない。

 いまだに干し草を積んで動かないらしい。

 つまり、マナイもノーパン主義者なのである。


 戦後、女と靴下ストッキングは強くなったと言われたが、女性の社会進出は、下着や生理用品の発展と相関関係がある。


(個人的な思い込みです)


「ナミ、ナリ」

「はい」

「はい」


 このふたりはもの凄く従順だから、『パンツを穿け』と言えば『いや』などとは言わない。

 だが、嫌々穿いて貰っても、感情的なシコシコじゃなくて、シコリが残るだろう。

 ここは、嘘、大げさ、紛らわしいを使ってでも、納得して穿いて貰わなければならない。


 しかし、既に誤魔化されたりしないぞ、という雰囲気に満ちている。

 今までの遣り取りを聞いているからだろう。


「俺はナミとナリにも、可愛いパンツを穿いて欲しい」


 そう、ここは可愛いを強調した方が抵抗は少なくなるはずだ。


「何故なら、俺は地球出身の男だからだ」


 ?

 ?


「地球出身の男は、スカートの中から見える可愛いパンツに弱いものなんだ」


 まだ、疑いの目をしている。


「勿論、パンツだけでは興味はわかない。何故なら、スカートに隠されたパンツがどんなパンツなのか想像したりするのが楽しいからだ。もし、ナミとナリのスカートが偶然めくれた時に、褐色の素肌が見えても誰も驚かない」


 ちょっとの間。


「だが、一瞬真っ白な純白の清純そうなパンツが見えたら、地球の男どもは、皆、驚きと渇望と満足感を同時に味わうことだろう」


 少し大げさすぎただろうか。

 ナミとナリには『地球の男ども』なんて無関係だからなあ。


 しかし、思わぬ援護射撃があった。

 艾小姐が、ポシェットから赤と白のパンツを取り出して眺めていたのだ。


「その赤いパンツは元々艾小姐が穿いていたものだが、白い方は俺が選んで穿かせたものだ」


 本当は、クラが持ってきたものだが、今は細かいことはどうでも良いだろう。


 ナミとナリは、少し驚いた顔をしていた。

 どの部分に驚いたのかは、墓穴に直結しそうなので、今は置いておく。


「そもそも、パンツは魅力的なアイテムなだけではなく、女性の安全性にも優れている。寒いところでは女性の下半身を寒さから守ってくれるし、健康にも良い」


 少し、真剣に聞いているようだ。


「付け加えるなら、結婚後に子供ができ易いし、健康な子供を産むことができる。その証拠に、妻の邸に住むもので、子供がいる者は全員パンツを穿いているだろう?」


 ナミとナリはショックを受けている。

 エリダヌス人女性が結婚すると言うことは、子供を産むと言うことなのだ。

 ナミとナリも例外ではない。

 早く子供を産んで、ギルポンやナルメの村の者を安心させたいはずである。

 今まで散々、催促されているからだ。

 子供ができないと、後釜が送られてる可能性も高いのである。


 クミとかだったら、どうしよう? 困っちゃうな。


 おほん。


 実は、妻たちの邸では、子供たちの教育のために全員がパンツ、またはそれに類するものを着用することになっているのだ。

 パンツを穿いたから子供ができたわけじゃないのだが、これも後先どちらの話だから別に良いだろう。


 どうだ、妻たちよ。

 ノーパン主義者たちよ。


「少し、準備が必要です」

「少し、準備をしてきます」


 ナリとナミは、艾小姐を連れて出て行った。


 そんな、パンツを穿くぐらいで大げさなんだから。


 俺は大人しく待つことにしたが、その後の展開は俺の予想を裏切ることになった。

 

 いや、驚愕の展開か。



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