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07 『サバンナにて』

 07 『サバンナにて』




 そこは、夢の国のようだった。

 草原と小川に大きな池が点在し、小規模な林や森も適度に存在した。

 大きな起伏もなく、全体的には平原と言って良いだろう。

 空は澄み切って何処までも蒼く、白い雲も夏を感じさせる。


 国立公園や保護地区に指定されるのは、こんな感じの『大自然』と呼ぶべきサバンナなんだろうなと納得してしまうほど、美しい光景だった。


 バッファローの群れは夏場は北大陸まで移動するので見かけなかったが、替わりにヌーの大群がいた。


 エランドやガゼルは相変わらず多く、シマウマやキリン、ゾウもいた。

 池や小川には、水牛やサイ、フラミンゴも沢山いる。

 勿論、肉食獣もあちこちに見かけられ、ライオンのコロニー、単独のチーター、群れるリカオンやジャッカルなども見られる。


 この平原は東西800キロ、南北1000キロに達し、約80万平方キロ。

 うちの関東平野の5倍に達する。

 農地にすればウクライナに匹敵するだろう。

 農民の俺にしてみれば、過酷な熱帯であるのが残念なくらいだ。


 更に南にはヌーの繁殖地である似たような平原が低い山を隔てて広がり、西にはタンガニーカ湖があると言う。

 北西にも大小の湖沼地帯が存在しているらしく、生態系は豊かである。

 北はナイル川の流域であり、密林地帯が広がっているが、調査は進んでいない。


 ただ、バッファローの群れが北大陸まで移動する密林の隙間が存在し、ナイル川河口までは熱帯から温帯地域まで環境が変わっていく。

 ナイル河口には巨大な砂州と点在する島々が存在し、潮目により北大陸に渡ることが出来る。


 バッファローは多分、北大陸に棲息していたのが、この地形が原因で渡り鳥のような移動をすることになったのだろうと言われている。

 密林の虎にとってはありがたいことだろう。

 毎年何万もの群れが密林の中を往復するのだから、何百と言う単位で餌食になっていると思う。


 砂州の東側を黒海、西側を地中海と呼んでいる。(京太郎氏命名)

 地中海北岸は温帯から亜寒帯であり、大陸の奥地に行くほど寒くなっていく。

 シベリアンタイガーが棲息する針葉樹林帯の北は、北極圏である。


 しかし、ここは熱帯でありサバンナである。

 今日はそれを楽しもう。


「うわあー」


 ナミとナリが広大な景色と多彩な動植物に歓声を上げた。

 特に、シマウマの美しさと、キリンの物珍しさに感激している。


「シマウマの毛皮をお土産にするか?」

「とんでもない、可哀想です」

「見ているだけで十分です」


 まあ、残念なことに相手は野生動物なので、近づいて餌をやるという訳にはいかないのだ。

 しかし、ナミとナリはキリンとシマウマの姿を飽きることなく眺めていた。


 一方、完全にはしゃいでいるのが、タルトとコラノである。

 いつの間にかキングまで一緒になって、野生動物たちを追い回している。

 あんなんじゃ、厳しい生存競争を生き抜いている動物たちを捕まえられるわけがないが、気が済むまで遊ばしておこう。

 明日以降は、プロのガイドが狩り方を教えてくれるだろう。


 ジョアンとナイナが、お昼用のキャンプを作り始めた。

 運転手ふたりとフェンシィが手伝っている。

 レティは万兄弟ふたりに、周辺警戒の仕方を実地で教えている。

 艾小姐は小さな妹か何かのように、ナミとナリにくっついて回っている。

 秘話回線を覚えたのだろう。


 俺はジョアンに言われて、メインディシュを物色中だ。

 手槍を一本持って、様々な動物たちを観察する。

 まあ、イボイノシシかトムソンガゼルで良いだろう。

 そう思ってガゼルやインパラの群れを観察していると、キングが期待して寄ってきた。


「キング?」

「グルルル」


 ああ、こいつの餌が先だな。

 仕留めても先に食われてしまいそうだ。


 俺は先にキングの腹を満たしてやることにした。

 何しろ、ライオンの雄は獲物を捕るのが下手すぎるのだ。

 ライオンは獲物の80%は、雌ライオンたちがパーティーを組んで狩る。


 まあ、単独で追いかけて狩れるのは、足が速いチーターくらいなものだ。


 で、残りの20%は雄が狩るのかと言えばNOである。

 大体は、他の動物が狩ったものを横取りするだけだ。

 雄ライオンが狩れるのは、偶然、出会い頭でライオンの前に飛び出してしまった不運なものだけである。


 しかし、キングはガゼルじゃ気に入らないらしい。


「インパラか、イボイノシシで良いだろ」


 だが、こいつはどうやらヌーが良いらしい。


「おい!」


 同じ偶蹄目ウシ科であっても、ガゼルやインパラ、ウォーターバックやエランドは鹿の仲間にしか見えない。

 エランドはヌーよりデカいが、アンテロープの仲間である。

 ヘラジカとかムースぽく、鹿の仲間に見えるから、少しだが怖くない。角は痛そうだがな。


 だが、ヌーはデカいウシだ。

 しかも、ここのは体重500キロはありそうだ。

 黒毛和牛ぐらいある。

 巨大な群れをなし、大きな角があり、タフだ。

 平和そうに見えるのも、個体数が多いのも、強いからだ。


 俺はため息をつきながら、ヌーの群れに向かった。

 友人の期待には応えなきゃならないからだ。


 ごつい雄たちが周囲を警戒して、雌や子供たちを守っている。

 だが、肉は若い雌の方が美味いと相場が決まっている。

 まずは雄を排除しなければならない。


「キャゥェィー、ホロロロロッー」


 俺は、本職のアパッチ族?をも呆れさせるような奇声を上げてヌーたちを警戒させ、突っかかってくる血の気の多い若い雄たちに、手槍で角を弾いて嫌がらせを続けた。

 やがて、うんざりした年配の雄が移動を開始すると3千以上の群れが続いて、川沿いを南下し始めた。


 ドドドドッ、と地響きがする。


 群れが少し間延びした隙を突いて、雌の一頭に手槍を投げ込む。

 槍は50mほど先の、雌の後ろ足に突き刺さった。


 しめた!


 それからは、ひたすらマラソンである。

 5キロぐらい走ったところで、その雌は遅れ始めた。

 3分ぐらい辛抱してついていくと、完全に遅れて群れの最後尾にまで落ちてきた。

 やがて、速度ががっくりと落ち、群れからはぐれた。

 俺は速度を上げ、引きずっている手槍を掴もうとしたが、いきなり横からキングが飛び込んできて、雌の首筋に噛みついて仕留めてしまった。

 直ぐに内蔵を貪るように食い始めた。


 俺は、昼のおかず用に少しだけ肉をわけて貰いたかったが、たちまち集まって来たリカオンやジャッカルと共に、キングに五月蠅く追い払われるだけだった。

 食事の邪魔をするなと言うことだ。

 野生だから、こうしたところは譲って貰えない。


 獲物の横取り独り占めは、ライオンの雄なら常識なのである。

 彼はこれから3日間は食事を続けるだろう。

 雌や子供が来れば、少しは囓らせるが、自分の食休みの時間だけだ。


 俺はなんとか手槍を回収すると、その後、2時間もかかって、飛び跳ね回るトムソンガゼルを一頭仕留めてキャンプに戻った。

 現地人には『何だ、ガゼルか』という雰囲気の歓迎を受けた。


 まあ、確かに現地人はレーザーライフルを使ってあっという間に仕留められるから、こんなに苦労しなくても良いのだ。

 ただし、毛皮は焼け焦げて、商品価値が大分下がる。


 俺んとこは、ちょっと前まで石器時代だったんだぞ。


 などと、言い訳してみるが、負け惜しみにもならないようだった。


 レティだけはキラキラした目で賞賛してくれたが、ナミとナリが俺の苦労を労って、ちやほやしてくると、不機嫌になって立ち去ってしまった。


 いいんだ、これは新婚旅行なんだからさ。


 ガゼルの肉は少し癖があったが、まあまあだった。

 俺は余った肉は味噌漬けにして、樽詰めにしておいた。

 熟成させると更に美味くなるからだ。

 サンヤ牧場で習った技術だが、味噌漬けは俺のオリジナルである。


『肉食獣以外はかなり美味い肉になる。そこが地球とは大分違うんだ』


 ジョアンはそう言っていた。

 とはいえ、牛や豚を食べ慣れた現代人には、まずまずという評価しか得られないらしい。

 ただ、ここで生まれ育った世代は、逆に牛や豚の方が癖があって美味しくないという評価になりそうだ。

 エランド、インパラ、ガゼル、イボイノシシ、ツチブタ。

 それぞれ味が微妙に異なって、逆に豊かな食生活を送れるような気がする。

 ヌーは食べたことないが、どうなんだろう。

 バッファローは、普通に牛肉だと言われているが。


 まあ、どれもマトンより癖はなく、調理もしやすいよな。

 実はシマウマも、地球の馬肉と同じくらい美味いのだ。

 ゾウとキリンは流石にジョアンも食べたことないらしい。


 マサイにはイスラム系もいるので、ツチブタやイボイノシシはNGなどだそうだ。

 シマウマは元々イギリス系だったマサイ人たちがNGである。

 インドでも一部はウシが駄目とか、食文化とは難しいものである。


 この星で200年も過ぎれば、地球から引きずってきた習慣は変わるかもしれない。

 日本だって、ずっと肉食は禁止で、牛乳も飲まなかったからだ。

 今では、北京ダックも子豚の丸焼きも、アメリカ牛もチェダーチーズも食べるし、牛乳も毎日飲むし、生卵を食べてもアメリカ娘みたいに失神しない。

 それでいて、魚介類も食べまくりである。


 現実には、ハンターというのは殺したものを無駄にしない。

 だから、食習慣よりも職業倫理が徐々に上回っていくだろう。

 いただきます。ごちそうさま。

 そうした精神を元々持っているのだ。


 時間は少し遅くなってしまったが、トムソンガゼルの肉をさばき終えたので、みんなで昼食にした。


 パンとフルーツにカリフォルニアワインを出され、ガゼル肉の塩焼きやバター焼きを作り、一応、ナミとナリには結婚のお祝いが述べられて、大宴会になった。


 やがて、早めに仕事を切り上げたマサイの人々が合流してきて、他の動物たちの群れに負けないくらいのコロニーを作って宴会を繰り広げた。

 酒屋と料理屋はトラックでピストン輸送を始めた。稼ぎ時だと思ったのだろう。

 正しい判断である。


 酔ったダニエル首相が、周囲の人々に『我々の街の名前はユウキ代表に決めて頂こう』と言い出すと、全員が俺の発表を待った。


「この美しい土地と景色。これこそがマサイだ。皆の出身地は色々あっても、ここに住むのはマサイ人である。君たちの子々孫々は、この土地にマサイ人としての誇りを持つだろう。だから、あの山の名はキリマンジャロ山にする」


 少し、さざめきが起こった。


「そして、この平原は、人類発祥の地に敬意を表しンゴロンゴロ平原とする。だから、街の名はアルーシャだ!」


 あちこちから歓声が上がった。


「ケニアの故郷を忘れられない諸君は、キリマンジャロ山の北の農地にナイロビの街を造り、大いに発展させて貰いたい。そして、君たちと君たちの子孫は、ドドマやダルエスサラーム、ザンジバルやムワンザまで広がり、世界中をマサイにしていくことだろう」


 マサイ人たちは、黙って目を輝かせていた。

 内なる喜びを、どう表現して良いのかわからないようだった。


「お祝いに、今日の宴会は俺の奢りだ。酒代や肉代は全部ハッサン大臣のところへ請求してくれ!」


 うおおおー。


 これで、反対者は皆無になった。

 マサイ人たちは未来を思い、感動し、感激し、熱狂し、歌い踊り回った。


 酔ったダニエルもジョアンもナイナも喜びを表し、レティが色々な意味で酔って両頬にキスしてきた。

 結局、その日は夜通し飲んで騒いで、またしてもナリとナミとの初夜を逃してしまった。


 サバンナの夜は、領地の夜と同じように暖かく、野宿も苦にならなかった。




 翌朝、空港で出発準備をしているとハッサン大臣が現れて、ゴニョゴニョと申し訳なさそうに言い訳していた。

 彼にしてみれば、マサイを譲った恩人の俺に『アルーシャ』の名前までつけて貰って、やっと街中のギクシャクした感じが一掃されたのに、更に昨日の宴会の経費かかりまで持って貰うのは心苦しいようだった。


「それで、幾らかかったんですか?」

「970G(485万円)でございます」

「ここは、ワインが全部輸入物でしたね?」

「はい、ブドウが成長しすぎて、良いワインは出来ません。トマトも水っぽいですな」


 暖かく、水分が多いとブドウの樹は大きくなりすぎるらしい。

 実は美味しいのだが、水分が多くて良いワインにはならないと言う。

 貴腐ブドウと言うのがあったような。

 素人でも、出来るのだろうか。


「トマトは少し干しとくと美味くなる時がありますよ。うちでもドウトンボリが、その方法で上手いケチャップを作ってますから」

「それは良いことを聞きました。試してみましょう」


 俺は脳内で何か重要なことを思い出しかけたが、上手く結びつかない。

 水分が多いと何かがあるのだ。

 何だっけ?


「えー、昨夜の代金は、もう一つの金塊で支払っといてください」

「ははっ、ありがとうございます」

「それから、40キロの金塊の両替手数料を1割ホエール銀行アルーシャ支店に」


 そう、今日からは仮称マサイ支店ではないのだ。


「はい、承りました」

「もう一割を、マサイ財務省に払っておいてください」

「そ、それは余りに申し訳なく……」

「良いんですよ。色々無理言ってますから」


 ハッサンは一応イスラム教徒だから、酒は飲まないのだ。

 だから、昨日から仕事をし続けている。


「いいえ、私のは仕事ですから」

「もう一つ、ご面倒をお願いしたいのですが」

「何なりと仰せ付けください」

「実はそこの毛皮を中国の共産党の幹部に届けておいて欲しいのですが」


 ハッサン大臣は、すみに置いてある虎の毛皮を見て仰天した。

 密林に棲む虎は、この星のハンターでも命がけだし、なかなか遭遇しない。

 相手が強いか弱いかわかるのである。

 特に武器で見分けるのだろう。

 俺は八角棒しか持っていなかったからなあ。

 母さんなら日本刀で真っ二つにして、毛皮は売り物にならなかったろう。

 いや、レーザーで焼くよりはマシかもしれない。


「こ、これは何とも見事な虎ですな」

「ああ、今朝襲いかかってこられたので、つい退治しちゃいました。処理する時間がないので剥いだだけなんですが」

「ついって、いや、最高の職人に仕上げさせます」

「実は、今朝のネットオークションに出したら中国共産党の幹部が500万人民幣レンミンビィで落札しましたので、ホエール銀行のマサイ財務省宛に振り込むように指示しておきました。毛皮は、税金2割でしたよね」


 大臣は再び仰天した。


 500万人民幣は1万6千G、約8千万円である。

 その2割は3200G、1600万円になる。


 虎の毛皮は、昔の中国では捕れたら皇帝に献上することになっていたぐらい貴重品である。

 虎の毛皮の上で寝ると、EDにならないという伝説が存在するぐらい貴重品である。


 まあ、中国の皇帝は妻が多かったからなあ。


 しかし、これで大臣のところと言うよりマサイ財務省には、40キロの金塊の1割で4千G、毛皮の代金の2割で3千2百G、合わせて7千2百G、約3千600万円の臨時税収が入ることになった。

 これは、マサイの税収としては2ヶ月分近くになりそうだ。

 きっと、小麦畑が広がることだろう。




 けれどもだ。

 世の中、上には上がいるもんだ。


 俺たちが北大陸まで行く旅客便なのだが、これが1万トンクラスの豪華船で、京太郎氏の私物なのだそうだ。

 地球を一周する豪華客船は、5万トンから7万トンぐらいあるけど、3千人から5千人ぐらいは乗れる。

 それなのに、これは1万トンで100人そこそこの仕様になっている。

 ハンティング用なのでパーティー会場までは無いが、その代わり後部貨物室には、バスの大きさのキャンピングカーが4台も積んである。

 前4輪、後ろ6輪のダブルタイヤで、簡易だがバストイレ付き、調理場あり、運転席は2階になっていて360度警戒できるし、1階からは前方まで良く見える。

 従業員は全員アンドロイドで、船のメンテナンスから客の世話係、キャンピングカーの運転手や医者までいる。


「金塊の100個や200個じゃあ買えないだろうな。これを年に1回程度のハンティングに使うだけとは、金持ちって凄いな」


 俺は思わず呟いてしまった。


「何言ってるネ。ユウキも凄い資産家ヨ」

「いいや、フェンシィ。俺は貧乏な農民なんだよ」

「金塊7000トンも持っていて、何処が貧乏なのカ」

「あれは、俺の稼いだかねじゃないんだ。正確には金とか財産じゃなくて、宇宙船の部品なんだよ」


 あれはオペレッタの部品代としてホエール軍が持ってきたものである。

 それを、チカコが資産運用で増やしてしまったが、俺はインドやチベットで使い、CIAにも投資してしまった。

 株式会社CIAは律儀にも15%の株式を寄こしたので(俺にも責任はあると言うことだ。動議を左右するほどは寄こさないが)、エリダヌス財務省で管理している。


 それでも減らなかったが、いや、豊作氏が樹脂の代金として定期的に金塊を持ってくるようになって増えていった。

 更に、領地にニタ村から銅を取り除いた余りの金が金塊として届けられるので、1段目の在庫も増えていくばかりだった。


 バイオレッタとジュリエッタの制作で、領地の金塊は大分使ったのだが、途中からオペレッタは、不揃いな領地の金塊より空港のホエール軍が持ってきた(またはチカコが儲けた)金塊の方が計算しやすく使い勝手が良いと、空港に溜まっている方を優先的に使い出したのだ。

 しかし、それも再びスリム化に成功したのか、結構余ってしまった。


 俺はオペレッタが食い散らかした金塊を整理し直して、2隻の輸送船に押し込んだのだが、入りきらなかった金塊を空港の隅に置いておいた。

 オペレッタが追加で必要だと思えば、空港なり領地なりに積んである金塊を勝手に持って行くだろうとそのまま放置してあるのだ。


 それでも、物騒は物騒なので、土をかけて使い古しの煉瓦の山に見えるように細工はしたのだけれど、草が生えてきて本当に誰も気づかないような状態になってしまった。


 まあ、領内では金塊は使えず、リナ貨か物々交換だし、銀行に行けば正式なGなり、エリダヌス独自の100G金貨が置いてある。

 領内では、本当に金塊なんかオペレッタ以外は使い道がないのだ。

 金塊が価値を持つのは外国に行った時だけなのである。


 そこで、今月は小遣いが足りないし、京太郎氏は経費を払ってくれるかわからないし、急ぎの新婚旅行だったのでキン財務卿閣下に前借りを頼んでいる時間がなかったから、少し拝借した。


 本音は、マサイに行くドサクサに紛れてへそくりを作ろうと思ったのだが、ハッサン大臣に500リナか、1000リナぐらい都合して貰おうと思っていただけだ。

 リナ貨は、貴重品なのである。

 何しろ墜落したトレインから作っているのだから。

 もう、2台目の貨物を、リナ貨に作り替えてしまった。

 ただ、トレインは旧式になるため、何両か払い下げて貰えそうだった。

 支払いは金塊で良いのだろう。


 そんな感じだから、金塊泥棒ではなく、せいぜい部品の横流しか?

 少なくとも領内では誰にも咎められない。

 気にもされないだろう。


 持って来れなければ、マサイとエリダヌスのホエール銀行を通じて、今回の経費は京太郎氏に請求しようと考えていたのだが、まあ、結果オーライ?


「まさか、国家の財産だったんじゃないネ」

「うーん、オペレッタのものではあるのだが、損害賠償だから元々は俺の物かな。チカコが運用して増やしたから、あいつにも権利があるかも」


 フェンシィは、近くに6万トンもあったことは知らないのだ。


「泥棒じゃないなら別に良いネ。それより出発ヨ。早く準備するネ」

「ああ、そうだな」


 タルトとコラノのことはジョアンに頼んであるし、ここから先は金が必要なところじゃないから心配はない。


 食料も水も着替えも積んだし、必要な武器は、俺には八角棒の他にはサバイバルナイフぐらいだから、既に積み込んである。


 それじゃあ、さっさと出発しようか。



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