06 『マサイ到着』
06 『マサイ到着』
マサイ人というのは、100%マサイ族出身者で構成されているわけではない。
元の国籍だけでも、ケニア、タンザニア、ウガンダ、コンゴ、エチオピアなど広い地域から集まっており、血統から見てもアフリカ系だけではなく、イギリス系、ドイツ系、イラン系、アイルランド系などかなりの国との混血が当たり前になっている。
ジョアン・ヌゲーは、先祖にアイルランド人がいるらしく、後ろにいる妻のナイナは半分はキクユ族だが、そのキクユ族の母がドイツとスウェーデンのクォーターであり、父もどうやらアメリカ系のケニア人だったらしい。
何がマサイ人なのかと言えば、やはり文化とか習慣なのである。
朝食がフレンチトーストとミルクとオレンジジュースと言えばアメリカ人であり、納豆と味噌汁だったら日本人であり、トマトスープにチャパティやプランテンならばマサイだ、という程度なのかもしれないが。
人種差別だのナショナリズムだのは、昆虫型宇宙人とかに出会ったらどうするのだろう。
即戦争なのだろうか。
人類滅亡でも?
ちょっと、心配である。
相手が、うさミミ宇宙人だったら?
そう言えば、昔のマサイ人は牛の血を飲んだりした。
ストローを持っていて、チョンと刺して吸うのである。
終わると軟膏みたいなのを塗っておしまい。
牛に殆ど影響はない。
それが、今ではトマトスープになっているのかもしれない。
まあ、本人がマサイがルーツだと思っていれば、立派なマサイ人なのだ。
背が高いことが条件なのではと、密かに疑ってはいるのだが、当たり前すぎて誰も疑問に思ってないらしい。
「ジョアン! その脚、どうしたんだ」
俺が慌てるのも無理はない。
何しろ今回の主力選手であるジョアン・ヌゲーが右足首から下を再生装置で包んでいるからだ。
車椅子に乗り、後ろで妻のナイナが介添えをしている。
「いやあ、面目ない。チーターと戦っている最中にカバに噛みつかれた。水際だから気をつけるべきなのに、不覚だった」
百獣の王と呼ばれているのはライオンだが、現実には象の方が強い。
サイも苦手だし、水辺のカバや森林の虎にも負ける。
地の利がなくては勝てないのである。
昔、エジプトのファラオが行った『獅子狩り』は、実際には『カバ狩り』が正しいらしい。
カバはかなり凶暴であり、水辺ならタフである。
「まあまあ、空港で立ち話も何ですから、朝食でも取りながらゆっくりお話ししましょう」
妻のナイナが笑顔で取りなしてくれた。
アフリカ系の顔立ちだが、肌は白いというのかバター色だし、髪も栗色だ。
昔ならば、アメリカ人以外では、あまり見かけないだろう。
車椅子は電動だったが、ナイナの介添えで動かしていた。
ジョアンが、まだ車椅子に慣れていないのだろうが、慣れて貰っても困るのだ。
俺たちはぞろぞろと後に続いた。
金塊二つは、万家の兄たちが喜んで運んでくれた。
今回は勝手に飛び出してきた艾小姐についてきたので、経費が出るのか良くわからないから、滞在費だというと文句など出なかった。
フェンシィが1個持って帰れるという時点で、もう言いなりだったのだが。
フェンシィは、金塊1個で心まで売らないと言っていたが、兄ふたりは違うようだ。
兄さんたちのパンツに価値はないと思うのだが。
負債が無くなれば、妻が持てるという単純な理由だったが、若い男にとってみれば、これは当然の理由でもあった。
ナイナは、周囲が柱だけで囲まれ、壁はなく、バナナの葉かなんかで屋根を葺いた南国風の店に連れて行った。
ナミとナリの格好がよく似合う感じである。
喫茶店であり、レストランであり、酒場でもある店だった。
観光客の心理に合わせた作りであるのだが、本当は現代建築でも作れるのだ。
屋根の葉っぱには樹脂が塗られているし、基礎にはコンクリートが打たれているし、樹の柱の中には鋼の芯が走っているに決まっている。
しかし、観光客はこういう雰囲気を好むのだ。
冷蔵庫や照明設備、音響機器、水洗トイレや清潔な厨房を望むくせに、外側だけでも未開地に来たと思いたいのである。
早速、店員に金塊二つをハッサン財務大臣のところへ届けて貰い、両替を頼んだ。
店員たちは仰天したが、ジョアンが俺の正体を告げると更に仰天した。
もっとも、最初にトップレスで仰天したのだが。
「首都の名前はまだ決まらないのか?」
「それが、北東にある山が、ケニア山かキリマンジャロ山かでもめてな。どちらでもいいと思うのだが、拘るやつは沢山いるんだよ」
「キリンヤガ山なら、ここはナイロビか。待てよ、それじゃここはマサイじゃなくてケニアってことだぞ。キクユ族の地か?」
マサイマラは確かにケニアだが、マサイの中心はセレンゲティの方で、タンザニアだったと思う。
西にあるのはタンガニーカ湖で、ヴィクトリア湖じゃなかったはずだ。
いや、マサイはヴィクトリア湖で、タンザニア・コンゴ国境にタンガニーカ湖があるのだっけかな。
でも、マサイは国境が出来る前から住んでいたんだよな。
ケニアもマサイか。
元は狩猟民だからな。
確かに、ややこしい。
「ちょっと違うが、それをそのまま兄貴に言ってくれないか」
「その、ダニエルが決めれば良いじゃないか」
「兄貴はマサイ山にしたがっているが、少数派だな」
「見たまんまだと、アイガーとかじゃないか」
「観光客はそう言うな。だが、俺は直接アイガーを見たことないんだ。見たままならピラミッドが近いかな」
それじゃ、エジプトだよ。山じゃないし。
「雪は降るのか?」
「山頂部は毎年白くなる。お陰でナイル川が豊かだよ。北部は香辛料とサトウキビの畑が広がってきた。こちら側はフルーツだな。自生種を品種改良した方が味は良いみたいだ」
「待ってくれ。ナイル川はエチオピアだろう」
「だが、あの規模はナイル川なんだよ。アマゾンに近いけど、アマゾン川というわけにはいかないだろう?」
ここから見ると、東北部に山があり、山裾から北部に向かう川はいくつかの支流と合わさって大河になり、北大陸との境界まで流れている。
勿論、周囲は密林で、虎やヒョウが出まくりである。
「それもそうだな。今更、ブラジルにするわけにもいかないしな」
「ユウイチ様が命名しておいてくれれば良かったんだが」
「その頃、マサイに譲るとは思ってもみなかった筈だよ。マサイに譲るのを決めたのもレイコだし。親父ならメコン川とかになっていたと思う」
「…………」
店員が椰子の実ジュースを持ってきた。
二日酔いにはそれが良いらしい。
流石に椰子の実を切ってストローを刺したものではなく、グラスに氷が入っていて、炭酸も入っているようだ。
タルトとコラノは、焼いたバナナの料理を喜んで食べている。
芋みたいだそうだ。
実はバナナとプランテンというのは同族だが、間に数十種類もの品種があって区分は難しくなっている。
黄色く甘いものをバナナと呼んでいるのは、バナナしか食べたことのない国の人である。
それしか手に入らないから、茶色や青いバナナに火を通すなど思い付かないのだろう。
勿論、黄色いバナナでも火を通して料理したりもできる。
料理に詳しい人は結構平気で混ぜる。
カレーにバナナ。
マカロニサラダにリンゴ。
酢豚にパイナップル。
まあ、嫌いな人もいるよね。
レーズンの入ったカレーピラフとか。
シューマイの上のグリーンピースとか。
何故か女の子は嫌がるよね。
いや、グリーンピースはフルーツじゃないんだけども。
うぐいす餡に、イチゴとかミカンとかも嫌なのかな。
今度、試してみよう。
まあ、ブルーベリーの味噌汁ほど嫌がられないよね、きっと。
「ところで、京太郎氏の依頼の件なんだが」
「ああ、頭が痛いな。失敗しておいて何だが、俺もかなり頑張ってはみたんだよ」
「何が悪かったんだ?」
「頭が良いんだ。しかも覚悟みたいなものがある」
「覚悟?」
「そうだな、例えば銃器持った人間には戦いを挑まない。スタンガンや麻酔銃などもだ。刀や槍だと戦う」
「銃を恐れるのか?」
「恐れると言うよりは、卑怯だと思われているような気がしたな。麻酔銃で捕まっても不名誉ではないという顔をしていた」
俺はある存在を思い描いた。
「騎士か?」
「ぴったりだな」
「それは手強そうだ」
「ああ、全くその通りだったよ」
俺とジョアンは、一緒にため息をつくのだった。
何にせよ、一度見てみないと話は始まらないだろう。
そのためにも準備は必要なのだが、ジョアンに任せておけば大丈夫、という計画しか持っていなかったので、最初から躓いてしまった。
ハンティングのガイドというのは、お客を楽しませるようにしているわけだから、実質はリーダーなのである。
客商売だから遜っているものの、能力も経験も上だから任せて言うことを聞いていれば、楽しい部分は全部提供して貰えると言うことなのだ。
釣り船と同じシステムである。
客がすることはポイントに連れて行って貰って、釣るだけである。
後は、釣果によって腕自慢したり、道具自慢したりするだけで良いのだ。
まあ、この星では獲物がいないと言うことはないから、ガイドが一番注意するのは危険性である。
その証拠に、ベテランのジョアンですらカバに脚を囓られたのだ。
まあ、客が囓られたなら、もっと悲惨なことになっていただろう。
客の方は、
『あのベテランのガイドが脚を食われるような危険な場所でハンティングして来たんだ』
と、逆に大喜びである。
予約がドンドン埋まっていき、街の連中はジョアン様々である。
怪我の功名であるが、本当にケガしてどうするんだよ、と言うのが本音である。
「勿論、準備は殆どしてあるよ」
「ガイドはどうなるんだ?」
「ああ、今到着した」
「お久しぶりですね。ユウキ様」
ナイナの後ろから覗き込むように現れたのは、少女である。
栗色の髪に、カフェオレを薄くしたような肌、パチッとした大きな好奇心溢れる瞳だ。
母親似だろう。
レティ・ヌゲー。長女、確か10歳。
父、ジョアン。
母、ナイナ。
身長、155センチ。
特徴、ぺったんこ。
4年ほど前の記憶である。
「レティか?」
「はい、ユウキ様」
「おい、ジョアン!」
「レティは腕はともかく、感知は俺以上だよ。北大陸にも一緒に行ったばかりだし、役に立つのは保証する」
そうじゃないんだよ。
レティの上半身が裸に見えるんだ。
錯覚だろうか?
「じゃーん!」
ああ、やっぱり、上は裸だ。
下は豹柄のホットパンツだが。
身長は175センチ以上だろう。
おっぱいはAプラスをあげよう。
しかし、俺は一応ハネムーンの最中なんだよ。
レティが俺に纏わり付き、ナミとナリが甘いものを勝手に注文し始め、艾小姐が不安がり、フェンシィがゴミを見るような目で睨み、タルトとコラノが痺れを切らし始めた頃、ハッサン財務大臣が革のケースを抱えてやってきた。
そうなのだ。
これが来ないと始まらない。
「ユウキ代表、お久しぶりでございます」
ハッサン大臣は、イスラム教徒のような白い全身を包む衣装を着ているが、最近お腹が張り出してきているのが良くわかる。
朝から滝のような汗を流している。
「朝から申し訳ない。お手数をおかけしました」
「いえいえ、とんでもない。これも仕事のうちなのですぞ。とはいえ、いきなり金塊40キロとは驚きました。リナ貨は無理ですので、ホエール銀行でGに換えてきました。取りあえず半分ですが、2万Gありますぞ」
ハッサン大臣は革ケースを俺のテーブルの上に置き、解錠してケースを開けた。5G硬化がぎっしりと詰めこめられていた。
5Gは約2万5千円である。
20列20行で400、10枚重ねで入っていれば丁度4千枚である。
小さな金貨だが、20キロ以上になる。
全部で、大体1億円になるということだ。
だが、ここは輸入品はかなり高いし、現地人価格と観光客価格に大きな違いが見える。
遊園地や野球場の中では、コーラやビールが定価よりも高いのと一緒だ。
巨大な動物園に遊びに来たと思うしかない。
「Gでも使えますか?」
「ここは観光地ですので、Gで落として頂いた方が喜ばれますな」
「今回、どれだけ経費がかかるかわからないので、残りの金塊はハッサン大臣が預かっていてください。帰りがけに精算できると思います」
「かしこまりました」
ハッサンは、オマーン生まれのソマリア育ちだかのマサイ人である。
金貸しをしていたが、人生それだけでは不毛だと悟ってマサイに移住してきたところ、あっという間にダニエル・ヌゲー首相に捕まって、財務大臣をやらされている可哀想な人だった。
まあ、ここでは活きたお金が使えるとか、少し前向きに生きているが、苦労人には違いない。
「さて、ユウキ。まずはベースキャンプの人件費と2週間分の食費だな。そちらのお嬢様方は連れて行くのか?」
「うーん」
タルトとコラノは観光旅行だから、誰かガイドを紹介して貰って遊ばせておこう。
ナミとナリは死んでもついてくるよな。
艾小姐は行きたくなくても俺から離れないし、すると自動的に万3兄弟は参加か。
2週間という期限は、パーサーが別の仕事をして戻ってきてくれるのが、それくらいだからである。
「取りあえず7人で行く。それに、ガイドひとり」
「そうか、ならば10人ほど手伝いを集めておこう。一日5Gで10人は50Gだから14日間として700Gだろ。食料が一日1Gとして18Gの2週間は……」
ジョアンは勝手に計算すると、金貨を数えてはナイナの革袋に詰め替えていく。
「手伝いが1日5Gは高くないか?」
「おいおい、大金抱えてセコいこと言うなよ。俺もこの通り失業中なんだから仲介料をがっぽり頂かないとな」
「お、お手柔らかに頼むよ」
「それより、今日出発とは行かないので、全員の装備を先に調達しろ。店の前に迎えに行くから2週間分の着替えとか仕入れておけよ。レティ、ユウキ様たちを店に連れて行け。お前の装備もきっと奢って貰えるぞ」
「はあーい、行きましょう。ユウキ様」
「わかった。わかった。おい、タルトたちも行くぞ」
「わかった」
「よし」
ぞろぞろと歩いて行くが、道沿いには見物人が集まっていてどうにも恥ずかしい。
こっちには、トップレスの女が5人も混ざっているからだ。
だが、店は直ぐ近くだった。
マーガレットという可愛い名前がついているが、どう見ても物騒な銃砲店だった。
「いらっしゃいませー」
出迎えてくれたのは、マーガレット・ヌゲー。
ジョアンの妹のひとりである。
そう言えば、さっきの南国風レストランもナイナの弟の店だった。
ちくしょう、一族でカモにしやがって。
「あら、ユウキ様。可愛い彼女を4人も連れて、相変わらずですねえ」
2メートル近いマーガレットにすれば、フェンシィすら可愛い女の子に見えるのだろう。
「まったく、マサイもずいぶんと賑やかになったな。前はこんなにお店はなかったぞ」
「それは、ユウキ様が3年以上も来てくれないからですよ。今日は開店祝いに戻ってサービスしちゃいます」
正確には4年だが、内3年ほどは行方不明だったのである。
その間にマサイの人口は、15歳以上の成人で3千人を超えていて、農業もかなり開拓が進んできている。
今のところ、女不足である。
物騒な猛獣がうようよいるので、まあ、男が多くなるのは仕方が無い。
それで、歓楽街も出来てしまい、娼館などもある。
娼婦には、政府が助成金を支払って料金を下げている。
経営も政府で、娼婦たちは給料が歩合制だが身分は公務員である。
マサイに来るお客は、外国人のお金持ちだから、時々娼館で豪遊するそうだ。
まあ、大事な収入源になっている。
俺は反対したのだが、エリダヌスでは『処女再生』が出来るので押し切られてしまった。
特に女たちが安全のために望んできたのが強かった。
娘を外に出せないような街は嫌だと言うのだ。
当然、強要したり、ひも稼業は犯罪とした。
移民団を結成する時に、破落戸や犯罪者、酒癖が悪い奴とか協調性が無い奴は弾かれる。
他の連中が、そういったのと一緒に暮らしたくないからだ。
それでも、レイプ事件は完全にはなくならず、犯罪者は山の北側の農地で10石の刑に処せられる。
追放すれば、猛獣の餌食だからだ。
逃げても同じで、密林には虎がいる。
まず、助からないと言って良いだろう。
仮に助かって街に戻れたとしても、被害者か、その家族にレーザーライフルで焼かれることだろう。
装備は旧アメリカ軍の野戦服にしたかったのだが(量産、放出品ありだから安くなる)、ガイドのレティが目立たないと見失って困るというので、昔のイギリスの探検隊みたいな服装になった。
白の探検キャップに白の上着に白いダボダボのズボン。
裾を黒いブーツに挟み込み、上着も腰に黒いベルトを巻いて締める。
すべて防刃、防弾で、防水仕様になっている。
まあ、ライオンに噛まれても、軽い打撲ぐらいですむらしい。
冒険キャップは伝統的なイギリスのUFO型ヘルメットだが、通信機能と位置特定機能、バイザー式テレスコープに、音響分析機能や増幅機能もついている優れものだった。
つばが大きいから、日よけと雨よけにも良いらしい。
タルトとコラノが槍を選んでいる間に、ナミとナリの様子を見に行くと、艾小姐がまだ、巻きスカートのままぐずぐずしていた。
ナミとナリも白いワンピースみたいな姿なので、上着を探検隊風にして、黒ベルトで締めると、何とか様になった。
だが、姿見の前でナミがくるりと回ると、スカートが広がりノーパンだとわかった。
仕方がないので、強引にパンツ類を選んだのだが気に入らないみたいだった。
最終的には、透明の防刃パンティストッキングを穿かせてブーツで脚を固めた。
透明なら許せる、らしい?
しかし、妻たちとは言え、初夜もまだなのだからパンストを穿かせるのは苦行に近かった。
人前でなければ、どうなっていたことか。
ふたりとも、何処を触っても柔らかくてすべすべだった。
まったり、ほっこりしていると、フェンシィがパンストを持ってきた。
俺は怯えながらフェンシィに穿かせようとすると、思い切り殴られた。
「そんなわけないヨ。お嬢様のぷんネ」
そうだよな。
しかし、艾小姐に穿かせるのか!
大丈夫か、俺。
「い、いくぞ、艾小姐」
「はい、ユウキ様」
俺の指はいくらか震えていたが、何とか無事穿かせられた。
途中、ノーパンに気づいて気が遠くなったり、良い匂いに気が遠くなったりしたが、フェンシィの視線が痛いので何とか乗り切れました。
ヒップラインは流石にお嬢様で、モデル級だった。
俺は良く知り合う間もなく、チカコに攫われてしまったから艾小姐の印象が薄かったが、これほどの美少女なら命をかけてもいいという男がいくらでも現れそうだった。
穿かせるのが、ナミとナリが先で助かったよ。
でも、フェンシィが穿かせても良かったのでは、という疑問を思い付いたのは終わってからなので言い出せなかった。
今のところ、艾小姐はナミとナリのまねをしたがる。
きっと、何処かでナミたちに世話されて、ノーパンに変身したのだと思う。
侍女見習いだと思い込んでいるからかもしれない。
この美少女はチカコと出会わなかったら、きっと俺を振り回してくれたんだろうな。
大丈夫だよ。
十分に振り回されているからね。
俺はパンツに続いて、パンストを穿かせるという経験値を積んだ。
ナミとナリは、ヘルメットも気に入らないようだったが、俺が通信機能を使って『ナミ、可愛いよ』と音声を送るとたちまち気に入ったらしく、ナリと秘話回線でおしゃべりを始めた。
ふたりだけなら、別に無口と言うわけではないみたいだった。
勿論、ナリにも『可愛いよ』は言わなくてはならなかったが、本当のことなので無理はしていない。
艾小姐も大人しく、ナミたちと同じ格好をしてくれた。
フェンシィも同じような格好を選んだが、いつの間にかサバイバルナイフなどを腰に装着していた。
「フェンシィ、そのナイフは?」
「ナノプログラムカーボン製。寝ている間に鞘の中で再生するヨ。切れ味抜群ネ」
フェンシィは黒光りするナイフを抜いて見せてくれた。
「おお、俺も欲しいな」
「あっちに色々あったヨ」
俺は刃渡り30センチ以上のものから、果物ナイフまで各種取りそろえて満足してから、タルトとコラノ用に、皮を剥ぐナイフも選んだ。
彼らは元狩猟民だから、生け捕りなどとは考えていない。
久しぶりに戦士時代に戻って戦うことだろう。
大満足して女性陣のところへ戻ると、彼女たちはマーガレットにネグリジェを勧められていた。
折角着た探検装束を脱いで、あれこれ試着している。
艾小姐も一緒にだ。
フェンシィなんか、ガーターベルトまで試している。隠し武器のためだそうだ。
そのガーターとストッキング姿を見て、あることに気づいた。
防刃ブーツを履いていれば、普通カバに脚を囓られてもケガをすることはない。
つまり、ジョアンはカバがいるところでブーツを脱いでいたのだ。
あの、天才ハンターがだぞ。
つーことは、あれだ。
女性客を川で水浴びさせていたのだ。
覗くポイントは色々あるが、警戒するとか言ってブーツを脱いで水草の中に隠れたのだ。
ブーツに水が入ると、大きな音がするのである。
そこで、運悪くカバを踏みつけたか何かだろう。
いや、間違いない。
ナイナが恐ろしくて、俺の金貨をゴッソリ渡していたのだ。
空港でナイナが笑顔で取りなしをしていたのが思い出される。
多分、怒っていたのだ。
仲介料はナイナのものなんだろうな。
自業自得か。
その後、レティに言われて防寒着を選んだ。
北大陸は夏に向かうところだが、悪天候になると吹雪いて体感温度は氷点下になるそうだ。
シロクマのポンチョが軽くて暖かいらしく、フード付きだし、前を合わせて閉じることも出来るので、それを人数分頼んだ。
ふたりで向かい合わせにして繋げて抱き合うと、テントみたいになって、更に暖かいらしい。
「エッチなことも出来ますよ」
マーガレットが笑顔でそう言うと、レティが何を想像してるのか赤くなっていた。
きっと、彼氏とか想像してるのだろう。
さて、俺たちの装備が整い、19世紀か20世紀のイギリスの探検隊風で揃った。
タルトとコラノはその格好で槍を持っているからコミカルだった。
着替えなどはマーガレットがパッケージして送ってくれるので任せてしまった。
代金は恐ろしいので聞かなかった。
どうせジョアンが全財産を預かっているのだ。
店を出ると、目の前にデカいライオンが座っていた。
見物客は誰もいない。
「キング!」
俺が呼ぶと、ライオンが飛びかかってきた。
ナリとナミの悲鳴など初めて聞いた気がするが、俺はライオンと抱き合い、じゃれ合った。
この雄ライオンは、俺が初めてマサイに来た時に知り合った友達である。
この辺りのボスで、身体も一回りデカく、義理堅い奴である。
きっと俺のニオイに気づいて、会いに来てくれたのだ。
命名は俺で、まんまである。
戦闘態勢に入っていたメンバーを安心させて、キングを紹介した。
キングはひとりひとりのニオイを覚えているようだった。
女性陣はキングに嘗められると、逆に安心したようだった。
俺も、女性陣がトップレスでなかったので安心した。
おっぱいをペロリなど、俺もまだ新妻にしていないのだから。
「伝説は本当だったのですね」
レティが感心したように言った。
キングの首を撫でて確かめている。
「ダニエル伯父さんから聞いていましたけど、ユウキ様を誇張するジョークだと思っていたんです。まさか、本当に野生のライオンを手懐けてしまうなんて」
「まあ、普通に友達になったんだけどな」
「それは、普通に出来ることではありません」
「まあ、ユウキ様だからな」
「まあ、ユウキ様の得意技だ」
タルトとコラノの感想の方が納得できるから、俺はいつも通りなんだろう。
直ぐにジープが3台来て、1台目のオープンカーの荷台にジョアンが乗っていた。
運転手はナイナだったが、仰け反っている。
「どうしたんだ、そのライオンは!」
そう言えば、ジョアンは会ったことないんだった。
「パパ、ダニエル伯父さんの言っていたライオンよ。本当の話だったのよ」
「信じられん。野生の成獣は懐いたりしないもんだが。特に肉食獣はな」
ジョアンにキングを紹介すると、お互いが不敵に笑い合っているような気がした。
これは、あれだ。
どちらが上位者か決まる前の男同士の態度だ。
まあ、ライバルと認めるぐらい相手の力量を感じるのだろう。
「おい、脚をケガしてるんだから、決着は後日にしろよ」
「ふん、命拾いしたな」
「グルルゥ」
ジョアンも好戦的な性格してるから困るよ。
しかし、レティはキングを気に入ったようだし、キングも満更ではないようだった。
ジョアンは気に入らないようだったが、流石にライオン相手に『娘に近づくな』とも言えないだろう。
「パンと飲み物は積んできた。サバンナに行こう。昼飯のおかずはユウキの腕に期待するぞ」
「キングも行くか」
「グルル」
「よし、レティ。キングに乗って先導してくれ」
「きゃっ、ユウキ様」
俺はレティを抱き上げてキングの背中に乗せた。
それから新妻ふたりを1台目に乗せ、タルトとコラノを2台目に乗せ、万3兄弟は艾小姐と一緒に3台目のちょっと大きめの車に割り振った。
レティとキングが走り始め、レティは歓声を上げた。
街道沿いには住民が見学に戻ってきており、キングに乗るレティの姿に感動していた。
「キャッホーーィィー」
直ぐに俺たちも、キングたちの後に続いた。
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