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ギルドでテンプレ:表

若干下品な表現があります。お食事中の方はご注意ください。

僕とミケーレさんは、何事も無く王都ビアンコにたどり着いた。


王都は、石造りの防壁に囲われている。防壁は8mほどあり、近づくと重圧感が大きい。防壁の向こうには、遠目に大きな白亜の城も見える。


街道の先には大きな門が口を開き、その前には入門待ちの馬車が列を為している。僕達の馬車も、その列の最後尾についた。


「馬車が多いですね……。」


「そりゃあ、この辺の街道が集中してますからね。王都には何でもありますから、商人も多いですし。」


かくいう私もその一人ですがね、とミケーレさんは陽気に笑った。


「ところで、門のところで何をやってるんですか?」


「ああ、そりゃあ、積み荷の確認ですね。あとは、王都に入る人の身分の確認かな。」


「身分の確認ですか?」


「そうそう。身分証を見せればいいんですよ。冒険者カードとか、商人ライセンスとかですね。」


その言葉を聞いて、血の気がひいた。


「えっ、どうしましょう。僕、身分証持ってないです。」


「あー、そうでしたね……。確か、身分証が無くても、お金を払ってステータスを開示すれば仮身分証を発行してもらえたはずだったかなあ。」


「うう……お金もないです……。」


「ははは、護衛代をお支払いしますよ。受け取ってください。」


そう言って、ミケーレさんは懐から財布を取り出し、チャリチャリと金貨を取り出した。


「ゴブリンから救って頂いた分と、ここまで護衛して頂いた分、合わせて金貨20枚でいかがでしょう?」


金貨20枚といえば、日本円で20万円程度の大金だ。


「だっ、ダメですよ! そんなに受け取れません!」


「何を仰りますか。命を救って頂いたんです。このぐらいさせてください。……この先、何かと御入り用でしょうし。」


「で、でも……。」


「それに、有能な方とは顔をつないでおきたいのが、商人の性というものですよ。」


にこりと笑うミケーレさんに、それ以上言い返す言葉は見つからなかった。




門番の警備兵達が馬車を止め、荷物の確認を始めた。


一人の警備兵が御者台にやってきて、身分証の掲示を求めてくる。


「僕は、身分証を持っていないのです。仮身分証の発行をお願いできますか?」


「ふむ、そうか。田舎から出てきたのか? ……では、こちらに来るのだ。」


僕の格好を見て、しかつめらしい顔をしながら頷いた警備兵は、僕を背後の詰め所に連れて歩く。



詰め所の中は、いくつかのベッドと、テーブルが置かれている。壁には、『民に向けるは剣にあらず 民に向けるは盾であれ』と、標語らしい言葉が掲げられている。そういえば、この世界の文字は初めて見たが、問題なく読み書きできそうだ。ミネルバ様のお陰だろうか。


促されるまま椅子に腰掛けると、警備兵は奥からごそごそと水晶玉のようなものを取り出してきた。


そういえば、ミケーレさんが何か言っていたな。お金を払って、ステータスを開示……!?



忘れていた。


僕のステータスはすでに人外の域に半歩踏み出している事を。



冷や汗がだくだくと流れ、僕の呼吸は乱れに乱れる。


「ん? 大丈夫か? 顔色が悪いようだが」


警備兵が心配そうな顔で覗き込む。


「い、いえ……大丈夫です。」


「そうか……。調子が悪いなら無理をするなよ。門に入ったら、通りを2ブロック進んだ右側に、私の馴染みが経営している宿がある。休むのであれば、オススメしておこう。」


親切な警備兵は、水晶玉をテーブルに置く。


「では、ここに手を触れるのだ。ステータスを見せてもらおう。」


僕は、もうどうにでもなれ、と半ば投げやりに水晶玉に手を置く。



——水晶玉が瞬いた。



「ふむ、問題ないな。……冒険者になるなら、もうちょっと鍛えた方が良いぞ。」


「えっ?」


ガバッと顔を上げる。警備兵と目が合うと、彼は苦笑しながら忠告までくれた。


何が何だかわからず、『ステータス』と念じる。


==================


ユーゴ=ニキ

15歳・男性・ヒューマン


Lv2

HP :190/190   (偽装:16/16)

MP :4270/4270 (偽装:12/12)

STR:50        (偽装:8)

VIT:65        (偽装:7)

INT:75        (偽装:11)

DEX:60        (偽装:10)


*スキル

【アイテムボックスLv5】 (偽装:隠蔽)

【鑑定Lv5】       (偽装:隠蔽)

【身体強化Lv1】     (偽装:隠蔽)

【軽身Lv1】

【剣技Lv5】       (偽装:Lv1)

【自然回復Lv5】     (偽装:隠蔽)

【魔力操作Lv3】     (偽装:隠蔽)

【ステータス偽装Lv5】  (偽装:隠蔽)


==================


本来のステータスの横に、偽装という表示がある。よく見れば、スキルに【ステータス偽装】が増えている。全く身に覚えが無い。


==================


【ステータス偽装】 任意発動スキル

他人に見えるステータスや所持スキルを偽装する。

発動後は解除するまで恒久的に偽装する。

Lv5…全てのスキル・魔法・魔道具に対して効果を発揮する。


==================


なんだか、この状況にうってつけのスキルだが、都合が良すぎるような……。


とにかく、警備兵の目は誤魔化せたようだ。こちらを心配したり、親切にしてくれる彼に自分を偽るのは心が痛い。今日は嘘をついてばかりで、嫌になってしまうな。




その後、仮身分証発行の代金として銀貨1枚を支払い、無事に王都に入る事ができた。


ミケーレさんは、馬車を置いて荷物を搬入するらしく、ここで別れる事となった。


身分証のためにも冒険者ギルドに向かうと告げると、鎧の男の冒険者カードを託された。カードに映し出された【死亡】という文字が冷たい。これをギルドに届けると、謝礼金がもらえるらしい。そして、登録されていれば遺族に通知されるとの事だ。


ミケーレさんに丁重にお礼を告げて、通りを歩き始める。冒険者ギルドの場所は既に聞いてある。


歩きながら、通りを行き交う人々の様子を伺う。聞いていた通り、ヒューマン(普通の人間)だけではなく、アニマと呼ばれる獣人や、モジャモジャ髭を生やしたドワーフが歩いている。


アニマは、猫や犬、兎に亀など、様々な動物の特徴を持った人がいるようだ。ファンタジー小説の中にしかいなかった存在が目の前にいる。僕は思わずジロジロと頭の上でピコピコ動く猫耳や、パタパタと揺れるふかふかの犬しっぽを凝視してしまう。


そんな不躾な僕の視線に気づいた人は、しかし嫌がる様子もなく、ひらひらと手を振ってくれる。僕は内心で謝りつつペコリと一礼して通り過ぎる。


通りには活気が溢れている。美味しそうな匂いを漂わせる屋台や、綺麗な宝石細工を広げた露天商、オープンテラスで会話するカップル、みんな楽しそうだ。うん、良い街だ。



しばらく歩くと、冒険者ギルドの建物が見えてきた。思っていたよりも大きい。3階建てだろうか。


扉を開けて中に入ると、騒がしい喧噪が僕を迎える。外は既に暗くなりつつあるため、どうやら仕事を終えた冒険者達が集まっているようだ。


ギルドの中には酒場が併設されており、冒険者達が酒を酌み交わしている。鎧を着た厳つい男達が、下品に笑い合っている。テーブルは満席に近く、盛況しているようだ。


かと思えば、少し離れた場所にある受付は雰囲気がガラリと異なる。


何人かの受付嬢が冒険者達に対応している。営業スマイルが板に付いているその姿は、日本で親についていった役所を連想させた。百戦錬磨の冒険者達をてきぱきと捌いている。


列が途切れたところで、僕も受付に向かう。


「いらっしゃいませ。ようこそ冒険者ギルドへ。ご依頼ですか?」


茶髪の女性が、やはり営業スマイルで対応してくれる。えくぼが可愛らしい。


「いえ、冒険者登録したいのですが……」


「かしこまりました。」


そう言って、女性は書類を取り出す。


「こちらの——」


「ギャッハッハッハ!! あんなガキが冒険者だとお?」


赤い顔をして酒臭い息を吐きながら、酒場にいたのであろう男達が数人、こちらにやって来た。受付と酒場が結構離れているのに、わざわざズカズカと歩いてやってくる。そんなに大声で話したつもりはないんだけどな。


「おう、ガキ! 怪我しない内におうちに帰っとけや!」

「ゴブリンにぶっ殺されるのがオチだなこりゃ。ガッハッハッハ!!」


ニヤニヤと下卑た笑いを顔に貼り付け、僕を見下す男達。身長差はそこまで大きくないが、体格は一回りも二回りも大きい。


対応してくれていた受付嬢は、あわあわと困った表情を浮かべている。




僕は、男達の表情に見覚えがあった。



こちらを見下し馬鹿にした目。


ニヤニヤと何が嬉しいのか締まらない口。


僕を何の力も無い存在だと罵る言葉。



教室の風景が脳裏に浮かぶ。


僕を責めるような周囲の視線。



——ああ、そうか。ここでもか(・・・・・)



ふっと、身体から力が抜ける。



きっと、今の僕のステータスなら、彼らを捻る事は容易いだろう。


【鑑定】で覗き見た彼らのステータスは、僕の半分にも満たない。


でも、それじゃあ、ダメだ。



僕はまだ、許していないのだから。




何も喋らず、目も合わさず、俯く僕の様子に、男達はますます増長し、しまいには痺れを切らして、手を上げる。


「おい、何とか言えガキ!!」


僕は、歯を食いしばった。



次の瞬間、大きな音がギルド中に鳴り響く。


『ぐぎゅうううううるるるう』


まるで、地の底から聞こえる狼の遠吠えのようなそれ(・・)は、はたして、男達の腹から出てきたようだった。若干、もった(・・・)のか、異臭が漂う。


赤から青くなり、だらだらと脂汗を流す男達。


そして、我先にとトイレの看板がある方へと走り出した。皆、内股でプルプルしている。



後に残されるのは耳が痛くなる静寂。僕達の様子を眺めていた周りでたむろしていた冒険者達や、受付嬢も揃って唖然とした様子で口を開けている。


よくわからないが、助かったらしい。僕は、対応してもらっていた受付嬢から書類を受け取り、必要事項を手早く記入する。背中に視線を感じる。


「……恐ろしい……」「なんて残酷な魔法……」「死んだ方がマシだぜありゃ……」


ヒソヒソと声が聞こえる。違う、僕じゃないんだ。


名前、年齢、得意技に剣技と書いた僕は受付嬢に押しつけるように提出する。彼女は若干震えつつ、書類を受け取り、手元の魔道具をいじる。


「で、では、このカードに、血を一滴垂らしてください。こちらの針をお使いください。」


「血?」


「ひぃっ!! あ、あ、ご、ごめんなさい。個人の識別に血が必要なんですぅ!」


涙目になりながらペコペコと喋る受付嬢。


僕は、ため息を一つついて、針で指を刺し血を一滴カードに垂らす。カードは淡く発行した。


「はい! こ、これで登録完了です!! こちらが、ギルド加入員のルールとなります!」


冒険者カードと小冊子を受け取り、ろくに確認もせず、僕は急いで踵を返す。入り口の近くにいた冒険者達が道をあける。僕は何も言わずに、早足でギルドを後にした。


若干、涙目になりながら。



鎧の男の冒険者カードや遺体を出しそびれてしまった事に気づいたのは、紹介された宿にたどり着いてからだった。


読んで頂きありがとうございます!

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