表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/83

スラム:裏

勇悟くん。


勇悟くん。


私の勇悟くん。


私だけの勇悟くん。


私の主人公。


うふ。


うふふ。



彼の事を考えるとドキドキしちゃう。


彼が欲しくなっちゃう。



ああ、欲しい。


欲しいよ、勇悟くん。



あなたが、欲しくてたまらない。




私は勇悟君を手に入れるために動き出した。


彼の心を手に入れたい。


私だけのものにしたい。



泉の中の勇悟君はディーナやエルサと手をつないで歩いている。


気にくわない。


彼の両手は私だけのもの。


彼の身体は私だけのもの。



勇悟君はディーナに微笑みかけている。


ずるい。


彼に見て欲しい。


彼に笑いかけて欲しい。



勇悟君は赤い髪の少年とぶつかった。


どうやら、その子を追いかけてスラム街へ行くようだ。



あらあら、勇悟君ったら。


すぐに他の人の事に首をつっこんでしまうのね。


さすがは、私の主人公だわ。



そうね、だったら。


いい事を思いついたわ。


彼にはもっと『てんぷれ』をこなしてもらわないと。


彼にもっと活躍してもらって、私に相応しい主人公になってもらわないと。



ああ、楽しみだわ。




私は、勇悟君に絡んだ男達に『力』で精神操作魔法を掛ける。


「『狂化』……うふふ、これでいいわ。」


すると、男達は我を忘れて勇悟君に襲いかかる。勇悟君は反撃せずに男達の攻撃を躱し続けている。


勇悟君が痺れを切らして素手で反撃するも、男達には通じない。『狂化』の効果で痛覚が遮断されているため、物理的に動きを止めない限り動き続ける。


「くすくす。ダメよぉ、勇悟くん。主人公なら『悪者』はしっかり倒さないとね。もっと強くなって、早く『最強』になって頂戴ね。」


男達の一人がディーナに斬りかかると、途端に勇悟は血相を変えて腰から抜いたショートソードで男の腕を切り捨てた。いつもとは雰囲気が違って凜々しい勇悟君は、とってもかっこいい。全身から殺気を吹き出して、男達を威嚇している。


「あはっ」


私は勇悟君の様子に嬉しくなったので、『狂化』を解除してあげる。すると、男達は正気を取り戻して途端に勇悟君に怯えだした。


勇悟君はショックを受けたように顔色を悪くしている。苦悩する彼の姿も、悲劇の主人公のようで良いわね。彼が持ったショートソードから血が滴り落ちた。


勇悟君がポーションを差し出したが、男達はそれを無視して逃げ出す。勇悟君のポーションを持った手が宙に浮いたままだ。



たかが道具(・・)の癖に私の勇悟君の好意を無碍にするなんて。


なんて生意気なのかしら。


あとでお仕置きしておかないとね。



さらに追い打ちを掛けるように、勇悟君が物陰にいた赤髪の少年に気づく。


少年は、男達が正気を取り戻した辺りから事態を目撃していた。少年の目には、勇悟君が冷酷無比で残酷な殺人鬼に見えた事だろう。勇悟君を見て震えている。


勇悟君が一歩近づくと、少年は背中を見せて逃げ出した。


勇悟君の周りにはディーナとエルサだけが残される。



彼の落ち込んだ表情を見て、ゾクゾクしてしまう。


ああ、もっと。


もっと、色々な表情を見せて。



ディーナとエルサが彼を慰めている。


私の心には嫉妬の炎が荒れ狂う。


彼の事を慰めるのは私の役目なのに。


彼の事をわかってあげられるのは、私だけなのに。



早く、彼をこの手の中に。




勇悟君達はスラムを出て宿屋に帰るようだ。


とぼとぼと歩く彼が愛おしい。



と、そこで邪魔者が現れた。



「ミネルバ、これは一体どういう事だい?」


低い声が私の背後から聞こえた。振り返ると、ユーピテルがソフィアを抱きかかえている。ソフィアは私の魔法によって深い眠りの中にある。


「あら、ユーピテル様。ご機嫌麗しゅう。」


「ミネルバ、質問に答えるんだ。」


ユーピテルは怒気を顕わに私を睨み付けている。莫大な魔力と神力の気配が彼から溢れ出している。


「やだ、ユーピテル様ったら。そんな顔して怖いわ。」


「ふざけるな!」


ドッと音が聞こえるような覇気が放たれる。しかし、私には何の痛痒もない。



「うふ、うふふふ……」


「ミネルバ、君は——」



ゴゥッという轟音と共に私の身体が『力』が溢れ出す。


ああ、気持ちいい。



「なっ!?」


「ユーピテルさまぁ。私ね、気が付いたんです。」


「な、何を……言って……!?」


「もう、我慢しなくてもいいんだって。」



そう言いながら、彼に『力』をぶつける。


神の力に加え、私の勇悟君に対する思いの力。



これは、『愛の力』だ。


私の勇悟君への『愛』が全身から溢れ出し、私に力をくれる。


誰にも邪魔などさせない。



「ぐあっ!! ……な、なんだ、この『黒い力』は!」


「ユーピテル様は邪魔しないでくださいね」



ユーピテルは私の力をまともに受けて吹き飛ばされる。


神力で防ごうとしたようだが、私の思いの前には通用しない。



「そうねぇ……もう邪魔されないようにしなくっちゃね。」


私は名案を思いついた。



私と泉を覆うドームを創り出す。


私と勇悟君の愛を育むための『愛の巣』だ。



「まてっ! 待つんだっ! ミネルバ! ミネ——」


ユーピテルが外で何か言っているが、もう聞こえない。


もはや、私と勇悟君を止める存在はない。



「勇悟くん、これで誰にも邪魔されないわ。」


宿屋で眠る勇悟君の寝顔を眺める。


かわいいなぁ。



あ、そうだ。意識体を呼び出しましょう。そうしましょう。


読んで頂いてありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ