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チートとは:表

僕は、女神ミネルバ様の元を離れて異世界へと転生した。最後に衝撃的な言葉を聞いた気がする。


それにしても、不思議な女神だった。


腰までの長さのブロンドヘアー、長いまつげの切れ長の瞳、大きい胸と理想的なモデル体系の二十代前半ぐらいの女性。パッと見は傾国の美女というべき容貌。しかし、口を開くとその儚い印象とは真逆な性格で、残念な感じになった。


主人公になれとは驚いたが、僕の好きなファンタジー小説のような世界に転生できる、という話には一も二もなく飛びついた。どうせ死んだ身だ。識音には最後まで心配を掛けてしまったが、僕の事なんか忘れて幸せになればいい。最後に護れてよかった。——そう思ったのに。



モヤモヤを抱きながら辺りを見回すと、そこは森の中だった。


典型的な現代っ子の僕は森の中に立ち入った経験などなく、鬱蒼と茂る木々に覆われた薄暗い空間は少し不気味に感じた。草木の濃厚な香りが鼻をつく。


僕は自分の身体を確認する。


通学途中だったためか、学生服のままだ。上は白地のシャツ、下は黒いズボン。夏服なら普通は半袖なのだが、僕は事情があって長袖シャツを着ている。鞄はなく、ポケットの中も空っぽだった。


僕は、ミネルバ様の肩に乗ったフクロウ、ソフィア様の話を思い出し、『ステータス』と思い浮かべる。


すると、目の前に半透明のウィンドウが現れる。ゲームのような非現実的な光景に僕は内心驚きつつ、内容を確認する。


==================


ユーゴ=ニキ

15歳・男性・ヒューマン


Lv1

HP :180/180

MP :250/250

STR:45

VIT:60

INT:65

DEX:50


*スキル

【アイテムボックスLv5】

【鑑定Lv5】

【身体強化Lv5】


==================


ステータスの各項目の説明は聞いている。


HP…生命力。0になると死亡する。死に対する相対的な値なので病気や老衰などでも減少する。

MP…魔力。0になると昏睡する。魔法発現に最低限必要な魔力を1とした数値。

STR…腕力、脚力など瞬発的な力強さを表す。

VIT…持久力、防御力、抵抗力など身体の強さを表す。

INT…思考速度、計算能力、記憶力、想像力など頭脳の働きやすさを表す。

DEX…手先の器用さ、体さばきなど身体を思い通りに動かす器用さを表す。


ちなみに、ヒューマンの平均的なステータスは各項目10だ。つまり、このステータスは一般人を大きく逸脱している。正直滅茶苦茶だ。




頂いたスキルの説明は受けていないが、名前から何となく想像できる。


僕は、足下にあった小石を拾い上げて、【アイテムボックス】に収納するイメージを浮かべる。小石がフッと手から消失した。


アイテムボックスの中身を見るイメージを浮かべると、目の前に今度はアイテム一覧ウィンドウが現れた。『小石x1』と写真付きで描かれている。


小石を取り出すイメージを浮かべると、また手元に小石が現れた。あれ? 少し欠けてるような?


気のせいかと思いつつ小石を放りだして、次は【鑑定】を試してみる。近場に生えていた赤い花を見つめて『鑑定』とイメージする。


なんだか不自然に時間が掛かったが、また半透明のウィンドウが現れ、鑑定結果が表示される。


==================


スカーレット

植物


その紅い花びらから、別名『悪魔の血』とも呼ばれる多年生植物。

花弁を煎じて煮詰める事で、染色に用いられる。ホッホウ。


==================


ホッホウ? よくわからないが、鑑定結果はちゃんと表示された。見るだけで調べられる辞書のようで便利だ。他にも周りの木々や草むらを鑑定してみるが、結果は過不足なくわかりやすい。反応が鈍かったのは初回だけだった。




最後の【身体強化】はイメージで発動するタイプではないのか、『身体強化』とイメージしても特に変化はない。


試しに軽くジャンプしてみる。


ドンッという音と共に——



——僕の身体は上空10mにいた。



青い空。


眼下には一面の緑が広がっている。


少し離れたところには大きな道が見えた。



「え? え?」


長い滞空時間の後、僕の身体は重力に導かれて下降を始める。地面が急速に近づいてくる。脳内で巡る走馬燈。ああ、せっかく転生させてもらったのに——


スタッと思ったよりも軽い音で地面に降り立った。身体は何ともない。きっと僕の顔は蒼白だろう。


ふー、と長い息を吐いてしゃがみ込む。


ドキドキと嫌な胸の高鳴りが治まってから、僕は先ほど見えた道の方角に歩を進め始めた。



——ミネルバ様、やりすぎです。

読んで頂きありがとうございます!

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