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少し未来にあるかもしれない話

作者: ハル

 ある日のこと。僕は家電量販店に遊びに来ていた。家からそう遠くないところにあって、色んな家電があって面白いし、ゲームのお試しプレイが出来たりして面白い。

 今日も置いてあるゲームをやっていたが、さすがに何度もやったせいか飽きが来た。

 仕方ないから家電製品売り場に行って、マッサージチェアに座ったり全自動掃除機を眺めたりして遊んでいた。

「あーー」

 ?

 なんだろう。

「あーー」

 まただ。

 誰かが「あーー」って言ってるみたいだけど……?

 気になったし、少し退屈になってきた僕は声のする方へ行ってみた。

「あーー」

 また聞こえた。

 角から声のした方を覗き込んでみると、

 いた。

 男の人が一人。

 おじさんと言うには若いが、お兄さんと呼ぶには大人びている。

 そんな人。

 その人は、やはり陳列棚に向かい、再度「あーー」と言うと、つまらなそうな顔をして溜息をついた。商品が気に入らなかったのだろうか。

 その人は諦めたように首を振ると、店員さんのいる方へ歩き出した。

 気になる。

 僕はその人の後をつけることにした。

 角からこっそり頭を出し、様子を伺ってると店員さんとなにやら話し込んでいる姿が見えた。しかし、距離があるせいか、声は聞こえない。

 暫く様子を伺っていると、お兄さん(おじさんじゃ失礼だよね)は諦めたのか店の外へ出てしまった。もちろん、僕も後を追って店の外へ。

 電柱やお店の看板の陰に隠れながらお兄さんの後をつけていると、どうやら市街地から外れの方へと移動しているらしかった。古そうなお店なんかがたくさん並んでいる。少し残念なことにシャッターの閉まったお店もあった。大きなデパートが出来ると、地元の商店の人たちと争いが起きると聞いたことがある。

 そうこうしていると、お兄さんは一軒の古びたお店の前で立ち止まった。どうやらここが目的地らしい。

 僕はギリギリまで接近するべく、店の引き戸の影から中を覗きこんだ。

「いやー、あったあった。これだよ、俺が探していたのは!」

「お兄さんも珍しい人だね。今時こんなもの欲しがるなんてさ」

「いやね、やっぱりこいつでアレをしないと夏って感じがしないって言うか、ね」

 嬉しそうに店主らしきおじいさんと話すお兄さんの声が聞こえる。少し汚れた窓から見えるお兄さんの顔は明るい。

 しかし、お兄さんは何を探していたのだろう。気になって仕方ない僕は、意を決して店へと足を踏み入れた。

「あ、あのっ!」

「おや、珍しいお客さんだね。お使いかい?」

「いえ、その、お兄さんが探していたものが気になって……」

「俺が?」

「さっきお店で「あーー」って言ったのを聞いてて……それで……」

「あー……、ははっ聞かれてたのか恥ずかしいな」

 そう言いながらお兄さんは足元に置いてあったそれのスイッチを入れた。

「ほら、「あーー」って言ってごらん。多分初めてだろう?」

 お兄さんに言われるまま、回転するソレ(・・・・・・)に向かって口を開ける。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……」

最後までご覧頂きありがとうございます。

冬なのに扇風機のお話です。

近年は羽の無い扇風機が主流となりつつあるのでしょうか、家電量販店等でもよく見かけるようになりました。これらの扇風機には声を出しても乱れないと聞きます。

いずれ羽のついた扇風機を見かけることが無くなれば「ワレワレハ~」とか「アアアアアア」とか出来なくなるのでしょうね。

近い未来、そんなことになるのかと思うと少し寂しくなりますね。一つの夏の風物詩として残ることを祈ってこのお話を投降致します。

よろしければご意見、ご感想、お聞かせ下さい。

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