第9話「いい男の運命」
………………
前回の件は、反省した不良達が学校、警察側に不問ということにし、翔助の暴力沙汰は正当防衛(実際は違ったが)ということとなり、なんの処分も下らなかった。
しかし、あの件は、学校中の話題になり、翔助に対し、皆恐怖した。
そんなことがあり、翔助は居ずらさを感じる。
昼休みの屋上。
ここは、お馴染みの不良の溜り場。
そこに、翔助と多摩が居た。
「さすがに、やりすぎっしょ…。俺も、あいつらにはムカついてたけどさ…」
タバコをくわえながら、多摩は言う。
ちなみに、翔助がした暴力の事情は知らない。
「おかげで、みんな道避けるしよ…。秋野しか、話し掛けて来なかったぜ…」
そうタバコを床に押し消しながら、言う。
「あの女、なっちゃんに気あるんじゃないの?」
「なっちゃんって、呼ぶな…」
新しい翔助の呼び名だった。
そして、話の話題が秋野に変わった。
「秋野、結構いいと思うけどさー」
多摩が、そう言う。
「うぜー女だよ…。あいつは…。でも、あいつの腰から尻のラインは、結構エロくていいけどさ…。でも、俺には、あいつの胸のサイズじゃ満足できんし…」
「…」
翔助の異様なまでのエロ観察力に、多摩は引く。
それが、男の性と言うものであろうか。
………………
授業も終わり、放課後。
翔助は、自分のゼファーを置いている駐輪所まで、歩いている。
やはり、歩くたびに、普通の生徒たちが散っていき、不良の輩達には、頭を下げられる。
妙な居ずらさを感じながら、駐輪所に辿り着くと…。
「おーい!」
ゼファーのタンデムに、秋野が腰を掛けて、翔助に手を振っている。
翔助は、ため息を吐いた。
「また、てめーかよ…。歩いて帰れ…。(家、学校から、歩いて5分だったじゃねぇかよ…)」
「いいじゃん。乗っけてくれたってー。あたし、このバイク好きだし。名前、ゼータガンダムだっけ?」
「ゼファーだ!ゼしか合ってねぇ!」
そう言いながら、ふと目を離すと…。
「ん?」
駐輪所にある一台のバイクに、目が行った。
すると、翔助は、ハッ!と反応し、秋野を無視して、そのバイクの方に駆け寄る。
そして、バイクを直視すると…。
「こっ!これは!!」
ベタなリアクションを、思わず取った。
ゼファーのタンデムから、降りた秋野もそのバイクに近寄る。
「なに、これ…?」
驚く翔助に、そう言い寄った。
「カワサキ、Z2直系モデル、Z750FX…。ほとんどが、ゾッキー(暴走族)に改造され、まともな状態で残ってんのが少ないと言われているが、このバイクは、ほぼノーマル…。いいキャブ使ってんな…、こいつ…」
と、バイクの説明しながら、翔助は、よだれを垂らす。
「ゼット・ナナジン・エ○ベックス?」
秋野が、また名前を間違えた。それはレコード会社だ…、とツッコみたい気持ちを、翔助は抑える。
わざと言ってるのか、マジメに言ってるのか、解らないのが、秋野という少女だ。
「誰乗ってんだ、これ…?」
そう翔助が、言うと…。
ざわっ…。
妙な気配が、翔助の背中を刺す。
不良として、ツッパリ続けた百戦錬磨の翔助の神経が背後の気配を危険と認識した。
「誰だぁ!」
思わず、振り向くと…。
翔助は、絶句した。
背後に居たのは…。
「どうしたい?」
背後には、担任教師の阿部高和が居たのだ。
「あっ!阿部先生ー」
「名塚に、秋野じゃないか。いいのか、ホイホイ、こんな遅くに学校に居て」
「まだ、3時半じゃないですー。先生ー」
何気ない会話を、二人はする。
だが、翔助は、なぜか嫌な冷や汗を流す。
彼本人も、汗を流す理由がわからない。
(今だに、この先公には掴み所がない…)
翔助は、そう思った。
先日の暴力沙汰についても、阿部高和は咎めず、注意しただけ。
それが返って、不信でならない。
得体の知れない感覚を感じる翔助を尻目に、阿部は、例のFXに近づく。
「ところで、こいつ…。俺のバイク…。こいつを見て、どう思う?」
そう言いながら、阿部はFXにキーを差し込んだ。
「でっ!」
「えー、このバイク、先生のー!!」
FXの乗り手が、阿部だと言うことを知り、二人は驚く。
秋野は、すごーい!を連呼。
翔助は驚きのあまり、口を開け、鼻水を垂らす。
阿部は、不適に笑みを浮かべる。
(この得体の知らない先公が、FXに乗ってるだぁ…)
ちなみに、ゼファー750は最近生産が終了したとは言え、限りなく入手可能であり、暴走族などによる改造のベース車両に使われるFXは、ノーマルに近い状態では品薄なので、高価なバイクと言われている。
という理由で、翔助は敗北感を感じた。
「乗らないか?」
エンジンが点火したFXにまたがる阿部は、秋野に言う。
「はーい!乗ります!」
「ウホッ!!」
迷う事無く秋野は、FXのタンデムに飛び乗り、阿部の後ろに座る。
翔助は、さっきまで送ってと頼んでいた秋野に無情にも無視された。
「秋野!てめー、俺のゼファー乗りたかったんじゃなかとか!!」
乗せるのを断ってたくせに、悔しかったせいか、翔助は秋野に向けて叫ぶ。
だが…、時は遅く…。
ブオオオオオーーーーン!!!!
激しい排気音を、マフラーから放ち、FXは疾風のように駆け抜け、阿部と秋野は消えて行った。
「待てよ!おい!俺も乗せてぇ!!」
翔助は、一瞬で走り去るFXのテールランプを泣きながら見つめる。
傍若無人な彼が、初めて感じた敗北感だった…。
謎の担任教師、阿部高和は、意味も解らぬうちに、翔助の障害となって行く…。
………………
学生寮までの帰り、ゼファーを引きずりながら、翔助は泣いていた。
憧れのFXを、訳の解らぬ、いい男の教師が乗ってることが悔しくてたまらなかった。
そして、帰り道の細い小道で…。
「ははは!私は、通せんぼ星から来た、ミチトオサンだ!この道を、通りたくば…」
いきなり、目の前の小道から宇宙人が出現。
奴は、道を通さない妨害型宇宙人だ。
この道を通るには、ミチトオサンを倒さなければならない…。
カッ!
泣きながら翔助は、ゼイファーマンに変身して、迷いもせず殴り飛ばした。
………………




