第7話「翔助の怒りと、地球に落ちた復讐鬼(前編)」
………………
どこの場所にも、自分よりも弱いと思った者に、イジメを行う者は入る。
地球に落ちた謎の物質は、天声高校に来て、それを知る。
夕暮れの校舎裏から、生々しい暴行音がした。
「明日まで、金持って来いって言ったろ!」
校舎裏で、金髪のロン毛の生徒たち数人が、一人の目立たない感じの少年の腹部に拳を打ち込みながら叫ぶ。
「勘弁してください!もう、お金は…」
殴られながら、与島歩は叫ぶ。
だが、彼らは容赦なく、彼を殴り付ける。
これは、ほぼ毎日のように、この校舎裏で起きている。
「…」
地球に落ちたなにかは、どこからか、そんな彼の姿を眺めていた。
そして、謎の物質は意志があるかのように、岩石のような体を、コロコロと動かしはじめた。
物質は、与島歩に向けて転がる…。
後日、彼に暴力を加えた金髪のロン毛の生徒たちは、原因不明の重傷を追う。
全員が全員、強靱な力の持ち主から、素手で徹底的に殴られたようなケガだった。
彼らに起きた出来事は、あの地球に落ちた物質しか知らない。
………………
翔助の謹慎が、解けた数日後…。
ホームルームが始まる数分前。
翔助は、自分の席に座り、クラス委員の夏木風奈から、指導を受けていた。
「あなたは初日から、学校で飲酒とは!!馬鹿じゃないですか!!」
真面目な風奈には、翔助の行動は信じられないものだった。
(82か?いや、結構、胸あるな…)
説教を聞き流しながら、彼女の胸元に視線をやり、スリーサイズを予測していた。
まさに、外道。
「今後、気を付けてください…」
やっと、彼女の説教が終わる。
それに合わせ、翔助は両腕を広げ、大あくびをする。
その態度は、風奈の怒りに触れる。
(だから、ヤンキーは嫌いなのよ…)
心の中で、そう言った。
………………
昼休みになり、翔助は不良の溜り場である屋上に向かっていた。
「あー、ヤニ吸いてー、ヤニ」
と言いながら、歩いていると…。
「あっ、名塚君」
目の前に、秋野が。
ばったりと、会ってしまった。
うるさい奴に、出会ったと翔助は思った。
(まともな女、居ないなここ…)
「風奈の説教、どうだった?」
朝のことを、彼女は掘り出す。
「関係ねぇだろ…」
そう言って、彼女を押し退け、また屋上へと歩くと…。
「ん!」
顔に、大きな青痣を負った少年が。
彼は、与島歩だ。
制服も砂ぼこりを被り、ボロボロだ。
「与島君!どうしたの?」
と、秋野が彼に近づく。
与島歩は、また別の誰かに暴力を加えられたようだ。
「いや、さっき、転んじゃって…。大したことないよ…」
彼は、嘘をついた。
だが、それは、解りやすいまでに嘘だ。
嘘を言いながら、与島は、その場から逃げるように去る。
「なんだ、あのゴボウ野郎…」
横目で見ながら、そう翔助は言った。
与島の歩き方は、ヨレヨレだ。
「どうしたんだろ、彼…」
秋野は心配そうに、彼を見つけめる。
「…」
翔助は、そういや、腹が減ったと思った。
………………
やっと、学校も終わり、放課後。
翔助は問題を起こさずに、一日を終え、駐輪所に向かう。
駐輪所には、彼がローンで購入したゼファー750が。
そのゼファーに、翔助は見惚れる。
「やっぱ、格好良いな…。俺のゼファー…。やっぱ、単車はカウルなど付けない、ネイキッドよ…」
と、タンクに自分の顔を擦り付けり、手でシートを撫でていると…。
「なに、やってんの…」
「!」
タンクから顔を離すと、目の前に、玄関から出た秋野の姿が…。
一部始終を見ていたようだ。
「…」
翔助の額から、嫌な汗を流す。
秋野は、呆れた顔をしながらバイクに近づくと…。
「なんか、地味なバイクだね」
「ああ!?」
その一言に、翔助は額に血管を浮き上がらせる。
彼女は、そのまま、タンデムシートに腰を掛ける。
「なに、やってんだ!?降りろ!!」
「家まで、送っててくんない。手当てしてあげたでしょ?」
と言いながら、秋野はゼファーのタンデムシートに腰を掛けた。
いつもなら、嫌だ!の一言を言う翔助だが…。
(バイク二人乗り=後ろから、抱きつかれる=背中に、胸当たる=バイクのブレーキ振動で…、ドスコイ!!)
「いいよ」
ものすごい笑顔で、彼女を家まで送ることを承諾した。
………………
天声高校の近くの陸橋の柱の影。
そこで、数人の髪を染めた同じ学校の不良達に、与島は囲まれていた。
「勘弁してください…。本当に、知りません…」
与島は、柱に背を預けて、彼と距離を取る。
だが、不良のリーダー格が与島の制服の襟首を乱暴に掴んだ。
そして、与島の腹を殴り付けた。
「うっ!」
「とぼけんじゃねぇ!」
腹を押さえる与島に、不良のリーダー格は追い打ちを掛けるように、髪の毛を乱暴に掴む。
「本当なんです…、知りません…。お願いです…、やめてください…」
涙ながらに、与島は懇願する。
何故、彼が、今このような目に囲まれているのか…。
それは、先日、彼に恐喝をした不良達が、病院送りにされた事が原因。
その仲間達の勝手な判断から、恐喝を加えられた復讐で、与島がやったということにして、彼を痛ぶりはじめた。
そもそも、不良らの行為が悪いというのに…。
次から次に、不良達が、与島に暴力を加える。
いくら、彼が泣き叫んでも、殴るのを止めない。
「おら!てめーがやったんだろ!!」
「このもやし野郎が!」
不良達の暴言が飛ぶ。
与島の全身から、ひどい音が聞こえた。
すると…。
ピキッ…。
与島の背中から、皮膚が割れるような音が…。
殴られて鳴るよう音ではない。
明らかに、不自然な…。
そんな音が鳴ったのも、知らずに、リーダー格が大きく拳を振り上げた瞬間…。
ブォオオオオオーーーーーン!!!!
「!!」
そのマフラー音で、不良達の手が止まった。
すべての不良達が、爆音に近いマフラーの音に振り向く。
しかし、与島は振り向かない…。
振り向いた先には、ゼファーにまたがり、アクセルを全開にして吹かす翔助が。
「なに、イジメこいてんだ!!ゴラァ!!!」
翔助が、血相を変えて叫ぶ。
ちょうど、秋野を家に送った帰り(ちなみに、学校から歩いて5分ぐらいで、秋野の家だった)、ゼファーで流していたら、この現場に見つけたのだ。
「おい!あのリーゼントは、転校生で、多摩とタイマン張って勝った名塚だ!!」
一人の不良が、そう叫ぶ。
多摩は、天声高校で一番恐れられていた存在だった。
「てめーら、そこ動くな…。ゼファーで、足轢いてやかっからよ…。どうせ、弱いもん蹴るにしか使えねぇから、要らねぇだろ…」
目が血走りながら、翔助は言う。
その形相は、本気でやるつもりの顔だ。
アクセルを、更に吹かす。不良達の表情が強ばる。
ピキッ…、ピキッ…。
「…?」
翔助の耳に、変な音が入る。
また、皮膚が割れるような音が。
前かがみに倒れた与島の体から、多く鳴り始めた。
「ひぃー!」
翔助の登場で、びびった不良達は、その場から一斉に逃げた。
「待てや!てめーらみたいなのは、ムカつき過ぎて反吐が出んだよ!!!」
ゼファーから、降りた翔助は逃げる彼らに向かって叫ぶ。
そして、倒れ異音を放つ与島に駆け寄る。
「おい、ゴボウ。大丈夫か…」
そう言うと、与島は顔を上げた…。
「!?」
翔助は、驚愕した。
ピキッ…、ピキッ…と音を出しながら、与島の顔が変形しはじめた。
それどころか、体全体から音が鳴り、骨やら、皮膚やらが変形した。
徐々に、与島の姿は異様な肉体に。
手先は、岩石を貼りつけたよう皮膚と爪。
制服を破り、その岩石のような異質な肉体が現われ、顔はもはや、石で作った龍の彫刻のように変形した。
もはや、人間の姿ではない…。
ピキッ…。ピキッ!
音が止まった。
翔助の目の前には、人間ではなくなった与島の姿が…。
「こりゃ、ただ事じゃねぇな…」
翔助は、自分の胸に手を当てた。
すると…。
カッ!
胸に当てた手を中心に、大きな光を放ち、翔助もゼイファーマンに変身した。
「ぐおおおおおお!!!」
怪物と化した与島は、叫ぶ。
その声は、どこか虚しかった。
………………




