第6話「すいません。今回は、変身できませんでした」
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「いでで!優しくやれや!」
ズボンを捲った翔助の膝に、消毒液がかかる。
新しい学校での初日、翔助は保健室で過ごすはめに。
同じクラスの保健委員の秋野葉月から、ベッドに座りながら、絆創膏などを貼って貰っていた。
手当てをする彼女は、面倒見のいい感じの活発な感じの女の子。
「あなた、ヤンキーなの?そのリーゼント自毛?」
と、翔助の小指に包帯を巻きながら、興味津々に彼女は聞く。
異性との面識が少ない翔助だが、どうやら、秋野みたいな積極的な女の子は射程外のよう。
そのため、しぶしぶと答える。
「見りゃ、解るじゃねぇか…。自毛だ…」
「はい、終わり!」
と、彼女は包帯を巻き終わった翔助の小指を叩いた。
「いでぇぇえええーーー!!!!!」
打撲した小指に激痛が走る翔助は叫んだ。
「ヤンキーなんだから、これぐらい我慢しなさいよ」
と、秋野は言う。
これには、翔助の額に血管が浮き上がる。
(こいつ…、そのうち…、犯したる…)
痛む小指を握りながら、翔助は彼女を睨む。
手当てをし終わった彼女は、立ち上がった。
どうやら、授業に戻るようだ。
「じゃあ、安静に寝てなさいよ。ここで、タバコ吸ったら、先生に言い付けるからー」
と、忠告しながら、彼女は保健室から出ていく。
翔助は、苦い顔でベッドに倒れこんだ。
「なんだ、あのアマ…」
生意気だなーと思うしか、なかった。
………………
昼休みの屋上には、この学園の数少ない不良たちが、たむろっていた。
そして、いつものように、タバコをくわえながら喋っている。
不良たちのリーダー格である、長身の多摩巨人が、屋上から校庭を眺めていると…。
「ん!」
見慣れない茶髪のリーゼントが、校庭の駐輪場に居るのに気付いた。
………………
駐輪場に居るのは、保健室から抜け出してきた翔助。
なにかと、落ち着いてられない性分。
そして、生徒達が使う駐輪場にあったバイクを眺めていた。
「へぇー、ホンダのCBナナハン(排気量750)…。最近のカラーリングは、CBXに似てんな…」
と、CB750のエンジン周りを見ている。
すると、カワサキ派の翔助だが、そのCB750に乗ってみたい欲に駆られた。
チラチラ背後を気にしながら、制服のポケットから、はさみを取り出す。なぜ、はさみかは教えられません。
「最近、バイク壊してばっかだからな…」
そう言いながら、バイクの鍵穴に、はさみを突っ込もうと(よい子、悪い子は、絶対に真似しないでね。正義の味方、ゼイファーマンとの約束だよ)した瞬間…。
「おいっ!」
背後から、声がした。
「ぎぃ!」
翔助の体が驚きで、ビクン!と反る。
どうやら、誰かが来たようだ。
恐る恐る振り返ると…。
「てめー、俺のバイクに、なにしようとした!」
さっき、屋上にいた不良の長、多摩巨人が一人たたずんでいた。
同じくリーゼントにした長身の男の登場に、翔助は少しビビる。
どうやら、このバイクは彼の物のようだ。
「バイクを見てただけじゃ!」
翔助が、はさみ片手に言い返す。
すると、多摩巨人が、翔助の手に指を示し…。
「そのはさみ、なんだ!?」
と叫ぶ。
「バルタン星人の真似してたんじゃ!!」
「はさみ、一本足らねぇぞ!ボケ!!」
そして、二人は睨み合う。
「やんのか!?偽バルタン星人!?」
「うるせぇ、背高いからって、見下してんじゃねぇぞ!!」
この勢いで、二人は喧嘩を始めた。
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のちに、翔助はこの喧嘩について、こう語る。
「俺は、いろんな奴と喧嘩してきたよ。だが、後にも先にも、あんな激しい喧嘩は初めてだったよ」
そう彼は、自慢に語る。
「最初は、互いに拳で殴り合った。すると、相手は蹴りをかました。それに対し、俺は(中略)そして、俺は必殺アッパーで勝った。あの時、ポケットに入っていたキン肉マン消しゴム、略して、キン消しがなかったら、負けていたかもしれない…」
かなり際どい、勝利だったようだ。
「そのあと、奴とビールで乾杯し、互いの喧嘩の健闘を讃えたよ…」
そう、十八歳の童貞留年不良学生、名塚翔助は語る。
ただ誤算は、このあと、飲酒していたのを先生に見つかって、謹慎を受けたことだ。
転校初日に、停学を食らうヒーロー、ゼイファーマンをみんなで応援しよう!!
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