第5話「血は噴水のように出ません。本当に、テレビの過大表現って嫌ですね」
………………
とある某日。
地球に、一つの光が向かっていた。
隕石のような鉱物ではない。
どこかの星から来た生命体が光を放って、移動している。
大気圏を越え、それは、地球に降りた。
そして、地球に降りたなにかの目には、一つの建物が。
『天声高校』
そう書かれた建物だ。
「…」
なにかは、思考を働かせ、動き、どこかへと潜んだ。
果たして、そのなにかの狙いは?
………………
なんでも屋『ヨウロピア』のいい男の店長、阿部義和は困っていた。
何故なら、雇ったとは言え、事務所に翔助が寄生虫のように住み着いていて迷惑してるからだ。
しかし、ダイエット効果がないことが解った納豆を見捨てる主婦のように、翔助を見捨てることは出来ない。
だから、店長は考えた。
すると、とある名案が浮かんだ。
事務所の椅子に座り込む翔助に、店長が一言言った。
「学校に行かないか?」
その言葉で、翔助は凍りつく。
………………
「今時、高校ぐらい卒業しないといけないし、ぶっちゃけ邪魔だからって、寮付きの高校へ行けと…」
さっき、店長に言われた言葉を、翔助は椅子に座りながら復唱する。
彼は、その高校の場所が書かれた地図を眺める。
店長には、ハッテン場ではなく、飲み屋で知り合った高校の校長を務めている友人が居て、店長が彼に頼み、住所不定、学歴高校中退の翔助を引き取ってもらうことにしたのだ。
その高校には、寮があり、ちゃんとした食事も出るので、不規則な生活をする翔助の生活改善にもなる。
だから、翔助本人も嫌々ではない。
だが…。
「しかし、俺は今年で19なのに、なんで2年生からなんだよ…」
それは、ストーリー上、仕方ない。
「まぁ、中退ってのも、いい響きじゃねぇしな…。学校にも行けて、ちゃんとしたとこで暮らせる。いいことづくしで、反吐が出るぜ…」
と言い、翔助はこれからの新生活にワクワクしていた。
そして、新しい学校での期待も高まる。
性的な意味で。
………………
そして、転校初日…。
翔助の通う高校は、『私立天声高校』。
部活動が笑ってしまうほど盛んではなく、どちらかというと、頭のいい生徒が多いが勤勉的な高校だ。
しかし、不良生徒も居たりするが、別にそんなに学校に迷惑掛けてなかったりと、なにかと中途半端だ。
彼の受け入れ先である2年B組の教室は、賑やかだ。
それも、そのはず、転校生(翔助のこと)が来るから。
だから、ホームルーム前であっても、席に着かないで生徒達は騒ぐ。
「どんな奴だろうなー」
ありきたりなことを言うのは、クラスに一人は居るよく騒ぐ奴の鳥田智太郎。繋げると、鳥だと思ったろう。
彼を中心に騒ぐクラスメートたちに呆れている少女が居た。
「転校生が来るからって、騒がない!!」
クラス委員である彼女が、そう叫んだ。
ポニーテールの髪型の活発的な彼女の名前は、夏木風奈。
明るく、マジメで、どこか小悪魔的なルックスで定評のある少女。
「いいじゃんかよー」
鳥田は、そう言い返す。
そんな彼の一言に、彼女は腹を立てた。
「よくないわよ!」
生徒会アンケートで、『もっとも、うるさいクラスランキング』で一位を取ったクラスなので、風奈にはよく思えない。
彼女と同じように、もう一人のクラス委員の碓氷影臥も注意するが、誰にも気付かれてはいない。
理由は、言わなくても解ると思う。
ガラッ!
教室のドアが開き、担任の教師である阿部高和(店長と名前が似てるが、兄弟でもなんでもないので、気にしないで下さい)が来た。
その瞬間に、クラス全員が静まり返る。
「おはよう」
挨拶しながら、教壇に立つ。
そして、このまま、ホームルームが始まった。
「今日は、転校生が来る。みんな、仲良くするんだぜ」
教師は、そう言う。
「もっちろーんですー!!」
「わははは!!!」
鳥田の調子のいい一言に、クラス全員が沸く。
「うれしいこと、言ってくれるじゃないか。じゃあ、名塚君、入ってきたまえ」
教師は、廊下で待つ翔助に入ってくるように指示した。
「はい…」
返事と共に、ドアが開く。
すると…。
!?
ドアが開いた瞬間。クラス全員が、沈黙した。
何故なら…。
教室に入ってきた翔助は、ホラー映画ばりに血まみれだった…。
頭から、噴水のように血が飛び、歩くたびに、床に血が垂れ落ちる。
鼻、唇から滝のように、タラタラと血が流れ、ブレザーの制服は裂け、自慢のリーゼントも崩れている。
「ひぃいいいーー!!!!!!」
全員が、つのだ先生の漫画のような表情をした。
「どうしたい?」
教師は、何故か、すごい冷静に対応する。
というか、教室に連れてきたのは、教師のはずだが、そこは気にしない。
血まみれの翔助は、口を開いた。
「階段で、転びました…」
もちろん、嘘だ。
………………
あれは、数分前の翔助の登校中の出来事だ。
ゼファー400が、前回大破したので、代わりの原付に乗り、木々の多い細い小道を走っていた。
すると、どこから、ともなく小道の木の影から、飛び出し星からやってきた、走ってる自動車の前に飛び出す宇宙人のコケイルが、翔助の前に飛び出してきた。
「ぎゃああああ!!!」
驚いた翔助は、急ブレーキしたが、前輪がロックし、原付から振り落とされ、そのまま小道の脇にある崖に落ちていった!(飛び出しは、マジでやめましょう。飛び出した人が悪くても、加害者になるのは運転手です)
崖から落下して、血まみれになった翔助は、ゼイファーマンに変身!
カッ!
崖をよじ登り、コケイルの首をゼイファーマンは掴んだ。
そして、顔をコケイルに近づけた。
「飛び出すな!ボケ!!怪我しても、バイク大破しても、俺が悪いことになんやぞ!!わかっとんのか!?ああー、コラ!?悪意での飛び出しは、痴漢冤罪と同等の被害者が加害者になる行為なんやぞ!仮に、車止まらんかったら、お前も怪我すんだぞ!嫌やろ?馬鹿!!」
と、半ば作者の本音みたいなことを言いながら、ゼイファーマンは、コケイルをバコスカ殴り飛ばした。
コケイルは、複雑骨折した。
歩道を渡るときは、ちゃんと右、左確認しよう!
………………
そんな目に、翔助は遭った。
だから、登場して間もなく、保健室に運ばれた。
そして、騒がしいことで有名な生徒達が、初めて黙り込んだ。
クラス委員、風奈はこう思った。
(クラス全員、黙らせるなんて…)
一度も、黙らせたことのない彼女にはショッキングな出来事だった。
「さぁ、そろそろ、授業をやらないか?」
何事もなかったように、阿部高和教師は授業を始めた。
………………
「…」
そして、宇宙から降ってきたなにかは、学園のどこかで静かに時を待つ…。
………………




