第3話「男は度胸ってモンだ」
………………
いろんな事情が重なり、不良少年で、ピアノで『戦場のメリークリスマス』が弾ける名塚翔助は、正義のヒーロー『ゼイファーマン』に変身出来るようになった。
しかし、本日まで、バイクは破壊されるわ、初めての変身が無駄に終わるわ、バイト先の店長はホモだわと悩みは尽きる事はない。
………………
そんな彼は、バイト先のビルの個室に寄生虫のように住み込んでいる。
今日も、他人のいろんな依頼の電話を待たねばならない。
しかし、電話が来るまで、実に暇なので、現在の彼はTVを眺めているだけだ。
「あー、暇だー。暇すぎて反吐が出るぜ」
そう呟いた。
だけど、依頼が来たら面倒なので、電話はならなきゃいいとも思っている。
まさに、ニートの発想だ。
ジリリリリーー!!
早速、机の上の電話が来てしまった。
翔助は机にある受話器を握った。
「あいよ、もしもし…」
めんどくさいが、仕方なく電話に出る。
「もしもし、なんでも屋のヨウロピアさんですか…?」
受話器から、麗しい女性の声が。
その声で、翔助の鼻の穴が開いた。
………………
それから、数分後の夕方の駅。
駅の前に、翔助はポツンと立つ。
ここに居るのは、さっきの依頼者との待ち合わせ場所であるからだ。
「えーと、さっきの電話の麗しき女性からの依頼はについて確認するか。先日、大学の帰り道、背後から足音が聞こえ、振り返ってみると電柱に隠れた人影が見えた。それ以来、ずっと帰り道を一人で歩くと、自分以外の足音が聞こえ、無言電話も頻繁に来て、アパートに居ても、窓から誰かの視線を感じる。こりゃ、どう見てもストーカーだな」
と、駅前で独り言をしていると…。
「あの、すいません。ヨウロピアの名塚さんでしょうか…?」
その声に、あまり女性に名前を呼ばれたことのない翔助は、すぐ反応した。
振り向いた先には、小柄でお洒落な服装をした茶髪の短髪で、おとなしい感じの眼鏡の女子大生が。
「はい!わてが、男塾生、名塚翔助でぼんす!趣味は、読書です!エッチな本は読んだことないです!夜露死苦お願いします!!」
とっさに思いついた自己紹介文を、依頼者の彼女に言う。
「えっ、よろしくお願いします…」
少し引き気味に、彼女も返事を返す。
ちなみに、翔助の財布には、とある準備が仕込まれているのに、彼女は気づいていない。
………………
彼女の名は、春野カイリ。
女子大に通う、ごく普通の19歳。
実家の東北地方の田舎から来て、S県某市のアパート2階に住んでいる。
現在、奇怪なストーカーに悩まされいるため、毎日恐怖に襲われている。
翔助への依頼は、彼女の背後に潜む影から守ること。
そのことを、翔助は彼女と共に、喫茶店『ドココドスコイ』で、お茶をしながら確認していた。
椅子に腰掛け、ブラックコーヒー(にミルク、砂糖を多めに入れ、マックスコーヒー状態にした物)を口にしながら、翔助はメモを取って話をしている。
「なるほど…。それで、スリーサイズは?上から、言っててね」
「…」
脈絡のない質問に、彼女は戸惑う。
「あの…、名塚さんは、失礼ですが、ヤンキーですか…?」
翔助の容姿から、そう言うしかなかった。
「いいえ、私は、ヤンキーではありません」
(嘘だ…)
英文の回答のような返事は、翔助はした。
彼女は心から、翔助が信用できない。
何故なら、彼女はヤンキーが嫌いだった。
どれくらい嫌いかというと、小学校の卒業文集に書いた『こういう人とは、結婚したくないランキング』という作文のランキングにて、1位が『ヤンキー』だったからだ。
さらには、2位が『コーヒーに、必要以上に砂糖、ミルク入れる人』。
3位は『ドスケベな人』。
すべて、翔助に当てはまる。
「よし!このワタクシ、高校中退ヤンキー、名塚翔助に任せなさい!」
(今、ヤンキーって名乗った!)
こうして、翔助のボディガードが始まった。
しかし、二人は気付いてはいない。
喫茶店の外には、長いコートと深く帽子を被った怪しい男が居るのに…。
その怪しい男は、窓にヘバリつくように、あの二人の様子を覗いている。
(あいつ、怪しい…)
(今時、あんな怪しいカッコして、窓にヘバリつかねぇよ…)
通り過ぎる人々、みな、その様子を見て思った。
………………
時刻は、夕方。
陽は沈んだ。
彼女は、いつもの壁に囲まれた細い小道の帰り道を、隣に翔助をつけて歩く。
だから、不安はないのだが、さっきから…。
「ねぇ、カイリさんー。腕組んだ方が、カップルぽく見えて、ストーカーの野郎が、諦めて去ってくんじゃないっすかー?腕組みましょうよー。あと、携帯のアドレス教えてくださいよー」
さっきから、携帯を片手に掲げ、ボディタッチを迫る翔助に悩まされていた。
「あの、名塚さん…。やる気あります?」
彼女は、そう聞いた。
「ありますよ!(夜の方の)」
「だったら、ストーカーが付けてないか、確認して下さいよ…」
そう言うと…。
翔助は、急に口元に笑みを浮かべ、静かに口を開いた。
「ストーカー野郎は、さっきから後ろに居ます…」
と、とても小さな声で彼女に言う。
「えっ!?」
彼女は驚いた。
すると、翔助は携帯電話の画面を彼女に見せる。
携帯の画面には、長いコートと深く帽子を被った男が電柱の影に潜む画像が。
「俺の携帯は、内側カメラ(ディスプレイ側)が内蔵されてて、さっきから携帯をいじってるフリしながら、背後に居る野郎の姿が出てくるのを、カメラから見てたんですよ…」
なにもしてないようだったが、携帯の内側カメラから背後の様子を写しながら、写真を撮ったのだ。
これには、彼女は素直に驚いた。
「あなた、しっかりしてるわね…」
「じゃあ、お礼に、腕組もうよー」
冗談ながらに、言う。
「だけど、どうすんの…?今まで、ずっと尾けられてたなんて…」
やはり、今までストーキングされていたことが解ったが、彼女はストーカーに怯え始めた。
その彼女の様子に、翔助の怒りが湧いた。
「もう証拠も掴んだし、あいつを捕まえて、警察に送れば事件解決…」
そう言いながら、翔助は振り返る。
そして…。
「おい!ストーカー野郎!もう姿、押さえてんだよ!!出てこいや!!」
大声で、振り返った先にある電柱に向け叫ぶ。
すると…、展開の都合の関係上か…。
「ふふふ…、バレてしまったか…」
電柱の影から、声がした。
そして、長いコートと深く帽子を被った男が電柱から出てきた。
「てめぇー!!ストーカーなんざ、しやがって!!」
姿を現したストーカーに向かって、翔助は拳を振り上げ、殴りかかって行く。
すると、男は長いコートを脱いだ。
「!?」
その男の姿に、彼女は驚く。
「ふふふ…」
なんと、男は全身虫のような皮膚と顔をした宇宙人だったのだ。
「えっ?」
驚いた翔助の足が、止まった。
宇宙人は、長い腕で翔助の首を掴んだ。
喉から、潰れるような低い声が出た。
宇宙人は、そのまま腕を上に動かし、翔助の体を軽々と浮かせる。
そして、そのまま…。
ブン!!
宇宙人は、小道の道の向こう側へ目掛け、翔助の体を投げた。
勢い良く、翔助の体はボールのように飛ぶ。
「あああああーーーー!!!!!!」
投げられた翔助は、宙を吹っ飛んで行き、目の前の景色が流れて行く。
カイリの目の前から、一瞬にして飛ばされた。
そのことに、驚いた彼女は叫ぶ。
「名塚君!!」
やっと信用出来た翔助が、一瞬で飛ばされ恐怖した。
彼女の足が、ガクガクと震えている。
そして、力尽きたように腰から地面にへたり込む。
(足が動かない…)
「ふっ…」
まるで、ゴミでも捨て終えたような雰囲気で、宇宙人は、恐怖に慄く彼女の元へと歩み寄る。
彼女は逃げようにも、恐怖が強すぎて逃げれない。
「私は追尾星から来た、ビゴウイン…」
急に、名乗り始めた。
徐々に、彼女に歩み寄ってゆく。
「私は、気入った地球人の女性を観察する…。何故なら、それが趣味だから…。君は、その趣味の一人に過ぎないが…。まさか、正体を押さえられるとは…」
ビゴウインの言葉に、彼女は震える。
今まで、ずっと、気味の悪い宇宙人に尾行されていたという事に、彼女は言いようのない恐怖で包まれる。
かなりの絶望が、彼女を襲う。
「君は、私の趣味に、もう少しだけ付き合ってもらうよ…」
蟷螂の様な甲殻の顔の口から、舌が現れ、ジュルリと音を出す。
「きゃあああああ!!!!!」
カイリは、思いっきり叫んだ。
目から、大量の涙が。
ビゴウインは、その腕を彼女の体へと伸ばした…。
カッ!
上空から、陽の沈む紅の空から不自然な程の光が。
「!」
ビゴウインは、その不自然な光の方向に振り向いた。
「…」
振り向いたビゴウインは、驚く。
光の先には、見慣れない形相をした宇宙人が…。
「なんだ!?」
ビゴウインは、いきなり現れた宇宙人に動揺した。
宇宙人は、夕陽に重なるようにビゴウインの方へ飛び込んでくる。
「うおおおおおおーーー!!!!!」
大きく叫びながら、夕陽に重なる宇宙人は拳を振り上げた。
その拳は、ビゴウインに向けられている。
そして、拳を振り上げる宇宙人こそ、先程、ぶん投げられ変身した名塚翔助の姿、ゼイファーマンだ。
………………




