第17話「悪とは無差別なり」
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前回までの話。
謎の美少女、冬海ユキハの正体は、多摩の小学校からのガールフレンドだった。
しかし、多摩は事情があって逢えなかったが、今更になって逢いたいと騒ぎだし、学校へ向かう。
だが、ユキハに謎の影が近づく。
そんな状況の最中、翔助はカイリに彼氏が居ることを知り、精神的コロニー落としを受け、自我崩壊寸前。
果たして、多摩はユキハに逢うことが出来るのか!
ユキハに迫る影の正体とは!?
なぜ、人々は今更になって徹底的に納豆ダイエット捏造問題を叩き始めるのか!?
言っておくが、翔助はもうクライマックスだぜ!
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「うん、居るよ」
カイリが、その台詞を言い放ってから数分後…。
喫茶・奈良の前には、用事があるカイリは去り、固まったままの翔助が瞬きすらしない直立不動でいる。
きっと、弁慶もこんな風に矢が刺さって死んだのだろうと思わせる見事な大往生。
この通りを通りすがる人々は、そんな大往生に目を当てられなかった。
翔助の耳には、カイリの言葉が永遠と鳴り響く。
「うん、居るよ」
エンドレステープのように、耳から離れず、繰り返される。
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春の日差しが差す廊下を、補習を受けたユキハが歩く。
廊下の窓には桜の木々が見え、窓から見える桜を彼女は見つめる。
「綺麗…」
そう呟く、彼女の背後から…。
ササッ!
まるで、ネズミが走るような不気味な物音が。
「!?」
その音に気付いたユキハは、振り返る。
すると…。
ササッ!!
妙な異音が、廊下に響いた。
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最近、めっきり出番がない葉月が私服で喫茶・奈良の通りを歩く。
どうやら、春の陽気で街を気持ち良く散歩していたようだ。
そんな気分良く散歩している途中…。
「ん?」
たまたま喫茶・奈良の前に、目をやると大往生中の翔助の姿が。
「はっ!?」
思わず、彼女は翔助の元へ駆ける。
なにやっとるんだ、と思った葉月が翔助の肩を掴み揺らす。
「なに、やってんの!?こんなところで、固まっちゃって!!」
揺らしながら、そう言う。
しかし、翔助は固まったままで反応なし。
よほどショックが強かったらしい。
そんな彼に、痺れを切らした葉月は…。
「あーっ!!あんな所に、エビフライ伯爵が!!」
と、適当な所に指を差して、適当な嘘を叫ぶ。
だが、それでも反応はしない。
「目覚ましなさいよ!!」
いいかげんに、イラついてきた葉月が翔助の頬を叩く。
バシン!と綺麗な音がなり、頬が赤くなった。
しかし、それでも反応はなし。
そして…。
「あっ、あと三十分で水曜どうでしょう!?が始まるー」
葉月は、適当な嘘を言った。
すると…。
「えっ!?」
翔助は意識を取り戻した。
そんな微妙な嘘で、失恋のショックから意識を取り戻す。
葉月は翔助の単純ぷりに、苦笑した。
ちなみに、この日は月曜だ。
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多摩はまだ学校に居て、ユキハを探してはいた。
だが、彼は校内の駐輪所に戻り、CB750のシートに座り、タバコを吸う。
やはり、ユキハは帰ったのだろうと思い、また後日に逢いに行こうと考えていた。
そんな時…。
ガシャン!!
ガラスが割れる音が。
多摩は驚き、鳴った方に首を向ける。
すると、三階のどこかの教室の窓が割れていた。
「なんだ?」
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窓ガラスが割れたのは、三階の物置部屋のようだ。
ここには、調理実習で使われる調味料などが置かれている。
そして、隣はちょうど調理実習室。
そこには、誰も来ることも居ることもないはずである。
多摩は、そこへ走って向かう。
すると、妙な臭いが鼻に入る。
嗅いだ事のある臭いではあるが、なんの臭いかは、すぐ解らなかった。
鼻に手を当て、調理実習室を覗くと…。
「!」
多摩は、急激に懐かしい想いと、切なさに襲われる。
調理実習室に、彼にとって忘れられない者の後ろ姿があった。
そして、多摩は思わず、調理実習室に駆け込み、叫んだ。
「ユキハ!!」
間違いなかった。
あの黒髪と、華奢な後ろ姿は彼女しかいないと、多摩には断言できた。
だから、彼女を見つけた時の彼の喜びは、とてつもない物であったが…。
「…」
呼び掛けられても、その後ろ姿は反応しない。
「…!」
多摩から、喜びは消えた。
調理実習室が、妙な臭いで充満している。
そして、どこからか、プシュー!と言う音がした。
チューブから、空気がぬけるような音。
「ゴホッ!ユキハ!?」
臭いが、なんだか、理解した。
調理実習室で使われるガス管から、ガスが吹き出している。
そのことに気付いた瞬間。
彼女が振り返る。
片手に、マッチがあった。
振り返った彼女の顔は、間違いなく、多摩が探していたユキハの顔。
しかし、彼が知っている彼女の様子が違っている。
「ユキハ!お前、なにしてんだ!?」
懐かしさや再会の喜びが、この彼女の異様さに消された。
「…」
呼び掛けられても、彼女は答えない。
そして、多摩を無視して彼女はガス臭い調理実習室から出ようと歩き始める。
多摩は、あまりの異質さに恐怖した。
そして、直感で。
「ユキハじゃない…!」
直ぐ様、わかった。
同時に、これから、彼女のすることも。
「やめろ!!ユキハ!!お前、どうしたんだよ!!」
調理実習室から出た彼女に、多摩は叫ぶ。
だが…。
ユキハは、片手にあったマッチからマッチ棒を取り出す。
「やめろぉおおおーー!!!!」
シュボッ!
マッチが擦る音がした。
キハには、何者かが取り憑いたのを知るのは後。
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ブォオオオオーーー!!!
翔助のゼファーが、学校に向けて駆け抜ける。
いつも走る道から見える学校の位置から、モクモク…と煙が上がっていた。
彼が、ちょうど失恋で落ち込んでて葉月が現われた時…。
葉月の携帯が、友人から着信で鳴り…。
「えっ!?嘘でしょ!?」
電話に出た彼女の第一声が、それだった。
翔助は、彼女の携帯から聞こえる声を盗み聞きすると、学校の調理実習室がガス爆発したとのことだ。
「なんだと!?」
それを聞いた瞬間、直ぐ様、ゼファーの方に飛んで行く。
葉月は、携帯を片手に、ゼファーのエンジンを回す翔助を見ていた。
ゼファーのアクセルをいつもより強く握り、煙の上がる校舎を睨む。
「多摩の奴、確か、学校に…」
そう考えると、翔助の頭に嫌な想像が沸く。
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嫌な想像は当たった。
学校には、救急車、消防車、警察やら多くの人々が集まる。
そんな人混みの中を、ゼファーをパトカーの隣に駐輪させた翔助が突っ込む。
どけ!どきやがれ!と鬼気迫りながら、人混みを掻き分ける。
そして、掻き分けた先で、煙を上げる校舎が目に入った。
さらに、燃え盛る校舎の屋上に誰かが居るのにも気付く。
「校舎にいる生徒、教師達は、誰も近くに居なかったためか、幸い無傷でしたが、約二名がまだ校舎に居る模様…」
と脇から、警察か救急隊の報告が聞こえる。
どうやら、多摩や例のユキハの姿は見えない。
翔助の頭に、大量の血液が流れる。
腕の血管が激しく脈打つ。
(マークジャックとか言う野郎が、仲間が居るみたいなこと言ってたよな…)
こんな状況になるのは、侵略者と頭に浮かび、マークジャックの仲間の宇宙人の仕業だと、一気に頭の中で推理を組み立てた。
怒りで、頭がいつもより精確に確実に回る。
「どけ!!」
現場を封鎖する警官を払い除け、翔助が学校に向かって走る。
こんな無差別的なやり方が、たまらなく頭に来た。
次々に来る警官の手を避け、校舎に入る。
そして、誰も居なくなった瞬間。
カッ!!
大きな光が放たれた。
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