第15話「冬、春が入り混じる三月の報せ」
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謎の宇宙船『バイリス』に乗る宇宙人達にとって、ゼイファーマンは新たな驚異になりかねなかった。
彼らの野望は、我が星の文明発達のために地球人を手に入れることだ。
その野望の際には、ゼイファーマンは邪魔になる。
だから、彼らはある強行を放つことにした…。
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気付けば、もうとっくに春休み。
しかし、たまに授業を受けないでいた翔助は補習を受けなければならない。
かったるいと言いながら、翔助は大きくアクビをし、一人朝早く学校の玄関に向かう。
「進級できねぇとは言え、休みまで学校来ねぇといけねぇのかよ…」
愚痴を吐きながら、ダラダラと歩き、玄関に入る。
やはり、春休み中の校内は、静けさしかない。
翔助は内履きに履きかえ、ひんやりとした寂しい感じの廊下を歩く。
窓を見ると、咲き乱れそうな桜の木がチラホラ見え、もうすぐ春なんだと感じさせた。
そう思いながら、翔助は歩いていると…。
(俺の春はいつだろうな…)
急に、そんな切ないことを考え始めた。
(大体、高校に入り直したというのに、ろくな出会いがなんやんけ…)
翔助は、この学校に来てからを思い浮べる。
葉月とは、気付いたら、いつも喋ってる仲で、油断あれば襲ってやりたいタイプではあるが、あの恐ろしい祖父が居るのが…。
風奈は、有無を言わさずに襲ってやりたいタイプだが、性格がキツイので関わりたくない。
思えば、バイトの依頼で出会った年上の春野カイリが、一番襲ってやりたいタイプだったが、あれ以来、逢っていない…。
自分の春の予感のなさに、翔助はため息を吐く。
(今年も、寂しい夜を過ごさなあかんのか…)
そう嘆くと…。
「ゴホッ!ゴホッ!」
「ん…」
自分の背後から、咳き込む声が聞こえた。
どうやら、校内には、もう一人誰か居るようだ。
声の方に、翔助が振り返ると…。
!?
翔助は、目を疑った。
振り返ると、背後には黒い長髪の肌の白い日本人的美人なか細い少女の姿が。
「ウホッ…」
翔助は思わず、視線が彼女に奪われた。
(なんだ…、このすぐにでも、襲いたくなるような線の細さと美しさは…)
襲うが真っ先に出ながらも、翔助は彼女の美しさに見惚れる。
今まで、一目見て惚れることはない翔助には、これが初めてということになる。
まさしく、一目惚れという奴だ。
「ゴホッ!」
その少女は、苦しそうに口に手を当てて咳き込んでいる。
すると、翔助は暴走したかのごとく駆け寄り…。
「大丈夫ですか!!」
すぐ様、声を掛けた。
「えっ…」
いきなり、目の前に現れたリーゼントに彼女は驚き、足が止まる。
そんな様子も、気にせずに…。
「体調悪いの?だったら、保健室行こう!行って、ベッドの上で…」
もはや、本能だけで翔助は口から次々と言葉を放ち続ける。
いつものパターンなら、ウザがわれるシーンであるが…。
すると、彼女は口を開き…。
「ゴホッ…。どなたか、存じませんが、親切にありがとうございます…」
「えっ…」
ナンパのつもりで声を掛けたはずだが、丁寧に礼を言われた。
これには、翔助は調子が狂う。
「では、失礼します…」
ペコッ…、と頭を下げ、彼女はゆったりと、また歩き始めた。
「あっ、はい…。お気をつけて…」
彼女に合わせて、翔助も頭を下げる。
今まで逢ったことのないタイプだったので、ペースを完全に彼女に飲み込まれた。
………………
補習は終わり、翔助は学校から出て、すぐ様、多摩達と遊ぶことにした。
そして、彼らの溜り場である喫茶店『コーヒーショップ・奈良』に、翔助はゼファーに乗って来た。
ガラガラ…、と店のドアを開けて、翔助は入る。
「おう」
軽く挨拶をして、テーブル六つとカウンターだけの店内に入ると、春休みモードの多摩、星、スキンヘッドの私利鳥丈の三人が居た。
「あっ、なっちゃん」
「ちぃーす」
彼らも、軽く挨拶を返す。
翔助は、彼らが座る席に腰を掛け、テーブルにゼファーの鍵を置く。
「マスター、コーヒーで、マックスモード(砂糖、ミルクを信じられないくらい入れた状態)ね」
そう注文をした。
翔助は、激甘じゃないとコーヒーが飲めない。
「あれ、秋野は?」
いつも、葉月が一緒に居たので、多摩がそう聞いてきた。
「知るか…、あんな俺をボコボコにしたジジイの孫なんか…」
苦い顔をして、翔助は答える。
前々回、葉月の下着を無意識で握り、秋野松尾の怒りに触れて以来、変なトラウマが出来たせいか、会いづらくなった。
「そうだ!今日は、すげぇマブな子が学校に居たぜ!」
思い出したように、翔助は話し始めた。
「また、女の話かよ…」
星は呆れて言う。
こないだも、翔助に長時間、自分に彼女が出来ない理由について話されたから嫌がっていた。
「女なんか、つまらないわよ。なっちゃん」
オカマ口調の私利鳥が言う。
彼は、何故かオカマぽい。
理由は不明だが、オカマぽい。
そのうち、尻に穴を開けられそうな恐怖感を翔助は感じていた。
「まぁ、聞けや。学校に、肌が雪みたいに白くて、黒髪の似合う…」
「…!」
彼女の特徴を言う翔助の話に、多摩は反応した。
「もしかして、変に丁寧語で、体が病弱な感じの!?」
「えっ…」
自分が言い終わる前に、多摩が言い当てたので、翔助は驚く。
「知ってんの…?」
「…」
聞き返されたが、多摩は黙り込み、急に立ち上がる。
「学校に居たんだよな!」
多摩は焦るように、翔助に聞く。
いつもと、様子が違っていた。
「ああ…、学校にな…」
翔助が、そう答えると、多摩は席から離れ、店のドアに向かい走り始めた。
唖然とする三人を尻目に、多摩は店から出ていく。
「おーい!」
よく解らないまま、立ち去る彼の背中を翔助は見つめるしか出来なかった。
ブォオオオーーーン!!!
店の外に駐車されていたブルーカラーのCB750のマフラーが響く。
エンジンが始動したばかりのCB750に、多摩はまたがる。
(あいつ、まだ学校辞めてなかったのか…)
心の中で、そう言いながら、CB750を走らせた。
「なんや、あいつ…」
翔助は、ポーカンとした。
店内では、唖然とした三人が。
いつもクールな態度の多摩が、急に取り乱すので驚くのも無理はない。
「あんな多摩ちゃん、初めてよ」
私利鳥が、オカマ口調で驚く。
どうやら、誰一人として、多摩が取り乱す理由は解らなかった。
そんなとき…。
「ふふふ…、見せてもらったぞ…」
「!?」
いきなり、誰かが話に割り込んできた。
声の方に、三人が振り返ると、そこにはコーヒーを持ったモヒカンので筋肉質の巨漢が。
その男は、この店のマスター、日高良司。
なぜか、いつもレーザーを着た謎の多い男。
彼の手には、翔助が頼んだコーヒーが。
「マスター。なんで、多摩の奴、様子が変なんです?」
星が聞く。
すると、マスターは翔助の前にコーヒーを置き、静かに微笑む。
どうやら、マスターは多摩について、なにか知っているようだ。
「知らない」
マスターは、一言で切り捨てた。
(だよね…)
三人同時に、そう思った。
………………
しばらくして、翔助は店から出て、ゼファーにまたがりエンジンを始動させる。
後を追うように、星、私利鳥も店から出る。
「なっちゃん、追う気?」
私利鳥が、翔助にそう聞く。
「ああ。なんか、わからんが…、たぶん…」
ゼファーのエンジンを吹かしながら、翔助は多摩が取り乱す理由(推測)を語り始めた。
「あいつは、俺が色が白い、黒髪の似合うとの特徴を言い出すと、すぐに反応した…。それから、察するに…、多摩の奴は、昔買ったデラ○っぴんに、ちょうど、そんな感じの子が載ってたのを思い出し、ムラムラし、ビデオ屋に駆け込ん…」
気付いたら、星、私利鳥の姿が消えていた。
跡形もなく、極めて、気付かないうちに居なくなった。
「…」
翔助は、もう何も言えなかった。
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「ゴホッ…」
補習が終わった、例の彼女は咳き込みながら、学校の廊下を歩く。
やはり、まだ咳き込んでいる。
どうやら、とても体が弱いようだ。
そんな彼女の背後に…。
ザッ!
妙な一つの影が走る。
………………
学校へ向かう道路を、多摩のCB750が飛ばす。
アクセルを握る多摩は、なにかを思いながら、駆け抜ける。
(ユキハ…)
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エンジンが暖まり、マフラー音が快調になったゼファーに、翔助はローギアを入れる。
「よし、行くぜぇ!爆風号(ゼファーに付けた名前)!!!」
いざ、発進しようとした時。
「あっ!名塚君!!」
急に、翔助は背後から名前を呼ばれた。
その声は、どこかで聞いた女性の声。
「えっ!」
せっかく、暖めたゼファーのエンジンを切った。
そして、翔助は声の方に振り返る。
すると…。
「久しぶり…」
「カイリすぁーん!!」
なんと、翔助の背後には、憧れのおとなしい感じの眼鏡の女子大生、春野カイリが…。
………………




