第13話「サクラ・テンペスト」
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葉月の家には信じられないほどのオーラを秘めた祖父、秋野松雄が居た。
その祖父に気に入られていないため、尿を漏らしてしまった翔助は、このままボコボコにされてしまうのか!?
果たして、今回明らかになる秋野松雄の策略とは!?
力とは、未来のために奮うものだ!!
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「漏らしてねぇよ!!」
秋野家の玄関前で、翔助は意味不明に叫ぶ。
叫んだ理由は自分でも解らないが、尿の代わりに汗だくだ。
「なにを、漏らしてないだと!?」
筋肉質で屈強な葉月祖父、松尾が太く色気のある大人の叫び声で返す。
「えっ?なんでもないです!!」
全身硬直させ、翔助は答える。
硬直した体のすべての毛穴から、汗が吹き出しているのが解った。
このままでは、この爺さんにSATHUGAIされてしまう…。
そんな考えに支配され、恐怖で金縛り状態の翔助を救うがごとく、葉月が口を出す。
「おじいちゃん、やめてよ!翔助君は、おじいちゃんが嫌いなヤンキーじゃないよ!!」
その言葉一つが、翔助にとっての救いだ。
「なら、そのリーゼントはなんだ!?」
秋野松雄が、葉月に問うと…。
「彼は氣○團のファンだから、真似してるだけなの」
翔助の髪型に指を差し、葉月は言う。
(えええええぇぇぇーーーーーーーー!!!!)
無理のある誤魔化し方に、翔助は目を点にして、心の中で叫ぶ。
なに、その誤魔化し方?
と、叫ぶことも出来ない。
このまま、秋野松雄に睨まれるのか…。
と思ったとき。
「そういうことは、早く言え…」
秋野松雄が、初めて静かに声を出す。
誤魔化しに成功した。
(えええええぇぇぇーーーーーーーー!!!!!!!???)
またもや、心の中で叫ぶ。
なんで、ヤンキーは駄目で、氣○團はOKなのか。
そんなことを考えれば考えるとカオスになるので、考えるのを止めた。
ただ翔助は、去年の紅白での例の裸が偽物だったのにムカついて、苦情の電話したのを思い出した。
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とりあえず、翔助は秋野家に上がった。
秋野家の室内は、日本情緒溢れる木々で出来た空間。
自分が日本人であることを思い出させるがごとくに、香る緑茶の匂いがする廊下。
その和風空間の秋野家の角にあるのは、長女・葉月の個室。
彼女の部屋は、やはり畳が敷かれた和室であるが、やはり女の子らしい部屋の作り。
現在、翔助はそんな葉月の部屋に居る。
「翔助君、汗だくだよ…」
やっと秋野松雄から離れられ気が抜け腰を下ろす翔助に、葉月も腰を下ろし話し掛ける。
「おまえの爺さん、今まで、何人殺った?」
思わず、物騒な質問をする。
「なに、言ってんの…」
そう言いたくなる気持ちは、葉月には解らなくはない。
そして、葉月はふと立ち上がり戸を開ける。
「ちょっと、タオルとお茶でも持ってくるね」
そう言い、彼女は部屋から出て行った。
シャー、と戸が閉まった。
「ふー!」
急に気の抜けた翔助は、そのまま部屋に仰向けになる。
とりあえず、なんて恐ろしい爺さんが居る家なんだ…、と思いながら、翔助は葉月の部屋でゴロゴロする。
すると…。
「ん?」
ふと、タンスに目が行った。
家が和室とは言え、タンスは現在風でオシャレな感じ。
葉月の衣類を収納しているようだ。
すると、翔助の頭がDOHCのごとく回転しはじめた。
(タンス→服→下着→葉月の下着→ドスコイ!)
翔助は、その場から立ち上がった。
「あのタンスの中には…」
思わず、唾を飲む。
あのタンスの中には翔助が見たことも、脱がせたこともない女性の聖衣がある。
だから、体が無意識にタンスの元へと駆け抜ける。
「パンティや、ブラが…、ここに…、あると言うのか!?」
タンスを目の前にして、叫んだ。
急に翔助の脳裏に、あることが浮かんだ。
………………
それは、翔助が去年まで入っていた25人の暴走族チーム『NANAJIN』に居た夏のある日。
ちなみに、そのチームはリーダーが無免許運転で捕まって解散した。
「名塚さん!」
一人のさらしを巻いた幼顔のチームの新入りが、翔助に近づく。
この頃の翔助は、ゼファー400を愛車に鬼人のごとく暴れたことから、チーム内では『そよ風の暴れん坊将軍・名塚』と呼ばれていた。
ちなみに、この頃、ゼファー400に乗ってるのは10人くらい居た。
「なんだ…」
クールにタバコに火を点けながら、新入りの方を向く。
すると…。
「昨日、女と寝たんですが…」
「ぶっ!」
翔助はタバコを吹いた。
いきなり、新入りが女性経験を語り出したので動揺した。
チーム内で、女性経験がないのは翔助だけ。
しかし、そのことをチーム内の誰にも言わなかった。
「そん時の俺の女の下着、凄かったんですよ…」
変なことを、新入りは言い始めた。
「どんなん…」
多少興奮しながら、翔助は聞く。
すると、新入りは自分の彼女の下着について語りだし、それに対し翔助は真剣に耳を傾ける。
(女の子って、そんなHな下着を着ているのか!?)
それ以来、翔助は女性の下着について、真剣に考えるようになった。
たかが下着、されど下着。
女性の下着は、まさに黄金聖衣。
そう翔助は思った。
………………
そんな憧れの下着が、今は目の前のタンスの中にある。
翔助のテーションが上がっていく。
あまりの自分の女運のなさから、下着を拝むのは、ドラ○ンボールを七つ集めない限り無理だと思って泣いた日々の自分の姿が流れる。
だが、そんな昨日まで自分との別れのときが来た。
「うぅ…」
思わず、涙がこぼれた。
そして、タンスに手を掛けると…。
「名塚翔助、開けまーす!!」
そう叫びながら、タンスを引こうとした、その時…。
「!!」
翔助は背後から、とてつもないオーラの力を感じた。
そのせいで、タンスを開けようとする手が止まる。
「…」
翔助は背後から来る圧力からか、汗が流れはじめた。
この感覚は…。
恐る恐る振り返ると…。
「貴様がぁ!葉月の部屋になにをしている!!!」
いつのまにか、なぜか部屋に秋野松雄が居た。
「ぎゃあああああああああああああああ!!!!!!」
翔助は叫びながら、タンスから凄い勢いで離れる。
そして、部屋の窓側に避難した。
秋野松雄の形相が、徐々に変貌してゆく。
「大事なぁ!孫娘の葉月の部屋に入って、なにをしようとしたぁあああ!!?」
「待ってください!誤解です!!」
「ここはぁ!一階建てだぁあ!!」
「それは、五階…」
どうやら、秋野松雄はたまたま葉月の部屋の前を通り入ってみると、タンスを開けようとしている翔助を発見してしまったのだ。
大事な孫娘の部屋で、奇行をしようとしている翔助に、秋野松雄の怒りは膨張する。
「なんもしてねぇーって!!しっけーぞ!じじい!!」
逆ギレした翔助は避難した窓側から、なにかを無意識に握りながら反論。
だが…。
「貴様のその手にあるのは、なんだぁ!?」
「へっ?」
無意識に握ったものを、翔助は目視した。
無意識に握った、それは…。
「パンティ…」
水色で三角の形をした可愛らしい葉月の下着だった。
窓側に干されていた下着を、肉体が無意識に握ってしまったのだ。
「…」
翔助は葉月の下着を握ったまま、放心状態になった。
憧れの下着を握ることが出来た喜び。
これから、『関東圏の桜花王』に殴られる苦痛と悲しみ。
そのすべてを、下着と共に握り締めた。
この日、秋野家に大きな音が響く。
………………
日が暮れ、顔面を腫れ上がせ泣きながら翔助はゼファーを引き、秋野家を後にする。
「うぅ…」
滝のように、涙を流していた。
よほど、すごいことをされたようだ。
全身ボロボロの翔助の目の前に、一つの影が。
「はは!私は…」
なんと、いきなり宇宙人が出現した。
果たして宇宙人の正体は!?
カッ!
自己紹介する前の宇宙人に対して、翔助はゼイファーマンに変身して、殺し屋1のように泣きながら、名知らぬ宇宙人を殴り飛ばした。
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