第四話:不安な翌日〜胸がつまる想い〜
僕はその夜、また夢を見た。
今度はあいは出てこなかった。ただ、僕の目はカメラのように一ヶ所をずっと見つめていた。そこには宇宙の全体像が映っていた。僕はずっとその宇宙の全体像を見ていた。僕はその映像を見ていた。
すると宇宙の全体像は突如動きを変え始めた。だんだん外側から包むようにボールみたいになり始めていたのである。宇宙は徐々に丸くなっていき最後にはサッカーボールのようになり、止まった。僕のカメラは何も動揺することもなくその映像を見ていた。
その宇宙の玉はまた徐々に震えながら小さくなっていった。やがて点になり、
そして……はじけた。
星は雪のように散らばり光はなくなっていき僕のカメラは暗闇をただ映すようになった……
そんな夢だった。不思議な夢だった……
朝起きるとあいが寝息をたてていた。僕はベッドから出ると頭を掻いてリビングに向かった。
寝ぼけ眼が徐々に覚醒してくると鮮明に昨日の夜のことを思い出した。胸が痛くなってきた。
あのおかしなくらい奇麗な星空。まるですべての星が見えたかのようなたくさんの星……
僕は深呼吸をして窓から天空を見た……
頼むから夢であってほしいと思った。
が、今は朝だということに気がついた。僕は溜め息とともに自嘲にも似た笑みを浮かべると、『よっぽど慌てていたんだな…』と呟いた。
その声はなんだか人が発する感情などが無視されたガイダンスの女性の声のような無機質な声に聞こえた。その声は空気を震わせてはいたが、
すぐに消滅した……
なんだか目の前の空間が僕を圧迫するような感覚を感じた。それとどうじに息苦しさも迫ってきた。
ただ単純に世界が狭くなった気がした……
しかし、そんなことをずっと考えても仕方なかった。深呼吸をすると感覚は消え、もとの感覚が戻ってきた。僕は震えた溜め息を吐き、キッチンに向かった。
僕はエプロンをつけると朝食にハムエッグとパンを焼いたものを、そしてトマトとレタスがメインのサラダを作っていた。
作っている最中、僕は夢の内容を考えていた。
宇宙が徐々に丸くなり、はじけた。
普段なら小説のストーリーになるような、フィクションになるような夢……
なぜだろう…今の僕にはどうしてもこれが夢と思えなかった。あの奇妙な星空、感覚がおかしい朝、あいが光になって消えた夢、そしておわる世界の夢……これらは一本の線で繋がっているような気がした。
そして、それは本当のことだと思った。おかしなぐらい信じれた。
『この世界は、あいと一緒にいれる世界は終わるの、か……?』
しかし、取り越し苦労ということにしたかった。まだ推測の域を出ないと一生懸命いい聞かせた。しかし、不安に揺らぐ心だけは正直だった………