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2 Sad Lonely Sad

 おこしいただき、ありがとうございます。

少し長めとなってしまいましたが

ゆっくりしていってくだされば光栄です(^∀^)

 トラネルは冷たい鎖の重みを感じながら、うっすらと静かなため息をついた。数多くのすすり泣きの声や叫び声の中では、そのため息はなきものとなった。


 それなりに人口密度が高いはずの部屋は冷えきっていて、はだしで黒くなっている足が痛くなった。


 汚すぎる服の泥を爪でこすりながら、「こんなに感情がないのは私くらいなものだろう」とトラネルは寂しく思った。

 

一瞬、「今は、泣きたいほど辛く、悲しいはずだ」と思い、「泣けるのではないか」と考えたが、「そもそも、そんなことを考える事が普通ではない」と気が付き、再び自分の感情がどれほどないかを知った。


「この『寂しい』という気持ちがなくなっちゃったら、私は本当に人間に戻れない化け物になっちゃうんだろうな」


 誰にも聞こえない声でトラネルがそう呟いたその時だった。


「あなたは、ずいぶんと落ち着いていらっしゃるのですね」


 その声はトラネルが驚くほどこの場には似合っておらず、鈴が鳴ったようなかわいらしい落ち着いた声だった。



「この人の方がよっぽど落ち着いている」そうトラネルは感じたが、声を出すことができなかった。


 声の主はこれまたこの場には似合わないような笑顔で、トラネルの前にしゃがんだのだ。花が開くのを連想させるような可憐な笑顔だった。まだ、十代半ばほどの少女に見えた。


 泣いたり、叫んだりしていないのは自分だけだと思っていたトラネルは不思議で複雑な気分になった。


「あなたは、今驚かれています」


 聞こえやすいようにはっきりと最低限の声で少女はそういった。


 トラネルには訳が分からなかった。黙っていることしかできなかった。


「あなたは、自分が思っている以上に感情を持っているのだと思います」


 トラネルは今度は不気味に思った。この叫び声あふれる中で先ほどのトラネルの言葉が聞こえたはずがないのだ。


 トラネルが警戒をしていると少女はまた口を開いた。変わらない鈴のような声だった。


「ごめんなさい。わかりきったことを言ってしまって……。ごめんなさい」


 本気で謝っているのがトラネルにも感じられた。少女を逆にかわいそうだと思うほどだった。


 トラネルの頭の中には一つの結論が生まれた。


(この子も人間じゃぁないんだ……)


「ひとつ、同じ立場の人に聞きたかったんです」


 そう話した少女の言葉は震えていた。それとは不釣り合いに、意思をもったような大人びた表情だった。


「なんですか?」


 はじめて答えたトラネルに安心したように微笑みなおすと、雨に打たれた花のような表情をして、じっと目を合わせた。


「私たち罪人がこうなってしまうことは仕方のないことなのでしょうか?」


 時間が止まったようだった。トラネルの心臓がドクドクと音を強く立てた。握りしめた手に力が入った。背中に汗が流れた。


 しばらくの沈黙の後、少女は手を胸の前に組んでギュッと目を閉じて、トラネルに聞いた。長く伸びた少女の髪が前にたれ、コンクリートの地面についた。


「そもそも私たちは本当に罪人なのでしょうか? 私たちのした裏切りは本当に罪だったのでしょうか?」

 読んでくださってありがとうございました。


これからもがんばりますので見捨てないでくださったら



うれしいです!

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