1 Down Down Down
トラネルはとにかく走った。もはや人間ではない身で「人間として生きたい」と必死になって走った。
美しい透明にも近い白髪はすっかり汚れ黒くなり、洋服もところどころ敗れみすぼらしい姿となっていた。
手足は自らの血液で赤く染まっているのに、トラネルは無傷だった。だが、何日もろくに食べ物を口にできず、眠らず走り続けていたトラネルの体はボロボロだった。力もろくに入らなかった。
「逃げ切れるはずがない」
そうトラネルが強く感じたとき、長いこと動き続けていた足は静かに止まった。その途端に立っていることすらできなくなり、冷たいコンクリートに膝をついた。
トラネルの涙を雨は全て隠してくれた。しかし雨さえもトラネルを嫌っているのだろうか。その雨は涙を隠すには多く、そして強すぎた。
トラネルはすでにたくさんの黒服の男たちに囲まれていたが決して顔を上げなかった。
力が入らないせいか、雨で衣服が重たいせいか、たまりにたまった疲労のせいか……それともトラネルに動く気がないせいか……押さえつけられても、腕を拘束されても、トラネルは動かなかった。
トラネルの第三の人生の始まりだった。
始まりました。
連載小説。
暗めのお話となりますが、ゆっくりとしていってください。
よろしくおねがいしますっ(`∀´ゞ
きおるでした