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あの日の約束

作者: 桐谷ゆう
掲載日:2026/01/31

高校1年生

私には仲のいい友達がいた。


当時、私には彼氏がいてそれを面白がる視線とか無理に干渉する言葉とかうっとうしくてしんどかった。


彼女は違った。周りに興味がないのか気を使っているのかなんなのか、何も聞かない。私が彼氏の話をしても当たり障りのない質問を返して終わり。深くは聞いてこない。私にとってはすごく居心地が良かった。


彼女は恋愛とかメイクとか特に周りが敏感なものに興味がなかった。


彼女のくっきり入った二重ライン、淡い瞳、ぷっくり膨れた涙袋、よく通った鼻筋、興味も関心も何もかも私とは違った。


それが面白くも、つまらなくも、羨ましくもあった。


彼女に興味がなくとも、彼女に興味を持つ人はいる。

噂になってはいつも嫌な顔して冷たく返してたら終わった。と、少し傷ついた目をしながら言う。傷つけているのは彼女の方なのに。


思わせぶりはしたくないと。少しやりすぎな気もするが、いつも相手を思って断れない私は見習うべきなのだろう。


友達との付き合い方に関しては全くの逆で、思ったことを口にしてしまう私は友達が少ない方だろう。Yesマンの彼女の周りにはいつも人がいる。


彼女は興味のない話題でも、興味のあるように魅せるのが得意だ。程よい質問をして深くは聞かない。そして、彼女はいやを言わない。どんな場所にも着いていく。正反対な私たちが今もこうして一緒にいるのは彼女のそれがあるから。


「リップ1本だけでも持ってた方がいいんじゃない?」


「分かんないんだよね、何が似合うかとか」


メイクの知識は人並み以上には自信があった。


「私が選んであげようか?」


私の提案に彼女は目見て答える。


「好きな人が出来たら選んでよ。」


「何年後の話?」


笑って答える。私はわかっている きっと彼女は私の提案を断っている。大丈夫、必要ない。と、いやを言えない彼女の悪い癖。


高校3年生

受験勉強とか残りの高校生活とか慌ただしく日々を過ごしているといつの間にか卒業の日になった。私との約束に彼女は快く答えてくれる。


「卒業しても、ずっと仲良くしようね。」


「もちろん」


数日後この約束はすぐ彼女の手によって破られる。


「私、横浜の大学受かった。」


え。知らされてない。彼女は元々自分のことを話さない。詮索されるのも少し嫌がる。だから私は彼女がどこの大学を受けるとか、県外の大学に行くとか、何も知らない。彼女は何も言わない。私はただ漠然と高校を卒業しても定期的に会ってこういう関係がダラダラ続くものだと思っていた。


彼女は横浜に旅立った。


5年後のある日

少し大きいリュクを背負った彼女が玄関に立っている。綺麗にメイクされた目、鼻、昔よりずっと綺麗になったように思う。その綺麗な顔に不釣り合いな唇が動いた。


「買いに行こ。リップ、好きな人出来た。」


久しぶり、とか 急にどうした、とか なんでここが分かったの?とか好きな人ってだれ?とか言いたいことは山ほどある。あの彼女をここまで変えた人物が気になりすぎる。でも、彼女にとってその場しのぎでしかないはずの約束を覚えてくれていたことが何よりうれしくて、久しぶりの再会とかどうでも良くて、口が動いてた。


「行こうか。」

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