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047-2

 街中では、庶民も貴族も同じ道を歩く。

 時に道を譲り合う場面に出くわすこともあるが、その場合、身分の低い方が譲るのが礼儀とされている。


 庶民同志なら適当に譲り合って終わりだが、貴族が関わると話がややこしい。

 貴族同志でも爵位によって明確に身分差が存在する。

 かといって首から「男爵」だの「侯爵」だのと札を下げているわけではないので、ある程度お互いの服装を見て判断することが多い。


 そのため、身分に合わない質素な服を着ていると、結局相手に迷惑を掛けることにもなりかねないのだ。


「でも我が家は貧乏なので、高価な服は用意できないんです」


 ヘザーが眼鏡の縁を動かして位置を調整すると、レンズがきらりと光る。


「じゃあ、わたくしの服を幾つか、お譲りしましょうか?」


 悪気なくアデレイドが割り込んだ。

 ヘザーは、じ……っとアデレイドのドレスを見る。


「いつもこんな感じの服ですか?」


「はい、だいたいこんな感じです」


 その日のアデレイドの服装は、派手なピンクの生地にたっぷりのフリルと、たっぷりのレースが付いており、首回りには共布でつくられた造花とリボンが、これでもかと並んでいる。


「ご厚意はありがたいですが、お断りします」


「がーん」


 先ほどまでヘザーの服にケチをつけていたアーネストも、気まずそうに頷いた。


「うん……ないな」


「がーんがーん」


「アデレイド様、悪く思わないでください。わたくしは赤毛なので、ピンクの服は似合わないのです」


「あ、それもそうね」


 赤い髪にピンク色の服は似合わない、確かに一般的に言われていることだ。

 アデレイドはそれで納得した……ように見えたのだが諦めていなかったようである。


「では、赤いドレスを差し上げましょう! 赤いバラの花模様で、胸元には大きいバラのコサージュと、スカートには大きいリボンがいくつも付いた、素敵なドレスです!」

「結構です」


「がーん」


 食い気味に断られて、再び傷つくアデレイドだ。


「アデレイド。どんなに素敵なドレスでも、人には似あう似合わないがあると思いますよ。アデレイドにはお花やリボンがついたドレスが似合うし、ヘザーさんにもヘザーさんに似合うドレスがあるはずですわ」


 後ろからメリーローズが(たしな)めると、今度こそアデレイドは納得した。

 無表情に見えるはずのヘザーが、ホッとしているのがわかる。


 その様子を見て、メリーローズに感心するアルフレッドとメルヴィンだったが、シルヴィアはヘザーに感心していた。


(貧乏だというのだから、ドレスをもらうだけもらって、売り払うということもできるのに、自分が着ないものは断るということは、ヘザーは誠実な人間なのだろうな)

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