042-3
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そしてランドルフ先生もまた、アルフレッド兄様とは違う形で僕を慰めてくれた。
「体を動かしましょう、王子。体を動かし、鍛えるのです。自らの努力で力を得れば、魔法の力がなくても、自分に自信を持つことができます」
そう言って剣の稽古に一層精を出してくれたのだ。
剣の振るい方だけではない。
そのために体をどう鍛えればいいのかも、教えてくれた。
おかげで僕は次第に、魔法への興味が薄れていったのだ。
全て上手くいっていた。
……あの時までは。
勉強をし、剣の鍛錬を積んでいても、僕はやっぱりやんちゃ盛りの子供だった。
ある時、王宮の庭にある大きな木に登ってみたくなった。
あの木の上から見渡したら、どんな景色が見えるのだろう。
そんな、子供らしい単純な考えからだ。
どんどん高く登っていくと、下からメイドたちの声が聞こえた。
「王子様、お止めください!」
「王子様、危ないです!」
ってね。
そう言われて、急に自分がどれだけ高くまで登ってきたのかに気がついた。
ただ登っていたときは平気だったのに、気がついてしまった途端、足が震えだした。
足が竦んだ僕は、そこから登ることも降りることも、できなくなる。
「怖い……怖い……」
木にしがみついて、泣きだした僕を助けにきてくれたのが、ランドルフ先生だった。
「フェリクス、下を見るな」
そう言って、僕がいるところまでよじ登ってくる。
先生が来てくれた。もう、大丈夫だ。
安心から、一瞬気が緩んだのかも知れない。
しがみついていたはずの僕の腕が、木から離れてしまったのだ。
「きゃああああ!」
悲鳴を上げて落ちる僕を受け止めるため、途中まで登ってきていたにも関わらず、ランドルフ先生は木からダイブした。
先生は僕を腕の中で守り、自分が下敷きになるように受け身の体制を取って、僕が落下の際に受けるだろう衝撃を、なるべく小さくしようとしてくれたのだ。
実際、地面に着いたとき、僕は何のダメージも受けなかった。
ただし、先生も同様だった。
目撃したメイドの話によると、空中で一度落下が止まり、そこから僕たちはゆっくりと地面に降り立ったのだそうだ。
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