表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/114

005 公爵令嬢、メイドに怪しまれる

 アルフレッドのお見舞い以来、メリーローズはシルヴィアの視線が痛い。


(怪しまれてる……絶対、怪しまれてる……)


 朝、自分を起こしに来たときのシルヴィアの目つき。

 夜寝る前に、寝間着を用意してくれるときの目つき。


(痛い……。シルヴィアって無駄に優秀だから、私に何かが起きたことに気づいているに違いないわ! 下手すると、私が異世界からの転生者であることも、バレているかも!)


 異世界転生の物語があふれている現代日本ならいざ知らず、シルヴィアがどれだけ優秀だったとしても、メリーローズが日本で生きていた記憶を持つ転生者だなんてことは、つゆほども思ってはいないだろう。


 しかし一度隠し事をしてしまったメリーローズは、それがバレやしないかと冷や冷やのしどおしだった。


(これはどこかでゆっくり、対策を考えないと……)


 なるべく誰もいない環境で、メリーローズとして今後の身の振り方を考えなければならない。それも「前世の記憶が蘇った」などという七面倒くさい状況に陥っているとは、誰にも気づかれないうちに。


「あーあ。なんで前世なんて思い出しちゃったんだろうなー」


 何の気なしに呟いたときだった。

 すぐ真後ろから人の声がする。


「何を思い出したのですか?」


 シルヴィアだった。

 よりによって、一番聞かれたくない相手に聞かれてしまった。


「あ……え、えっと……」


「わたくしの聞き間違いでなければ『ゼンセなんて思い出しちゃった』とかなんとか」


「……ひえっ」


 やってしまった、万事休すだ、と眩暈を起こしかけたその次の瞬間である。


「お嬢様、その『ゼンセ』というものは何を指すのでしょうか? 場所? 人? それともそういう名前の儀式か何かがございましたでしょうか?」


 それを聞いて、やっとこの世界に「前世」という言葉がなかったことにメリーローズは気がつく。

 しかしそれでホッとしたのも束の間。


「わたくしの記憶にないということは、わたくしがお嬢さまのメイドとしてお仕えする前のことでございましょうが……はて、就任前に渡された資料の中にも『ゼンセ』という言葉は入っていなかったかと存じます。お嬢様、どうかそのゼンセとやらについて、ご説明願えますでしょうか」


 会ってからこの方数年分の出来事とか、就任前に渡された資料とか、すべて覚えているというのなら、途方もない記憶力の持ち主である。


(なな、何こいつ。もしかして超絶スーパー記憶力の持ち主か何か?)


 そんなに優秀なキャラなら、ゲームの中でもなにか特別な設定なんかがあったのではないか?

 そう考えたものの、まったく思い出すことができない。


(それならそうと、設定資料集とか出しておいてくれたらよかったのに!)


 そうは言うが、もしそんな資料集があったとして、アルフレッドとそのダーリンたちと関わりの薄い脇オブ脇の女性キャラの設定など、生前の菜摘がちゃんと読み込んでいたかどうか、(はなは)だ疑問である。


(この家の場合、両親も兄もメリーローズ溺愛でデロデロに甘いから、多少前と変わっていても、ごまかせそう)


 となれば、やはり一番警戒すべきはシルヴィアである。


 とりあえず、菜摘の記憶を宿した今のメリーローズにとって、最初の難関はどうやってシルヴィアの目をごまかすか、であった。


(よし! さっそく作戦会議よ! ……って誰と? あ、私ひとりか。えへ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ