表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/178

025 公爵令嬢、油断しかける

「ではまた、ごきげんよう」


 ミュリエルを前にアワアワと唇を震わせるメリーローズを制し、シルヴィアが挨拶をする。


「ええ、ではまた」


 ミュリエルは愛らしい笑顔で答え、ヘザーと二人教室を後にした。



「メリーローズ様、どうなさったんですかー?」


 ランチタイムに、口を尖らせたアデレイドに質問される。


「あんな平民なんて、親切にし過ぎない方がいいですわよ?」


 彼女にしてみれば、崇拝するメリーローズが自分以外の学生に色々と話しかけるのが、おもしろくないようだ。

 とはいえ、身分差を笠に着た言い方は、あまりよろしくない。


「アデレイド。『ノブレス・オブリージュ』ですわよ」


 言ってしまってから、メリーローズはその言葉はこの世界にあるものだろうかと気になったが、シルヴィアが目で頷いてきたので、大丈夫らしい。

 しかし、その言葉が存在していても、アデレイドが知っているかどうかは、また別の話ようだ。


「のぶ……?」


「つまり、えーとね」


「『高貴なものは、義務を負う』という意味だよ、アデレイド嬢」


 いつの間にか、後ろからメルヴィンが来ていた。


「高貴だと義務があるんですかー? それだけだと、よくわかりません」


「身分や権力、財産などを持つ者には、社会的責任が伴う、ということさ」


 アルフレッドもやってきた。


「……わかりました! メリーローズ様がミュリエルさんに話しかけるのは、その『のぶ』なんですね」


 メリーローズだけでなく、メルヴィンとアルフレッドにも構われて、アデレイドが嬉しそうに笑った。


 一方、メリーローズとシルヴィアの二人には緊張感が走る。


(ミュリエルと接触したお兄様に、何か変化はあるかしら? フラグが立った様子は……)


 じっと見つめる妹の視線に気づいたメルヴィンが、不思議そうな顔をする。


「どうしたんだい? 俺の顔をそんなに見て」


「え? い、いいえ」


 メルヴィンの笑顔は、いつもと変わらないように見える。

 では、アルフレッドはどうだろうか?


 今度は正面に座ったアルフレッドを、じーっ……と見つめる。

 メリーローズの視線に気づいたアルフレッドが、ほんのり頬を赤らめてはにかんだ。


「ど、どうしたんだい? 僕の顔に、何かついてる?」


(ああ、恥じらうアルたんは、なんて愛らしいのだろう。まあ恥じらっていなくても可愛いけど)


 ウットリ見惚れてしまい、つい本音が漏れてしまう。


「いえ、アルフレッド様は、なんて美しいのかしら、と思って」


「ええっ? う、美しい? 僕が?」


 顔を真っ赤にして照れるアルフレッドを見たシルヴィアは、(よし、アルフレッド殿下も大丈夫)と判断した。


 確かゲームでは、ミュリエルとの最初の出会いでフラグが立った後、急激にメリーローズに対する態度が冷たくなったと聞いている。

 しかし今の表情にその兆候は見られない。


「どうしたんだい? メリー。ずいぶん今日は積極的だね」


「積極……的?」


 まだ「アルたん愛」に気をとられているメリーローズを、シルヴィアがフォローする。


「きっと、アルフレッド様が女子学生に人気がおありで、他のご令嬢に取られたらいけないと、思われたのではありませんか?」


 ここまで言っても、まだウフウフと見惚れているメリーローズを、肘で突いた。


「あ、そ、そうね。アルフレッド様を取られたくありませんわ」


 オウム返ししただけのメリーローズの言葉は、それでもアルフレッドの胸を直撃した。


「と、取られなくないって。……もしかしたら、やきもちをやいてくれているのかい?」


 顔を真っ赤にしながら照れるアルフレッドと、そんな彼をニヤニヤと見つめるメルヴィン。


「大丈夫だよ。僕の視界に入る女性は、メリーローズただ一人だよ」


 恥ずかしそうにメリーローズへの想いを告白するアルフレッドの言葉だったが、メリーローズの中では好きなように変換された。


(視界に入る女性はわたくし。つまり、単に見るだけー。そして心に入り込む男性は……。ぶふふ、その次に入れる名前は誰にしようかしら。お兄様? フィルバート? アーネスト? それともそれとも……)


 妄想で顔がだらしなく歪みかけるメリーローズに気づき、シルヴィアが再度肘打ちを食らわせて、現実に引き戻した。


 その後は、ランチの味や授業の内容といった、当たり障りのない内容の会話をし、それぞれの午後の授業に向かう。


 とりあえず、アルフレッドとメルヴィンに関しては、ミュリエルと出会ったことによる悪い変化は見られない。

 そのことを確認できただけで、御の字だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ