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065 公爵令嬢、楽しくメイドを絶望させる

 シルヴィアのアルフレッドへの「お願い」は、こうして聞き入れられることになった。


 その計画に賛同したメルヴィンによって、アルフレッドとメリーローズが二人きりになる機会を多くとれるよう、約束も取りつけた。

 あとはアルフレッドが実行に移すだけである。


 シルヴィアから見てメリーローズは、恋愛経験が極端に少ないと感じていた。

 幼い頃から王子と婚約していて、箱入り娘の現世ならまだしも、前世のナツミもまた異性との接触がほぼなかったように感じる。


(これはかなりなショック療法となるでしょう。さて、上手くいってくれれば良いが……)


 どちらにしろ、メリーローズの興味がアルフレッドとの恋愛に移ってくれれば、BLのことを忘れてくれるに違いない。


(この先、お嬢様のBL小説の続きを、読むことができなくなるかも知れない。それは少しばかり……いや、かなり……いやいや! ほんの少ーしだけ残念だが、これもメリーローズ様のため、ランズダウン家のためなのだ)


 そう自分に言い聞かせるシルヴィアであった。


 * * *


「メリーローズ、この近くに小さい湖があるんだ。ちょっと散歩に行ってみないかい?」


 早速アルフレッドが行動を起こした。

 メルヴィンから教わったお薦めのデートコースへ、メリーローズを誘う。


「まあ、今日初めて来たばかりなのに、よくご存じですのね」


「えっ、ま、まあね」



「あのバカ」


 ランチの後のお茶を楽しんでいる二人のテーブルを、陰からこっそり観察しているメルヴィンが呟いた。


「でも、とりあえずデートのお話は取りつけましたわ。ここからが肝心です」


 一緒に覗いていたシルヴィアが小声で返す。


 アルフレッドとメリーローズが外へと移動したのに合わせて、二人もまた追跡を開始した。



 別荘地と言うこともあり、目的の湖に着く前の小道も白樺の並木があったり、白いエルダーフラワーや赤いアザレアが咲いていたりと、見ているだけで楽しい景色が続いている。


 この国では「豊穣祭」は二回行う。

 秋に行われる大きな祭りと、秋まき小麦の収穫にあわせて初夏に行われるものがあり、今はその初夏の豊穣祭の休暇であった。


 初夏の花が咲き乱れる小道は、デートコースに相応しい。

 アルフレッドはアザレアの花を一つ摘み、メリーローズの髪に挿す。


「きれいだよ。花の精みたいだ」


「…………まあ」


 照れたようなアルフレッドの笑顔と、恥じらうメリーローズ。

 絵に描いたような初々しいカップルにしか見えない。


「うんうん、いい雰囲気じゃないか」


 満足そうに微笑むメルヴィンの隣で、シルヴィアは呆れていた。


(なぜ、そこで邪気を出す?)


 メルヴィンには見えないが、シルヴィアにはメリーローズの頭から噴き出る邪気が丸見えだ。


(今の会話の、どこに邪気を出す要素があったというのだ)


 実のところメリーローズは、自分が受けた愛の言葉や行為は、瞬時にアルフレッド相手になされたことに変換する妄想力の持ち主である。

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