063-2
「確かに結婚前に子供ができるようなことをされては困りますが、あまりに手を出さなすぎるのも、どうかと思います」
「ほほう?」
メルヴィンがシルヴィアの話に興味を持ちだした。
どうもこの兄は、ちょっと野次馬なところがあるようだ。
シルヴィアは眼鏡のブリッジを抑えて咳払いすると、さりげなくメルヴィンをスルーしてアルフレッドに向き直る。
「アルフレッド殿下。我が主は箱入りの清純な乙女でございますが、いささか男性に対して初心すぎるところがございます。それだけならまだしも、将来の王子妃として、少し自覚が足りないようにも思えるのです」
「それと、僕と、どう関係があるんだ?」
「大ありですわ!」
テーブルをダン! と叩いてみせると、アルフレッドの体がビクッと反応した。
「もう十七歳というのに、アルフレッド様がまったく手を出そうとしないからと、それをいいことにいつまでも子供のような気分でおられるのです」
シルヴィアの剣幕に、アルフレッドは考えてみる。
「手を出すって……どうすればいいんだ? 手を握るとか?」
「アルフレッド、小等学院の児童じゃないんだから」
さっそくメルヴィンの突っ込みを受けた。
「じゃあ、肩を抱く……とか?」
「中等学院の生徒並みですね」
「ええ? じゃあ、何をすればいいんだ?」
アルフレッドの叫びに、シルヴィアとメルヴィンが同時に答える。
「「キス、でしょう」」
「えええっ?」
意見の一致をみたシルヴィアとメルヴィンが握手をしている前で、アルフレッドが真っ赤にのぼせ上った。
「そそそ、そんなこと……してもいいんだろうか?」
「してくださいませ!」
「うーん、兄としては少々複雑な気分だが、キスくらいまでなら、まあ……」
純情にもほどがある狼狽えっぷりを見せるアルフレッドに、メルヴィンが追い討ちをかける。
「で、キスのとき、舌は入れる?」
「ししし……舌あーっ?」
今にも頭の天辺から湯気を噴き出しそうなアルフレッドを眺めながら、こっそりシルヴィアは考えていた。
(お嬢様の小説の中でのあなた方お二人は、あんなことやそんなこと、舌どころか下を入れ……おっと、これ以上は自粛、自粛)
思わず自粛してしまうくらい、過激な妄想の餌食になっているとは、まったく気づいていない男二人。
もし彼らがメリーローズの小説を読んだら、どうなってしまうことか。
(そんな事態を防ぐためにも、お嬢様にはそろそろ現実の恋に目覚めていただかなくては)
それこそが、今回のシルヴィアの計画であった。




