063 公爵令嬢のメイド、画策する
今回、予想外にメルヴィンとアルフレッドがついてきてしまったことを逆手にとり、シルヴィアは密かにある計画を立てていた。
見られてはいけない荷物をクローゼットに保管してしまうと、原稿を書く時間もなくなって暇を持て余し、ボケーっとしているメリーローズを置いて、メルヴィンとアルフレッドのいるダイニングに顔を出した。
「やあ、シルヴィア。どうしたんだい?」
メリーローズを伴わずにやってきたシルヴィアを見て、メルヴィンが声を掛ける。
「はい、実は折り入ってお話がございまして」
「大事な話? 僕もここにいて大丈夫なのかな。何なら席を外そうか?」
気を利かせようとして立ち上がりかけたアルフレッドに、「どうぞそのまま」と再度着席するよう促す。
「むしろ、わたくしがお話したいのは、アルフレッド様なのです」
「僕?」
これまでメリーローズを通してしか接点がなかったので、改めて自分に話があると聞きアルフレッドは驚いた。
「はい。メリーローズ様のご婚約者様として、お話をお聞きし、場合によってはわたくしからご提案申し上げたいと思っております」
「へえ? シルヴィアからの提案? 俺も一緒にいていいのか?」
そう確認するメルヴィンにも、シルヴィアは頷いた。
「はい、ぜひご同席して、お兄君としてご意見いただければと思います」
シルヴィアは、二人の目を順番に見た後、意を決したようにアルフレッドに質問した。
「単刀直入にお聞きします。お嬢様とはどこまでいっておられますか?」
「どこまで……って? 今この別荘に来ているのが、一番の遠出だけど……」
「アルフレッド、違うよ。場所の話じゃない」
呆れたようにメルヴィンが口をはさんだ。
「二人の仲がどのくらい進展しているかって、そう聞きたいんだよね? シルヴィア」
「メルヴィン様、ご明察にございます」
シルヴィアはメルヴィンに落ち着いて礼を述べたが、アルフレッドが慌てだす。
「ふ、二人の仲……?」
そんなアルフレッドの表情を見て、メルヴィンがニヤーリと人の悪い笑みを浮かべた。
「俺も聞きたいねえ。おい、アルフレッド。メリーとはどこまでいっているんだ?」
「ど、どこまででいっているも何も……」
「ズバリ、手を握られたこともないのではございませんか?」
メルヴィンに話をかき回されないうちにと、シルヴィアが切り込んだ。
「た、確かに、手を握ったことはないが、彼女を抱いたことならあるぞ!」
「ええっ! だっ……抱い……っ」
「おい、いつのまに、そんなことを?」
「いつの間にっていうか……ほら、いつかの庭でのお茶会で、魔物が出たって騒ぎになっただろう? あのときだよ」
アルフレッドの爆弾発言に、立ち上がって焦りを見せていたメルヴィンは安堵して椅子に座りなおした。
「なんだ、驚いた。……あのなあ、アルフレッド。あれは正しく言うなら『抱き上げた』だろ? 『抱き上げて運んだ』だけ! …………ああもう、『抱いた』なんて言うからびっくりしたよ」
「え? 何か変なことを言った?」
「……アルフレッド様。一般的には『抱いた』と聞けば、夜の営みがあったのだと判断いたします」
「よっ夜っ……?」
今度はアルフレッドが慌てだす。
「し、信じてくれ、メルヴィン。僕はメリーローズにそんなことはしていないから!」
「ああ、そんなに言われなくても信じるよ。まったく君は奥手だなあ」
「ははは、すまない」
「笑い事ではございません! アルフレッド殿下」
奥手と言われて鷹揚に笑ってみせるとは、アルフレッドは男としてどこか抜けているのか、それとも器が大きいのか。
しかし、このままではシルヴィアの計画が進まないので、さくっと突っ込ませてもらうことにする。




