061-2
深夜になって、シルヴィアが放った式神たちが帰ってきた。
「ふんふん、なるほど」
コクリ、コクリと頭の部分を頷かせながら、シルヴィアに耳打ちする紙人形の姿に、メリーローズが萌えちらかす。
「いやーん、可愛い」
時々そんなメリーローズの様子に、照れたような仕草を見せるものもあり、ますます興奮が抑えられない。
一通り、五人分の報告が終わると、シルヴィアは紙人形をまとめてろうそくの火にくべようとして、メリーローズに泣いて止められた。
「やめて、ひどいわ! 用が終われば用なしとばかりに!」
「はい。紙の式神は用が終われば用はないです」
「そうじゃなくて! 用がなくなったからって、焼き殺すことないじゃない!」
叫ぶやいなや、シルヴィアの手から紙人形たちを奪い取る。
「怖かったでしょう? もう大丈夫よ」
「怖いも何も、紙の式神に命はありません。怖いという感情もありません」
「嘘よ! わたくしが可愛いって褒めたら、照れてたもん!」
「もし感情があるように見えたなら、それは見る人の心が反射されただけで……って、聞いていませんね」
シルヴィアから隠すように「おお、よしよし」と言いながら、引き出しにしまうメリーローズに、溜息をついた。
シルヴィアの横顔に、不穏なものを感じたメリーローズは、恐る恐る尋ねる。
「あの子たちの報告は、何だったの?」
質問に答えず思案顔だったシルヴィアが、意を決してメリーローズに言った。
「今すぐBL小説に関するものを処分しましょう」
「……ええっ?」
言いながら、シルヴィアはクローゼットに隠していたメリーローズの著作本やファンレターが入っている箱を引っ張り出す。
「さ、その引き出しに入っている書きかけの原稿も、出してください!」
「いやよ! 一体どうしたって言うのよ。まずは説明して」
一瞬の沈黙の後、低い――久し振りのサブウーファー声で、シルヴィアは告げた。
「BL本の存在が、この学院の学長に知られました。もうすぐ教室や寮で、一斉に所持品の検査が行われるかも知れません」
「……え」
「もしBL本や、まして書きかけの原稿などが見つかったら、お嬢様もランズダウン家も、終わりです」




