055-2
「では皆さんに紹介しよう。僕の婚約者のヘザーです」
「たった今、アーネスト先輩と婚約しました、ヘザーです」
生徒会メンバーは何を言われたのか理解が追いつかず、そのうえ現れたヘザーの大変身で二重に事態を飲み込めない。
「…………………………」
ただただ、ポカンと目と口を開いたまま、微動だにできずにいる。
「そんな黙っていないで、皆さんから何か僕たちへ祝福の言葉の一つも言って欲しいなあ」
「別にそんな、祝福するほどのことではないですよ。わたくしたちの利害が一致したというだけです」
「利害? 違うよ。僕は君を愛してしまったんだ」
「わたくしは、あなたのお金に目がくらみました」
やがて、徐々に事態を飲み込み始めたアルフレッドが、恐る恐る声をかける。
「えーっと、まず確認したいんだが、今アーネストにエスコートされて来たのは、ヘザーなんだよね?」
「はい、確かにわたくしはヘザー・アシュビーです」
ここで一同にどよめきが起こる。
「ほ、本当に、君ヘザーなの?」とフェリクス。
「いやあ、見違えたなあ」とフィルバート。
「私はヘザーの素顔を知っていたから驚きませんが、そうか、皆さんはヘザーが眼鏡を取った顔をご存じなかったのですよね」
しみじみと言うのはミュリエルだ。
「そうね、わたくしも知らなかったわ。ミュリエルが知っていたのは、やっぱり寮で同室だから?」
エルシーの問いに、ミュリエルが頷く。
「うん。寝る前には眼鏡を必ず外すでしょう? 最初にその顔を見たときは、私も驚いたわ」
「そういえば、初日の夜に何やら叫んでいたっけ。うん、思い出しました」
他人事のようなヘザーだが、ミュリエルの方は段々と興奮してきたようだ。
「そう、それで何度も『あなたは、眼鏡を取った方がすごく可愛い』って主張してきたんだけど、全然信じてくれなくて……。今日やっと皆さんにも知ってもらえて、嬉しいわ!」
「ミュリエルはそう言ってくれるけれど……」
ヘザーは眉尻をハの字に下げる。
「自分では眼鏡を取ったときの自分の顔が見えないので、皆さんにこう仰っていただいても、『もしかしたら口裏を合わせて、騙されているのでは?』という疑念を、払拭しきれずにいます」
「そんな……君は本当に、美しいよ。どうしたら信じてくれるのかい?」
ヘザーの手をとり励ますアーネストの肩を、メルヴィンが叩いた。
「それなら、いい方法があるよ」
その後、皆でそろって写真撮影スタジオを訪れた。
写真機で写した顔なら、ヘザーも見ることができるだろう、というメルヴィンの提案によるものだ。
まず全員で一枚、ヘザーとアーネストで一枚、ヘザー一人で一枚、合計三枚の写真を撮影してもらう。
できあがりまでに数日かかるので、その日はそこで一旦お開きとなり、ヘザーはドレスを着替えて眼鏡を掛け、元の姿に戻って寮に帰っていった。
元のヘザーになってもアーネストは変わらず熱い視線を彼女に送り続け、一目惚れとはいえその恋心は本物だということがわかる。
本来祝福してあげるべきところだが、メリーローズは悲しみにくれた。
更にそんなメリーローズを見たある人物から、新たな誤解が生まれる。
フラフラよぼよぼと歩く彼女の姿に、体調でも崩したかと心配したアルフレッドが、シルヴィアに何やら訴えるメリーローズの声を聞いてしまったのだ。
「ううー、まさかアーネスト様がヘザーに恋してしまうなんて」
「仕方がないことでございます。お二人を祝福しましょう」
「でも、わたくし、悲しくてそんな気分になれませんわ」
(え? どういうことだ?)
アルフレッドの脳内に衝撃が走る。




