053-4
メリーローズ、シルヴィアのみならず、店員までが大声を上げている。
(いやっ、ちょっと、待って! 眼鏡を取ると美人なんて昭和な設定、二人も出てきちゃダメでしょ! もしそんな小説があったら、読者がその場で放り投げるから!)
シルヴィアのときは、比較的容易に眼鏡を取り上げることができたので、彼女の美貌に気づくのは早かったが……。
「何なの? 魔法? なぜ急にこんなに目の大きさが変わって……」
ふと手に持っているヘザーの眼鏡が、やけに重いことに気づいた。
改めてよく見ると、レンズがものすごく分厚い。
「ヘザー。いつもこんなに分厚いレンズの眼鏡をかけているの?」
「あー、わたくし極端な近視でして、それがないとモノがぼやけて何も判別できないんです」
「……へえー」
なるほど、このレンズのせいで、本当は大きな目が胡麻粒に見えていたのかと納得した。
眼鏡を取り上げられたヘザーは、大きなグリーンの瞳を不安げに揺らめかせ、こちらを見つめてくる。
(くっ……可愛いじゃないのよう! このこのっ)
にやーりと笑ったメリーローズは、自分のメイク道具を物色した。
「見てなさい。あなたが本当は絶世の美女だと、アーネストに思い知らせてやるから」
顔立ちが派手なので、アイシャドウやチークはほどほどにする。
ルージュだけローズ系の濃いめのピンクを塗ると、花が咲いたような艶やかさになった。
「うん、いい」
「いいですね」
「お客様、素敵です」
「ええー、本当ですか? わたくしなんて、何をしてもみっともないと、両親から言われていましたのですが」
三人から褒められて尚、自分の容姿に自信なさげなヘザーの様子に、メリーローズは前世の自分が重なって見えた。
(私もよくお父さんから言われたなあ。『お前はおしゃれなんてしても、しょうがない。化粧なんて色気づくのは、やめておけ』とかさあ)
おかげで色気のない、おしゃれから縁遠い地味な女に成長したのだった。
当時の後悔を払拭するためにも、ここはひとつ、ヘザーの間違ったコンプレックスを解消しなければいけない!




