053-3
試着室の方から、案の定ヘザーの声が響いてくる。
「だから、わたくしには似合わないんですってば!」
「でも、お客様……」
メリーローズはずかずかと部屋に入り込み、声をあげた。
「ヘザー、四の五の言わず、観念してドレスを着なさ……い……」
ヘザーはドレスを着ていた。
しっかり着ていた。
サイズもピッタリで、余っている箇所もきつそうなところもない。
上半身は体のラインが出るようにぴたりとしており、メリーローズの注文通り胸元が大きく開いている。
その代わり、スカートと袖にはふんだんに布が使われており、それぞれがふんわりと膨らんでいる分、上半身のボディラインの細さが強調されていた。
胸だけはその豊かさを溢れんばかりに見せつけており、胸元からは谷間がのぞきかけていた。
ドレスと同じ生地のマントが首で留められており、前からみるとチョーカーを付けているようで、なまじ首に布がある分、開いた胸元の肌が煽情的に見えるデザインである。
「うおおおお……エロい!」
「お嬢様、はしたのうございます」
ついメリーローズも叫ばずにいられないほど、ドレスはヘザーの体にフィットしていた。
しかしドレス姿がセクシーである分、首から上のヘザーの顔とは違和感がありまくっている。
前世の世界で言うならば、バービー人形の首にクマちゃんの顔を挿げ替えたような「これじゃないだろ」感だ。
「メリーローズ様。こちらのお客様にヘアメイクも施した方がいいと申し上げましたところ……」
「要りません! 化粧したってどうせ美人じゃないし……」
「でも、お客様……」
「いいったら、いいです! ドレスだけいただきます!」
珍しく、ヘザーが強情になっていた。
しかしこのままバービーとクマの合体人形のままでいさせても、ドレスが台無しである。
ヘザーが掛けた眼鏡の奥の、点々にしか見えない小さい目も、メイクをすれば多少はマシになるかも知れない。
「ねえ、ヘザー。どうしてそんなに化粧をイヤがるの?」
極力優しげな声を出して、メリーローズが説得を始めた。
「だって、似合うはずがないんです」
「やってみなければ、わからないわよ。わたくしがしてさしあげますわ。メイク道具を貸していただけるかしら?」
「………………持っていません。似合うはずがないものを、貧乏なのにわざわざ買いません」
ヘザーが持っていないというなら、他にも手はある。
「シルヴィア、カモン!」
「さっきからいます」
皆まで言われる前に、シルヴィアがメリーローズのメイクセットを広げた。
「さ、恥ずかしがらずに、その眼鏡を取なさい」
「しかし……」
「こういういの、初めて? 大丈夫、優しくするから」
「……し、しかし~~~」
眼鏡を外したがらないヘザーの手を掴み、結構乱暴に取り上げてしまった。
(あーあ、優しくするって言ったそばから……)
しかしシルヴィアの突っ込みもそこまでだった。
「誰……?」
「誰……?」
「どなた様……?」
そこには、クリッと大きな瞳が愛らしい美少女がいたのだ。
「「「えええええーーーー!」」」




