053-2
そう、メルヴィンは自信たっぷりに講釈を垂れていたものの、まったくの見当違いで、実際はこうであった。
(アルたんは本当に可愛いから、こんなドレスを着ても似合っちゃいそうね。ぐふふ)
そうしてハンガーに掛けられたドレスのデザインを一着ずつ確認しては、アルフレッドが着ている姿を思い描いて悦に入る。
(男性が女性にドレスを贈るのは、そのドレスを脱がせたい下心があるというけれど……)
今日はまさに男性がヘザー(女性)にドレスをプレゼントしようとしているのだが、そのことは念頭から消え去っていた。
(お兄様がアルたんにドレスを贈って、嫌がるアルたんに無理やり着せて……ぐふふ、ぬふふ)
* * *
「アルフレッド、きれいだ」
「何を言ってるんだ。僕は男だぞ!」
「でも、そこらの女よりお前の方がずっと美しい……」
アルフレッドの顎を掴み、顔を上げさせる。
恥じらいに頬を染めたアルフレッドの瞳はうるみ上気した頬はバラ色に染まって、メルヴィンの言葉が嘘でないことを証明していた。
「も、もう、いいだろう。着替えてくる」
「……脱ぐのなら、俺が脱がせよう」
「何を言って……」
次の瞬間、アルフレッドの肩がメルヴィンの腕によって後ろから抱きすくめられる。
「あ……」
「じっとしてて」
耳元で囁くと、後ろからボタンを一つ、また一つとメルヴィンは外していった。
そのたびに露になるアルフレッドの背中は、雪花石膏のように白く滑らかで誘惑に満ちており、メルヴィンはつい抗えずに口づけを落とす……
* * *
(かはぁっ……! 吐血! 鼻血通り越して、吐血!)
何しろ、自身の妄想もさることながら、実物の二人がやけに距離を狭め、耳元で何やら囁き合っているのだ。
(何? 何を喋っているの? 愛の言葉? やだもう、ラブラブー!)
興奮のあまり、メリーローズはもう少しでまた「デュフフ」笑いが出そうになる。
(いけない、いけない。もう二度と、人がいる前で『魔物』を召喚するわけにはいかないわ!)
必死で魔物笑いと鼻血を我慢するメリーローズを眺めながら、半眼のシルヴィアが呟いた。
「また何か妄想している……。おかげで、高級テーラーが邪気まみれに……」
そこに奥から出てきた店員が、メリーローズに声を掛ける。
「恐れ入りますが、ちょっとこちらに来ていただけますか?」
「何か、問題でも?」
「はい、ちょっと……」
やりとりと聞きながら、シルヴィアが苦い顔になった。
(だから、言わんこっちゃない)
あんなセクシーなデザインをヘザーに着せて、似合うわけがない。
いやそれ以前に、ドレスを見た本人が着たがらなくてゴネている可能性もある。
充分予想できたはずだったのに、この事態を止められなかった自分にも責任があると考えたシルヴィアは、メリーローズの後をついて行った。




