053 公爵令嬢、驚かされる
数週間後、メリーローズの元にテーラーから手紙が届いた。
アーネストがヘザーにプレゼントするドレスが、でき上がったのだ。
「うふふ……でき上がりが楽しみですわー!」
ウキウキとステップを踏むメリーローズを横目に、シルヴィアは心配が募る。
「大丈夫なのですか? あのようなセクシーなデザインのドレスを……」
「ええー? むふふふふぅ」
完全に悪戯っ子の目つきだ。
「もしヘザーがドレスを気に入らなかったら、お嬢様が弁償するのですよ?」
「ええ! 任せてちょうだい」
というわけで、再び生徒会メンバーお揃いで出かけることになった。
本当はヘザーとアーネストだけでよかったのだが、ミュリエルとエルシーが「ヘザーのドレス姿を見たい!」と主張し、ミュリエルと一緒にいたいフィルバートが同行を表明し、メリーローズと一緒にいたいアデレイドとアルフレッド、アルフレッドとメリーローズの保護者を標榜するメルヴィン、「僕も暇だから行こうかなー」という軽いノリのフェリクスも一緒に来ることになってしまったのだった。
テーラーに着くと早速ヘザーが呼ばれて、奥の試着室に案内される。
他のメンバーは特にすることもなく、店内を見て回った。
ミュリエルやエルシー、アデレイドは、飾られている見本のドレス一つ一つを見て歓声を上げている。
女性向けのテーラーということもあり、女子は楽しそうだが、男子諸君は暇そうだ。
アルフレッドとメルヴィンも隣り合って店内の待合コーナーにあるソファに座り、暇そうに女子たちがはしゃいでいるのを眺めていた。
そのうちにメルヴィンは、メリーローズがドレスを物色しながらこちらをチラチラと見ているのに気づく。
視線の先は自分ではなく、隣のアルフレッドだ。
(ははん、これは……)
ピンときたメルヴィンは早速アルフレッドに耳打ちする。
「おい、アルフレッド。うちの妹は新しいドレスが欲しいようだぞ」
「うん、少しずつ暑くなってきてるし、夏用のドレスが欲しいのかもね」
常識的すぎる答えにメルヴィンは嘆息した。
「違う。よく見ろ。ドレスを見てはこちらを、というかお前を見ている」
「僕を? 何でだろう」
「お前にドレスをプレゼントして欲しいのさ」
「だから、何で僕なんだ?」
未だに鈍いアルフレッドに、メルヴィンが恋の指南を始めた。
「そりゃあ……父上から買ってもらうのと、君からプレゼントされるのでは、気持ちも違ってくるだろう」
「そういうものなのか?」
「そして、男が女性、それも恋人にドレスをプレゼントする意味を知っているか?」
「……いや?」
初心なアルフレッドの反応に、メルヴィンはニヤリと笑った。
「そのドレスを脱がせたい……っていうことさ」
「ぬ、脱がっ……!」
「声が大きい」
メルヴィンは小声でも聞こえるよう、アルフレッドののごく近くに顔を寄せる。
「そして、メリーローズが、君からドレスをプレゼントされたがっているということは……」
「ということは……?(ゴクリ)」
「そう! 君にドレスを脱がされたがっているということだ!」
「ぬぬぬ……脱がされ、たたたがって……?」
純情なアルフレッドの興奮は最高潮だ。
「……というのは、さすがに冗談だが」
「なんだ、冗談か」
ホッとしたようなガッカリしたような表情になるアルフレッドに、メルヴィンは再び囁く。
「そこまではいかなくとも、潜在的に君ともっと『お近づきになりたい』と思っていることは間違いない!」
メルヴィンとメリーローズ、自分の勝手な推測を自信漫々で披露するあたり、さすが血の繋がった兄妹である。




