表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

101/182

050 公爵令嬢、本屋行きを所望する

 一通り漫才を終え、湯あみをして着替えも終えた後、再び今日起きた事の中で知った疑問について、二人で相談していた。


「『奇跡のバラ』を咲かせて、女王陛下たちは何をされようとしているのでしょうね」


「うーん……。何だったのか全然思い出せないわ」


「そもそも、ミュリエル嬢が奇跡を起こすことが出来るなら、わざわざバラを咲かせなくても、直接頼めばいいのに、とも思います」


「確かに!」


「ミュリエル嬢では起こせないような、大きい奇跡なのでしょうか」


「わたくしがもっとちゃんと思い出せたらなあ。……まあでも」


「なんでしょう?」


 メリーローズの顔に塗るパックの用意をしながら、シルヴィアが聞き返す。

 パックはメリーローズが育てたバラを混ぜて、いい香りがしていた。


「ほら、ゲームとは色々設定が変わっていたりするから、思い出せたとしても、それと本当に同じとは限らないわ!」


「それはつまり、思い出せなくても自分に責任はないと、こう仰りたいので?」


「うふーん?」


 顔からバラの香りをさせた公爵令嬢は、いつものように妙な踊りをおどりだした。


(ごまかしきれていませんけど?)


 踊るメリーローズの両肩を抱き、シルヴィアはニヤリと笑う。


「変化していたら、その時はその時。まずは思い出していただきます」


「ええーっ! 無理よう。思い出そうとはしてるもーん! それでも思い出せないんだもーん!」


 漫才からコントにカテゴリーを変えた主従のドタバタは、深夜にまで及んだという。


 * * *


 「奇跡のバラ」云々はともかくとして、学園生活は順調に過ぎてゆく。


 先日、皆で大聖堂に出掛けた日に、アーネストがヘザーにドレスをプレゼントするという話は、そのアドバイスをしたメリーローズを再び巻き込んだ。


「メリーローズ嬢、申し訳ないのですが、女性のドレスを発注したことがないので、ついてきていただけないでしょうか?」


 女性の扱いに手慣れていそうなアーネストが、意外にもそう言ってモジモジとお願いをしたきたのだ。

 とりあえずドレスを作るためのサイズなどは、ヘザーからもらったそうなのだが、それだけではドレスは出来上がらない。


「そう……ですわね。デザインもどうすればいいか、わからなそうですし、言い出したわたくしが、責任をもちますわ」


 という話になったのだが、なぜかそこにアルフレッドまでついてきた。


「僕の婚約者が、気心知れた相手とはいえ、男性と二人で出かけるのはいかがかと思ってね」


「二人じゃありませんわ。シルヴィアも一緒ですわよ?」


 ニブいメリーローズはそう答えたが、シルヴィアは半眼になってそんな主人を眺めた。


(ジェラシーに決まっているじゃないですか! まったく)


 ヘザーのドレスを仕立ててもらうのは、王都でも指折りの仕立て屋(テーラー)だ。


 元々メリーローズ行きつけの店であることと、例の話が出てすぐに予約を取ったので、比較的早く受けつけてもらえたが、普段ならそれだけでも二、三か月は待たされる。


 それだけ、腕のいい店である(あかし)でもあった。


「ヘザーのサイズ表をいただけるかしら?」


 するとアーネストは封筒に入ったメモ用紙を渡してきた。

 今日は用事があるというヘザーは、自分の体のサイズを紙に書いてアーネストに渡していたのだが、アーネストの方でそれを見てはいけないと考え、封筒に入れておいたということだった。


「ヘザー嬢とはいえ、男の自分が女性のサイズを見るわけにはいかないのでね」


「まあ、さすが紳士でいらっしゃるのね」


 にっこりと微笑みながらも、少しひっかかる。


(ヘザー嬢、()()()()……ねえ)


 子爵家の次男であるアーネストから見て、伯爵家令嬢のヘザーは身分が上だとは認めたが、女性としてはかなり見くびっているということがわかる言葉だ。


 受け流しつつ、店員と一緒にそのサイズ表を見たとき、意外な印象を受けた。


(あの子、子供体型かと思っていたんだけど)


 全体的にはほっそりしているのだが、バストサイズが思った以上に大きい。


「けっこうグラマーな方のようですね」


 普段から女性のサイズを見慣れている店員もそう頷く。


 いつものヘザーの姿を思い浮かべて、なぜ印象が違うのかがなんとなくわかった。

 学院の制服は、彼女に少し大きめだったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ