重力増加
「では次、根山と佐々木、前へ。」
女子二人が呼ばれた。クラスの男女は、男子は5人。女子は2人で分かれている。
《根山揺藍》【異能_誤差作成】
色々なものや人など様々なものをずらすことが出来る。
《佐々木梨香》【異能_重量操作】
触れたものを重くしたり軽くしたり出来る。任意で操作量を変更できるが、基本MAXで重くしたり軽くしたりしている。
(あ、試験の時の人だ。)
創人は心の中で言った。糸田先生の合図と共に、二人は交戦を開始した。初手、先に仕掛けたのは佐々木だった。体勢を低くしながら根山の間合に入る。その勢いのまま、根山の腰あたりに触れた。すると、根山は突然跪いた。
「体が…重い…。」
根山は言った。
入学試験時には軽くすることしかできなかったが、今は、重くすることも可能になっている。おそらくこの春休みに練習でもしたのだろう。膝をついて立てない根山を見て、誰もが根山の負けを確信した。皆がギブアップを進めようと口を開いた時、予想外のことが起こった。
「え…消えた!?」
佐々木の目の前から根山が消えていた。ふと後ろから視線を感じ、振り返ろうとしたとき、背中に激痛が走った。何が起きたか理解できないまま流れるように絞技を決めてきたので負けを認めざるを得なかった。
「ギブアップで。」
その声を聞き、糸田先生は言った。
「佐々木の降伏により、勝者根山。」
「次、鬼音、雷鳴、前へ。」
2人は糸田先生の元へ向かって行った。前に立ち、対面した2人は、会話を始めた。
「君か。異能を使わずに試験を突破したのは。」
聞いたのは鬼音の方だった。
「いや。異能は使ったよ。見えなかっただけで。」
「なるほどね。仲間かと思ったのに。」
《鬼音武蔵》【異能_無し】
雄藍高校の歴史上初となる異能を持たない生徒。異能を持たない代わりにあらゆる異能への耐性が常人より高く、身体能力も常人の域を超えている。
《雷鳴晶牙》【異能_不明】
入学試験の時に創人の前でおばあさんを助けた青年。異能はまだ明かされていない。
先に仕掛けたのは鬼音だった。手にはナタのようなものを所持しているが、負傷者が出ないようにするためか、刃の部分が布のようなもので覆われている。体勢を低くしながら雷鳴の間合に入った。そのまま右手に構えた刀で切り掛かった。完璧としか言いようのないほど正確で抜け目のない攻撃だったが、その攻撃は見えない壁に阻まれた。
「なっ…」
見えない壁に攻撃が阻まれ、一瞬戸惑った隙に雷鳴は回し蹴りを浴びせた。が、鬼音はとっさに腕で回し蹴りを防いでいた。
「凄い…」
創人は心の底から思った。
(2人の動作に一切の迷いがなく、無駄がない。多分この2人は、この7人の中でトップだろう。)
などと思いながら2人の戦いを見守った。
(見えない壁。厄介だ。が、突破方法は必ずある。)
鬼音は試しに、手に持った刀を雷鳴に投げてみた。すると、金属のようなものにあたった音がして、投げた刀は雷鳴の前で勢いを失いその場に落ちた。
「今ので確信したよ。僕は、君に勝てる。」
「異能も持たず、攻撃も当たらないのにか?」
「ああ。まぁな。」
鬼音は勢いよく雷鳴に向かって走り出した。向かう途中、スライディングで距離を詰めながら刀を回収し、起き上がると同時に攻撃を始めた。勢いよく振り翳した鬼音の刀は、以前、見えない壁に防がれる。
「何度やっても無駄だ。」
すると、鬼音は雷鳴の周りを回り始めた。周りを回りながら攻撃を開始する。誰もが無理だと言ったが、鬼音は諦めなかった。
「このまま続けてもいいが、お前に勝ち目はない。もう決めさせてもらうぞ。」
鬼音の攻撃が見えない壁に弾かれた一瞬の隙に、蹴り技を叩き込もうとした。が、
「解いたな!防御を!」
鬼音は雷鳴が見えない壁を張るよりも早く右足で蹴りを入れた。
「ぐっ…」
ふらついた雷鳴に、鬼音は追撃で蹴りを入れた。さらにもう一発入れようとしたが、相手が降参したので鬼音は足を下ろした。
「降参だ。」
「勝者、鬼音。」
僕も鬼音武蔵のことは前から知っていた。異能を持たず、ヒーローの名家に生まれた少年。彼は異能自体は無いものの、異能持ちと互角以上に戦える身体能力を持っている。初めは冗談か何かだと思っていた。が、今、目の前にして分かった。彼は、とんでもなく強い。異能を持っていたら最強のヒーローになれていたのでは無いだろうか。『ミスターパーフェクト』のように。
《ミスターパーフェクト》【異能_破壊・再生】
ヒーロー人口が世界的に見てだいぶ乏しい日本が、犯罪を少なく抑えられている理由に直結するほどの影響力を持つヒーロー。ヒーローの支持ランキングでは、堂々の一位を記録している。創人やその他雄藍生徒の中にも彼に憧れ、ヒーローを志したものがいる。もちろん人気があるだけではなく、強さもヒーロー界で一位に近い。
「次、共川、前へ。」
共川は前に上がった。
「お前は相手がいないから俺とだ。いいな。」
「誰でもいいですよ。結果は決まってますから。」
《共川人吉》【異能_共感】
共感した相手の異能を使うことが出来る。共感具合によって、より本人に近い異能を使うことが出来る。ただし、共感しても三日で使えなくなる。
「それでは、初め。」
「降参します。」
共川が言った。
「共感しないと僕の異能何も出来ないんで。」
「まぁ、それもそうだな。」
こうして、糸田先生VS共川人吉の試合は糸田先生の勝利となった。
一通りお互いの異能を理解した。やはり聞くよりは見たり戦ったりした方が分かりやすかったし、理解しやすかった。初めは疑問があったが、最終的には糸田先生のやり方は正しかったと思う創人たちだった。
次回「終義の異能・再義の異能」




