乱用
「これは…間違いない。異能の乱用が原因だ」
青年は言った。異能は元々人類の領域を超えた能力。そう何度も使っていいものではない。
以前、佐々木さんは起き上がらない。意識は薄らだがある。こうなったらやるしかない。
「あの…佐々木さんをお願いします。」
創人は青年にそう言い、少しづつ迫るヴィランを見た。数は30ほどだろう。さっき挑んでわかったことだが、俺の攻撃じゃヴィランには傷一つつけられない。だが、創人は鉄パイプを作り出し、ヴィランに向けて走った。
「佐々木さんとはこの人のことだろうか。」
自分を助けてくれた少女を見る。
「それにしても…あのまま行ったら負ける。確実に。試験だから殺されないとは思うけど.」
少し考え込んだ。すると、佐々木さんが目を覚ました。こうなったらやるしかない。
「意識がまだはっきりとしていないことは分かっています。その上で、この質問に答えてください。どうしてあなたは、自分を危険に晒してまで助けてくれたんですか?」
「…」
佐々木さんは朦朧とする意識の中答えた。
「あなたが助けを求めてたからかな…。」
「……きみ、良い人だね。共感できるよ。」
満足した回答が聞けてよかった。
「なるほど。異能は【重量操作】か。強そうだね。」
青年は上着を脱いで簡易的な枕を作り、佐々木さんの頭に当てて寝かした。
「大丈夫。3人で試験を突破するよ。」
青年は創人と戦うヴィランを見た。数が多いがなんとかなるだろう。
青年は右手で自身の体に触れた。そして軽く地面を蹴った。すると、彼の体は空高く浮き上がった。この異能は間違いなく、佐々木さんの所有する異能だった。
その光景を見ると同時に佐々木さんは意識を失った。
「どうします?流石にやりすぎって言われますよ。」
「ああ。分かっている。だが、彼らは大丈夫だ。現段階では彼らが1番強い。」
彼らとは、創人たち3人のことを指している。
「他の受験生を差し置いてですか?」
「ああ。あいつらはおそらく初対面だ。だが、ここまでの連携を可能にしている。これが何を意味するかわかるか?」
「えーっと…他人を信頼できる力を持っている?」
「まぁ、それもあるだろうが、1番は自分の異能への理解だ。彼らは自らへの能力の理解が高い。単純な戦いなら彼らはヴィランに勝てないだろう。が、自らの理解の高さゆえに、多様な戦術と連携が可能になっている。」
「なるほど。でも、彼らの戦い方って…」
言いかけたが言葉が止まった。今自分が言おうとしている言葉は上司を否定するかもしれないから。だが、帰ってきた言葉は意外なものだった。
「気づいたか。彼らの才能に。」
「と、言うと?」
「彼らの力は一般人よりは強いが、ただ一般人より強いだけでヒーローと呼ぶにはまだ遠い。」
「…」
モニター越しに試験を見守るのは、立場的に上司に当たる方が「糸田操児。」ヒーロー会でもかなり名の知れたヒーローで、今回はヒーローの育成に、現場に近いヒーローを教師として雇いたいと言う学校側の主張で、今回は雇われた。
「彼らはまだ戦い方を知らない。独学で技を磨き、ここまで来た。彼らにはヒーローの素質がある。」
これが操児の言った才能なのだろう。
「…。」
「そういえば操児さん、弍替操児と名前が被ってますね。」
「…ああ、そうだな。」
あの人はどうなっただろう。佐々木さんは無事に避難できただろうか。そう言った疑問が創人の頭をよぎる。だが、一瞬の隙が致命傷になりかねない。
創人は集中し直し、敵に向かって行った。
「うわぁ、」
上から声がした。声の高さ的にあの人だろう。逃げれなかったのだろうか。
あの人は綿のようにふわふわと降りてきた。
「ごめん、お待たせ。あとはまかして。」
そう言うと、彼はこちらを見て微笑んだ。
次回「ゴール」




