表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

3

ちゃぷん。

湯の波がゆるやかに揺れる。


琴と海斗は、肩までしっかりと湯船に浸かっていた。

ちょっとだけ背筋を伸ばして、ふぅ、と息を吐くと、自然と肩の力が抜けていく。


「……これ、なんかすっげーいいお湯じゃない?」


琴がぽつりとつぶやいた。

うっすらと湯気が立ちこめる中、つま先で水面をちょいと弾きながら、満足そうに目を細める。


「なんか……トロってしててさ。ヌルつくって意味じゃなくて、肌に絡むっていうか……しっとりすんの。めっちゃ良さそう。」


「……あー、わかるかも。」


海斗も頷きながら、手をお湯に沈めて、軽くこすり合わせてみる。


「俺、昔温泉旅行行ったことあるけど、それより質いい気がする。あの時は“美肌の湯”って言われてたけど、こっちのが肌溶けそうだもん。」


「“肌溶けそう”ってこえーな。」


「例えの話だよ。」


琴はくつくつ笑いながら、両手をぶんぶん湯の中で振る。

その動きに合わせて、波がふわんふわんと立って海斗の方まで届く。


「でもさー、なんかこー……体の芯からほぐれてく感じ? こんな広い風呂で、お湯も極上。……これはもう、最高ってやつじゃん?」


「閉じ込められてる状況で“最高”って言い切れるのすげえな、お前。」


「だってさ、せっかくなら楽しまなきゃ損でしょ? この風呂、どっから湧いてんのか知らないけど、完全に上位温泉。……もう、住みたい。」


「それはさすがに極端。」


「布団持ってきたら、ここで暮らせる気がする。3日くらいなら余裕。」


「ふやけるわ。」


「ふやけてもいい。ていうか、ふやけさせろ。私の全身、ふやけきった果てに未知の癒しゾーンへ突入するかもしれん……!」


「風呂に宗教的意味を見出すな。」


くっくっくと琴が笑いながら、また肩まで潜ってご満悦の表情。


「なぁ、カイト」


「ん?」


「これって……マジでただ風呂に入るだけで出られる部屋なんかな?」


「いや、モニターにそう書いてあったけど……逆にそれ以外で出られそうなとこ、どこにもねぇしなぁ」


「だよねぇ。……となると、まぁ、もうちょいゆっくりしてもいいかな〜って感じ」


琴がそう言って、湯にあごまで沈みこむ。

海斗はその姿を横目で見ながら、ふっと鼻で笑った。


「お前が落ち着いてると、逆に俺が焦る気がしてくるな」


「私、風呂好きだからな〜。しかも広いしさ、これならお前とでも許せる。」


「“お前とでも”ってなんだよ。」


「“お前だから”はちょっと恥ずかしいからな。」


海斗が苦笑いを浮かべ、琴はドヤ顔のまましれっと湯に潜る。

そんなふうに、のぼせるまでふたりはぬるめの湯に溶けていった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ