ゆいこのトライアングルレッスンU2〜ひろしの第2ボタンの行方〜
「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」の人気企画「ゆいこのトライアングルレッスン」にて、採用していただいた作品です。
詳しくは、第333回 2025/2/14放送分をお聞きください。
https://youtu.be/0vfQqmNZBxc?si=_yIB55g7XdRpgI38
下野さんと巽さんに息を吹き込んでいただき、感激でした。
そもそも「ゆいこのトライアングルレッスン」とは?という方は、
ゆいこのトライアングルレッスン〜軌跡〜
https://ncode.syosetu.com/n1009ic/
をご一読いただくと、より楽しめると思います。
卒業式、呼び出された人気のない体育館裏。目の前には隣のクラスの女子が2人いる。
「早く言いなって。」
「でも…。」
「ひろし君、困ってるから。」
この状況において、次になんと言われるかがわからないほど鈍くはない。
「あ、あの、ひろし君。第2ボタンください…。」
「あーごめん。そういうの受け付けてないんだ。そういうわけだから。」
そう口早に言って、その場を後にする。
昇降口に向かう途中、校舎を見上げると教室の窓から覗くゆいこがいた。目線をたどると、数人の女子に囲まれるたくみがいた。
そういうことか…。
たくみのその状況をゆいこの視界からそらしたくて、
「ゆいこ!」
と声をかける。
「あっひろしー。どこにいたの?二人とも戻ってこないから、待ちくたびれちゃったよ。」
「今、行く。」
教室に辿り着くと、ゆいこはやはり外を眺めていた。
「ゆいこ、待たせてゴメン。」
ゆいこが振り返って、俺の胸元に視線を落とす。
「ひろしは、第2ボタン、誰にもあげてないんだね。」
「あぁ。」
まさか、さっき断ってきたなんて言えない。
「じゃあ、私が貰ってあげる。」
「しょうがないな。やるよ。」
チョロいな、俺。数分前の自分の発言を思い出して苦笑いする。
ボタンを、制服から無理やり引きちぎって、ゆいこに渡した途端、
「あれ〜。ひろし君。第2ボタンあげるんだぁ?」
と、おちゃらけたたくみの声が聞こえてきた。
「たくみは、あげるボタンはないだろう?」
「ちゃんとありますー。はい、ゆいこ。正真正銘の第2ボタン。」
たくみがゆいこにボタンを差し出す。ゆいこは目を見開いてたくみに聞く。
「えっ?みんなあげちゃったんじゃないの?」
「最初から取っておいたんだよ。ゆいこに渡したくて。さぁ、帰るぞ」
そそくさと帰る方向に向きを変えたたくみは少し照れてるように感じられた。
例年より早めに咲いた桜舞う並木を、ゆいこは花びらを追いかけながら先を歩く。
「先にボタンを取っておくなんて、意外だったな。」
「まぁ。ゆいこにあげたかったし。そういうひろしこそ、第2ボタン下さいというの受け付けないんじゃなかったっけ。ゆいこに渡すまで声をかけなかった俺に感謝しろよー。」
「待ってたのかよ。」
「さあね〜。あーゆいこ、花びら取れた??」
たくみは走って、先を行くゆいこに追いつく。
そんな風景を見ながら、ふと思う。俺らは高校にあがり、中学生のゆいことは学校が離れる。たくみとゆいこの気持ちはわかっている。もちろん自分の気持ちも。誰かが告ったとしたら?俺たち3人の絶妙なバランスで保っているトライアングルな関係はいつまで続くのだろうか。いや、よくわからない未来のことを考えても仕方がないか…。
2人に追いつくと、ゆいこを真ん中にはさんで3人肩を並べて家へと向かった。
最後までご覧いただきありがとうございます。
トライアングルレッスンな交流をしたいので、コメントなどいただけたら嬉しいです。