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85 動き出すライバル

「離せッッッッッ!濡れるッッッッッ!」


 傘にされた哀しき危険人物の下に入った毒皿は、カオザツを見た。


「良く見りゃ紹介屋じゃねーか」


 カオザツは結構有名だ。毒皿と光線銃は直接関わりは無いが噂くらいは聞く。


「毒皿、デートの迷惑になるよ。離れよう」


 気遣う光線銃。『デート』と言う単語でカオザツの顔が一瞬弛み、離凡は青ざめる。


 雨の中でデートってのもな。そう思った毒皿だが……


「雨、だと」


 ちくフルで雨が降る状況。毒皿が知る限りたったふたつのケースのみ。


 ワールドクエスト。そしてレガシークエスト。


「どっちだ……いや、()()だ?」


 可能性が高いのは光線銃か自分だ。


 カタキは……あり得なくは無い。色々やらかしているので知らぬ間にフラグを踏んでいてもおかしく無い。


「うおおおおおおッッッッッ!ボクを傘にするなッッッッッ!」


 プロレス的な感じで傘にされることでフラグを踏んだ……とかさすがに無さそうだ。


 アナウンスは聞こえない。光線銃だけに聞こえたら、まず隠すことはしない。


 カオザツはあり得るが……彼女の実力は平均を下回ると聞いている。実力を隠していない限りは、ワールドクエスト、レガシークエストを乗り越えられるとは思えない。()()()()()()()()()()()だったのだ。それこそ白菊か駿馬クラスでなければキツい。


 ならば、これまで全く見かけなかった『離凡』と言うプレイヤーか。しかし直感が否定する。ちくライダー特有のオーラを彼から感じない。


 しかし、ちくライダーでは無い無名のプレイヤーに、なぜ紹介屋のカオザツが貼り付くのか?


 無視できない、いや、してはいけない何かを毒皿は予感した。






「えっ」


 離凡が立ち上がる。肩に寄りかかっていたカオザツがズルリと滑り地面に倒れた。それでも彼女は蒲焼きを食べるのをやめない。


()()()()()()()()


 毒皿は離凡を凝視。光線銃もだ。傘の角度が捻れる。


「ゴクン……ゲェーップ!……何でしょうね」


 カオザツも(今さらなのだが……………………)寝た振りをやめて立ち上がる。


「強制参加?こんなの初めて……」


「確かカオザツだったな……何が強制参加だ?」


 毒皿が聞く。


「僕らだけ?ムグッッッッッ!」


 離凡の口をカオザツが塞いだ。


 もうわかった。この2人が対象だ。





 黒雲が割れる。


 太陽とは明らかに異なる光が、離凡とカオザツを照らした。


「おい、手助けはいるか?」


 いちおう親切心で訊ねたが、カオザツは首を振った。


 その瞬間、離凡とカオザツの体が浮いた。比喩ではなく、文字通り。


「毒皿、見ろ」


 光線銃の指す先に……


「UFO…………世界観ッッッッッ!」


 21世紀初頭の世界観であるちくフルに、出しただけで世界観崩壊のデザインの未確認飛行物体が雲の間に存在した。


「著作権ッッッッッ!」


 未確認飛行物体は、宇宙で戦争したりする複数の有名スペースオペラに登場する宇宙船ののデザインに……控え目に言って近い。控えなければパクりだ。


 光線銃の叫びとともに、傘はさらに捻れるッッッッッ!


「ちょっ、まっ、えっ、えっ?」


 見えない力でUFOに牽引される離凡がテンパる。


 やっぱ来てもらった方が良かったかなー、と同じく牽引されるカオザツが表情で表現する。


「あそこからどうレースに繋がるんだ?」


 (多分)宇宙人に拐われてからいつものようにレースなのだろう、と毒皿は思う。どう繋がるか気にしても仕方ない。どうせ超展開のちくフルクオリティ。しかも他人だ。


「離せ……離せ……」


 毒皿と光線銃によって無自覚に捻られた傘ーーカタキがうめく。


「「あっ悪い」」


 望みが叶って、重力に従いカタキは地面に落ちた。


「毒皿、見たか?」


 ただでさえもろパクりのデザイン。そこへ重ねられたちくフルクオリティ。


「正直……見なかったことにしたかったぜ……」


「「スーパークバリ新本店本日オープン……」」


 未確認飛行パクり物体には、雨でもはっきりわかるようにそう書かれていた。


「こんな形で仇に出会うとはな」


 毒皿と光線銃を嵌めて、素材のほとんどを奪った。2人だけでは無い。【ハマグリ資本連合】のほとんどの有力NPCまで巻き込み、超インフレに追い込んだ。


「クバリの野郎……くそ。新本店はどこにあるッッッッッ!」






 雨が止んだ。無人だった通りに少しずつNPCやプレイヤーが現れ、賑わいを取り戻す。カタキの呪詛もかき消える。


「なあ毒皿……」


 ここに手がかりはもう無さそうだから他の地域に移動しよう、と光線銃が提案しようとしたとき。


「よろしければどうぞ~♥」


 通りすがりの若い女性NPCが毒皿と光線銃にポケットティッシュを配って去って行く。


「ボクには無いのか?ボクにはッッッッッ!」


 捻れの苦しみから回復したらしきカタキが、若い女性NPCを追うが、人ごみに消え見失った。


「くそう……くそう……」


「……カタキ。ポケットティッシュを貰えなかったくらいで泣くな。オラのやるから」


 ポケットティッシュ?


「待て光線銃」


 毒皿も光線銃もちくフル歴は長い。ポケットティッシュを貰うのなんて初めてだ。


「これはアイテムなのか?」


 カタキが受け取ろうとしたのをひったくり、自分のアイテムボックスに入れる。……入った。


 ゾンビのように躍りかかるカタキを片手で押さえながら毒皿は、アイテムボックスから出したポケットティッシュを見る。広告が入っていた。


『【ホタテ産業保護区】にて、スーパークバリ新本店オープン!』


「目的地は決まったな」

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